レッドタートル ある島の物語(3.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
レッドタートル ある島の物語 (2016)
LA TORTUE ROUGE/THE RED TURTLE
 
監督マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
 
概要
 第73回アカデミー賞短編アニメ賞に輝いた『岸辺のふたり』などのマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督が手掛けたアニメーション。嵐で大海原に放り出されて無人島に漂着した男が、その後どのような運命をたどるのかを活写する。『かぐや姫の物語』などの高畑勲監督やプロデューサーの鈴木敏夫がスタッフに名を連ねた。第69回カンヌ国際映画祭ある視点部門特別賞受賞の力作に魅了される。(シネマトゥデイより)
 
感想
 冒頭にボーンと出る「スタジオジブリ作品」のロゴ。これまで、数々の名作…といくつかの駄作…を送り出してきたロゴだ。でも…なんだろう…この高揚感のなさは。
 
 全編を通してセリフなし。手描きアニメの良さを活かすようなデジタルの使い方。情報過多の時代に逆行するかのような素朴な画面。抑制的なカメラ・アングル。シンプルなキャラクター造形。絵本のようなストーリー。
 
 それらすべてが、どうしようもなく…退屈に思える。
 
 「こういうアニメーションだってあるんだよ」ってジブリが言いたい気持ちも分かる。いまのアニメを見れば、どれも似たような方向に進んでいるように思えるからね。結局、受けるのはそういうアニメばかりだってのも事実だし。でも、その壁を乗り越えてくるだけの力が、この作品にあったか…と言えば、僕にははなはだ疑問。
 
 セリフなしのアニメーションなら、『ひつじのショーン』だって『父を探して』だってあるわけで。メジャーどころでは『WALL-E』もメインキャラクターはそうだったわけだし、とりたてて宣伝するほどのものでもない。手描きの良さを活かしたデジタル・アニメーションだって、たとえば現在公開中の『ソング・オブ・ザ・シー』があるわけで。しかもあれは娯楽作としても素晴らしい作品なわけで。
 
 あるいは、こういう静かな雰囲気だったら、たとえば『ICO』とか、『風ノ旅ビト』とか、ゲームの方が先んじているわけで、しかもあれらは自らその世界に没入できるわけで。なんかこう…絶対にこの映画でなきゃいけないって積極的な理由が見えないんだ。
 
 別にこういう映画があっても良い。もちろんさ。ジブリは海外の短編アニメーションをソフト化していたりするけれど、その延長でやるんだったら誰も文句は言わないだろう。短編だったらあるいは傑作扱いになっていたかも知れないしね。長編でも、ミニシアター系で細々とやっていれば、みんな好き好んで見に行くんだから、誰も文句は言わないだろう。
 
 でも、全国ロードショーで、ジブリのブランド名を使って、「みんな見て見て」というような映画じゃあない。はっきり言って、それはジブリの傲慢だ。
 
 むろん制作サイドは純粋に作っているのだろうけれど、言ってしまえば、これは「アニメーション特権階級」(アニメーション分かっている人)向けの映画だ。こうして全国ロードショーされてしまうと、その辺の階級意識が鼻についてしまう。「本当のアニメーションがなにかを分かってない人たちに本当のアニメーションを見せてやる」ってなね。あの『かぐや姫』とスタイルは違えど、その辺のスタンスに同じ匂いを感じる。そうした「啓蒙意識」は退屈な作品を送り出していいエクスキューズにはならない。
 
☆☆☆★3.5