『あん』
2015年日本、113分。
監督:河瀬直美
主演:樹木希林
概要
『殯(もがり)の森』などの河瀬直美が樹木希林を主演に迎え、元ハンセン病患者の老女が尊厳を失わず生きようとする姿を丁寧に紡ぐ人間ドラマ。樹木が演じるおいしい粒あんを作る謎多き女性と、どら焼き店の店主や店を訪れる女子中学生の人間模様が描かれる。原作は、詩人や作家、ミュージシャンとして活動するドリアン助川。映像作品で常に観客を魅了する樹木の円熟した演技に期待が高まる。(シネマトゥデイより)
感想
物語そのものは、陰気臭いし、あまりにも政治的だし、構図も展開も単純すぎるし、大したものだとは思えない。この映画の本質はそこにはない。
極端なアップ、アンバランスな構図、安定しないカメラ。対象を客観的に描写するというより、むしろ自身の見方を提示しているような感じだ。伝統的な映画制作法に枠づけられたカメラワークじゃない。
そして、それがポエジーを生んでいる。だから、何気ない場面でも、グッと見入らせてしまう力がある。
さらに、役者の力がそこに加わっていく。樹木さんと永瀬さんという2人の名優の演技こそが、この映画の核心だ。陰気な物語が、飄々とした樹木さんの演技で暖かい笑みに変えられる。そんな樹木さんに圧倒される永瀬さんの姿も微笑ましい(そして、その裏にある重み…背負っている重みが2人の背中で語られる)。
とくに、その2人が「あん」を作るシーンなんてすごい。もうさ、「3分クッキング」みたいに見えるんだ。つまり、まったく演技をしているように見えないってこと。しかも、それで映画として成立させちゃっている。
どら焼き屋の中で、2人の役者が「あん」を作っている、というだけの映像なのだけれど、なんだろうな…カメラの視線とか、役者の存在感だけで、あれだけ説得力のあるものになってしまう。あの場面は良かったな。
一方、ワカナ役の子がまったく可愛くない(単に可愛くないってより、それを上回ってくる何かがない)のだけれど…これはこれで良いのだろうね…と思っていたら、樹木さんのお孫さんだった。まあ、(微妙な心情とかが画面に出るだろうから)そういうキャスティングもあり得るとは思うけれど…ね。
冒頭の桜が美しい。
☆☆☆☆(4.0)
物語☆☆☆★
配役☆☆☆☆★
演出☆☆☆☆★
映像☆☆☆☆☆
音楽☆☆☆☆