エヴェレスト 神々の山嶺(2.5) | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
エヴェレスト 神々の山嶺
 
2016年日本
 
監督:平山秀幸
 
概要
 第11回柴田錬三郎賞を受賞し、漫画版と共にベストセラーを記録している夢枕獏の小説「神々の山嶺」を実写化したドラマ。あるクラシカルなカメラを手にした写真家が、カメラの逸話を調べるうちに孤高のアルピニストとして名をとどろかせた男の人生に触れていく姿を追い掛ける。出演は岡田准一、阿部寛、尾野真千子ら。メガホンを取るのは、『愛を乞うひと』、『太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-』などの平山秀幸。過酷な自然にぶつかっていく男たちの思いが交錯する熱いドラマに加え、大規模ロケを敢行したヒマラヤの荘厳な風景も見もの。(シネマトゥデイより)
 
感想
 『神々の山嶺』…主人公は羽生丈二(阿部寛)か、深町誠(岡田准一)か。
 
 僕はこの作品、谷口ジローさんの漫画版を読んだことがある。なんと言うか…高度成長期〜バブル期的おっさんマチズモ(いま名付けた)とでも呼べるような、おっさん中心主義の臭いがするし、女性の描き方は(絵の面でもキャラクター面でも)お世辞にも上手いとはいえない。
 
 それでも、あの作品が傑作であるのは、何よりもあの圧倒的な山の描写にある。羽生丈二がなぜあれほど山の危険に惹かれるのか、深町がなぜあれほど羽生丈二に惹かれるのか、それもすべて、あの圧倒的な山の描写によって納得できる。
 
 この作品の主人公、それは「山」なのだと僕は思う。
 
 さて。この映画…なのだけれど。邦画では本当に良くありがちなことに、ただ物語を映像で説明するだけの紙芝居映画になっている。たとえば、『エベレスト 3D』や、『ザ・ウォーク』が(あれはビルの話だけれど)、CGをフルに使ってああいう画作りをしたあとで、邦画はそれにどう立ち向かうんだ…ということが見えてこない。ただ、タレントのネームバリューに頼るだけですか?
 
 まず脚本ね。リズムが悪い。ダイジェスト版のような感じでメリハリがない。2人の感情の動きも追えていないから、画面に緊迫感が出てこないし、物語を省略したところの辻褄合わせがまずくて、間抜けに見えてしまう場面も多い。仕事しろよ脚本。
 
 それから、撮影。カメラが近い。クローズアップが多すぎる。山の全景は、ほとんどエスタブリッシュショット(*シーンの冒頭などで、場所の状況や出演者の位置関係を認識させるためのショット)でしか描かれない。引きの画も時折は見られるけれど、ほとんど2秒ともたない。これ、逆の比率にしちゃっても良かったくらい。その方がおそらく、クローズアップも生きる。
 
 役者の顔ばかりを映しているから、山の表情が見えてこない。この映画では、なによりそれが致命的。たしかに岡田くんは良い顔だと思うけれど、そんなに役者の顔ばかり映したいかね〜…。と、思いながら、最後のクレジットで製作委員会の名前を見たら、案の定、藤島ジュリーK…ふむ。
 
 それから、クレジットには「高所山岳映像提供~」の文字も…大規模ロケを謳っておきながら、要は全部自分で撮っているわけじゃないんだ…そりゃあダメなわけだよ。何のためにこの映画を撮ったのさ。そんなだから、この映画からは、山の怖さとか迫力…あるいは荘厳さが伝わってこない。
 
・追記:こんな記事を見つけた(映像提供の顛末)
「地震は、俳優さんたちが帰国した直後の4月25日に起こった。撮影クルー本隊とは別に、山の風景を撮影するクルーが入ってくる予定だったんだけど、結局アイスフォールのルートは復元されなかった。それで、本来撮影するはずだった映像が撮れなかったようで、僕のところへ相談がきたんだよね」
 
 それだけじゃない。この映画は、自分で撮った映像も酷いんだ。たとえば、登場人物のひとりが地上数千(数百?)メートルの高さでザイルに宙吊りになるシーン。
 
 上からハイアングルで撮ったショットでは、もう明らかに背後の地面を合成しているのが丸わかりだ。そして、斜め下から撮ったショットでは、人物が画面の下方に見切れるくらいの感じで、カメラが近い。これどういうことかと言うと、演者の真下に地面があって、カメラはそこから撮っているんだと思う。地面そのものは映っていないのだけれど、カメラの撮り方から地面の存在を感じてしまう。だから、怖さが何にもない。
 
 それから情けなく感じたのは、画面上は猛吹雪なのに、衣装がサラサラだったりすること。顔の汚れも、「メイクで汚しました」って感じが多い。そういうのは、予算とか何とか以前に、工夫とか努力の問題だろうと思う。これだけ技術が進んでいる中で、たとえば『八甲田山』より説得力のある映画を撮ろうって…そういう意気込みみたいなものが感じられないところが、なんとも言えない気分にさせる。
 
 役者の演技そのものも良かったとは言えない。阿部さんや岡田くんは良い役者だと思うし、僕は評価もしているけれど、それでも、かつての三國連太郎さんみたいな「本物の役者」って、もうほとんど数えるほどになってしまったんだな…って、そんな感慨すら抱かせた。
 
 平山監督は、『必死剣 鳥刺し』ではザラザラとした画作りが割りと良かったけれど、今作は画作りもいまいち。原作(漫画版)と異なる感じになっている最終的な感情の処理も、音楽の使い方もいまひとつで、ラストシーンでは、正直、監督のオ○ニー(失敬)を見させられている気分になった。たとえば、木村大作さんが撮影していたらもっとずっと違っていたと思うし、いまだったら監督は原田眞人さん辺りが良かったのかな。ふむ( ..)φ
 
☆☆★(2.5)
物語2.5
配役3.5
演出3.0
映像2.5
音楽2.5