シン・ゴジラ(4.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
いくら時代はCGになったとは言え、ちゃんとした技術開発を行って、ちゃんとした人材を集めて、ちゃんとした制作体制を築いて、ちゃんと愛情をかけて作れば、きっと、勝負できる筈なんだ。ボクらはもういちど『ゴジラ』を撮ろう。ボクらの『ゴジラ』を。『Godzilla』に負けない『ゴジラ』を。
 

 
シン・ゴジラ
 
2016年
 
監督:樋口真嗣、総監督:庵野秀明
 
概要
 『エヴァンゲリオン』シリーズなどの庵野秀明と『進撃の巨人』シリーズなどの樋口真嗣が総監督と監督を務め、日本発のゴジラとしては初めてフルCGで作られた特撮。現代日本に出現したゴジラが、戦車などからの攻撃をものともせずに暴れる姿を活写する。内閣官房副長官役の長谷川博己、内閣総理大臣補佐官役の竹野内豊、アメリカの大統領特使役の石原さとみほか300名を超えるキャストが豪華集結。不気味に赤く発光するゴジラのビジュアルや、自衛隊の全面協力を得て撮影された迫力あるバトルに期待。(シネマトゥデイより)
 
敗北を抱きしめて
 日本のゴジラシリーズは2004年の「FINAL WARS」(サイテーの映画だった)で幕を閉じ、2014年にハリウッドでリブートされ世界中で大ヒットを飛ばした。日本の特撮は、ハリウッドのCGに負けたんだ。「敗北を抱きしめて」。これがすべての話の前提になる。
 
 そんな中、日本でも『ゴジラ』を作るという話が出てきた。正直、期待していなかった。(総監督に庵野さんがつくとは言え)なんせあの樋口監督だし、予告編を見ても微妙だった。
 
感想
1.やっぱり…
 冒頭、昔の東宝ロゴを出してくる辺りで、絶望的な気分になる。結局、単に「ゴジラ好き」が作っただけのゴジラか…。序盤、現場に居合わせた素人が撮ったという体の映像が並ぶ、これがまた酷い。みんな棒読み…演技下手すぎ…。
 
 樋口監督のセンスのなさも相変わらずで、石原さとみさんの登場シーンなんて、あの『進撃の巨人』を彷彿とさせる絶望的なダサさ…(石原さんは役が悪すぎる。俳優陣だと主演の長谷川博己さんが良い。MVPは市川実日子さん)
 
 第二形態の造形も、アニメだったら成立するけれど…という感じで、ちと滑稽さを感じる。着弾時の爆炎も…派手だけれど嘘っぽい。VFXのレベルもハリウッド版にはやっぱり一歩譲る。たとえば戦車が吹っ飛ばされる時の…照明効果だとか、重さのシミュレーションが、たぶんまだ甘くて。CGっぽさが少し残っている。
(追記:あれ第二形態だってことに気付いた…ので修正)
 
2.ただ…
 立て続けの会議シーンを見ている内に、だんだんと引き込まれてくる。編集のリズムが良い。バシバシバシバシとカットしてくる。そして、バンッ! と入る文字。あれ…この編集のリズムって…庵野さん…? 
(エンドロールにて編集は庵野さんと確認。庵野さんってやっぱ凄いんだな…(^_^;))
 
 途中では実際に「エヴァ」のBGMが流れる。だから、「ゴジラ」と「エヴァ」が融合して、「ゴジラ」を見ているのか、「エヴァ」を見ているのか…って感覚になる。それは別に悪い意味じゃなくて。庵野さんが作るなら、こういう作り方でしか勝てないと思うし、実際、それは成功している。
 
 庵野さんは脚本も担当している。変にメロドラマにしていないところが良い。官邸のゴジラ対策にドラマがすべてが集中しているから、こちらも集中して見ていられる。
 
 海外市場をまったく無視したような感があるけれど、それで正しいんだと思う。要はハリウッドと同じことをしても仕方ないわけで、自分たちが描けるものは何かと考えた時に、それはやっぱり日本の内情しかないわけで。
 
 それに、カメラ位置も良い。変にスペクタクルを追い求めるんじゃなくて、かつての着ぐるみ特撮映画の距離というかな…CGだからカメラはどこにでも置けるわけだけれど、下手にゴジラに近づけ過ぎずに、遠景のショットを中心に構成していく。
 
追記:ハリウッド版「GODZILLA」が、そういう生物が現実世界に居たらどうなるかを純粋にシミュレートしているのに対して、「シン・ゴジラ」はむしろ着ぐるみ特撮そのものをシミュレートして、現実世界のシミュレートに加えている。
 
 これはやっぱり、かつて「平成版ガメラ」(金子修介監督)の特撮監督を務めただけあって、樋口さん分かっているんだな…という感じがする(お…珍しく褒めた)
 
 中盤辺りにかけてはもう圧倒的。とくに「夜」のシーンなんかは鳥肌もの。怪獣映画史上に残る屈指の名シーンだと思う。それくらい感動したし、かつて、金子版の「ゴジラ」(大怪獣総攻撃)を劇場で見た時の感覚を、久々に思い起こした。
 
 このシーンはまた、エヴァ初号機の覚醒シーンをも彷彿とさせる。場面の状況的なものもそうだし、場面の持つ感情的なものもそうだし…あとはビジュアル的にもそうで。
 
 実写的な発想ってもっと硬質で、ああいう画…ってなかなか出てこないと思うのね。でも、「シン・ゴジラ」は、どこかアニメ的な画作りの要素があって。第二形態のシーンでは、それが少しマイナスに出ているけれど、ここでは圧倒的にプラスに出ていて。
 
 なんと言うかな…アニメ特有の作画の持つ柔らかさってのがあって、それは、動きを描くことで生命を創り出す力とか、描かれた物を瞬時に壊してしまえる力と結びついているわけだけれど…。
 
 そうした柔らかさによる力が、3DCGで作られたこのシーンにも現れている。もちろん、ベースはフォトリアルなのだけれど、ここでは完全にリアル寄りにいくのではなく、アニメ的な柔らかさが取り入れられている。
 
 完全にリアルな方向でやったらハリウッドには及ばないけれど、アニメの要素を取り入れることで、別の何かとして提示することが出来る。かつて日米の特撮は「着ぐるみ特撮」vs「ストップモーション」だったわけだけれど、これからはこうした対立軸になっていくのかもしれない。
 
3.それでも…
 これはだから、初代「ゴジラ」をベースに、「エヴァ」とか「平成版ガメラ」とか、日本がこれまで培ってきたコンテンツの力を(アニメとか特撮とかという垣根を越えて)総結集して作られた作品だったという気がする。
(そう言えば、平成版ガメラ3部作は、4K版BD発売記念で豊洲で上映されていた。「イリス」だけ見に行けた。超満員だった)
 
 それにね、終盤とかの進め方も…ネタバレになるから書かないけれど…以前の記事を見ると分かるように、僕はまさに、こういう「ゴジラ」を見たかったわけで。正直、この段階では5つ星だったし、ハリウッド版の「Godzilla」(2014)にも、完勝だ…ったと思う。
 
 だからなんで、クライマックスの処理をああしたか…。脚本的にはあれで良いと思うけれど、もっと劇的に描くか、あるいはもっと余韻を残すように描くか、色々とやりようはあったと思うのね。ここの処理さえ間違えなければ、本当に傑作になりえたのに…。思えば、庵野さんって、いつも最後を描けない人だよね…。惜しかったな…。
 
 次作への期待を込めて。
 
☆☆☆☆★(4.5)