『舞妓はレディ』
2014年日本、135分
監督:周防正行
主演:上白石萌音
概要
『Shall we ダンス?』など数々の名作を手掛けてきた周防正行監督が、舞妓をテーマに撮り上げたドラマ。周防監督が20年前から考え続けてきた企画で、とある少女が舞妓を夢見て京都の花街に飛び込み、立派な舞妓を目指し成長していく姿を歌や踊りを交えて描く。主演は、半年に及ぶ選考とおよそ800名に上る応募者の中から選ばれた新星・上白石萌音。共演には長谷川博己、富司純子、渡辺えり、岸部一徳ら実力派がそろう。(シネマトゥデイより)
感想
他の多くの映画と同様に、この映画にも美点と欠点がある。どちらから語ろう。
とりあえず、先に全体的な感想を言ってしまうと、割りと面白い。笑いのツボも押さえてるしね。「心暖まるミュージカル・コメディ」ってジャンルがあるとすれば、その見本のような作品。
1.
ボクは最初、これがミュージカルだってことを忘れていて、「え?歌うの?」って驚いたんだけれども(^_^;)>
いきなり歌うことの違和感は時間の経過とともに慣れる。ただ、歌がはじまると映画の流れが止まってしまうのは頂けない。歌のリズムと映画のリズムのあいだに断絶があるから、映画のリズムを(コントロールするどころか)壊してしまっている。
これ以外にも、この映画には、いくつかの「断絶」がある。
たとえば、ミュージカルという文化と舞妓という文化の断絶。「舞妓がミュージカル? 進駐軍…?」…という連想をするほどの湿度はなくて、むしろすごくカラッとしているんだけれど、なんかね~…とくにラストシーンの辺りはすごく違和感がある。
周防さんのなかでは『舞妓はレディ』と『マイ・フェア・レディ』は結びついているのかも知らんけれど、映画内では「下八軒」(舞台となった架空の花街)と「ブロードウェイ」の結びつきのキュー(取っ掛かり)が与えられていないから、どうしても唐突な感じがしてしまう。
そういうものとして割り切って見るしかないんだろうけれど、それってこちらに放り投げすぎじゃなかろうか。
2.
もうひとつの断絶は、舞台の断絶。これは長所と裏腹なんだけれど。
とにかくね。冒頭をはじめとして、なんども挿入される下八軒のオープンセットのエスタブリッシングショットはすばらしいわけよ。正直、ここですべて撮っちゃっても良かったんじゃないか…と思えるくらいね。
「ああ…これからここで物語がはじまるんだな…」って。いかにも演劇的な舞台でね。このエスタブリッシングショットでこの映画の世界観がすべて表されている。
ただ惜しいかな…せっかく作ったのに家の外と中とがシームレスに繋がっていない。正直、あのエスタブリッシングショットが素晴らしいから、そのままスケルトンで家の中まで見せて欲しいくらいなわけ。長回しのシークエンス・ショットでね。でも、この映画では、やっぱり、中に入るとカメラが切り替わってしまう。
まあ、そりゃあ仕方ないんだけれど、そこでCGの出番ですよと(ラストシーンでチラッと使っていたけれどね)。CGの本領は、そうした物理的障壁を乗り越えてしまうところ。これだってCGを使えばカメラの移動を外から中までシームレスに出来てしまうわけさ。
こういう映画のそういうところにこそ、CGを使う面白さがあるんじゃないかな…と。まあ、違和感がないようにするには、相当にお金をかけなきゃいけないだろうから、これはボクのわがままなんだけれどね。
3.
そうしたCGでは出せないのが役者の魅力。この映画の役者陣はなかなか魅力的だ。
長谷川博己さんに竹中直人さん、岸部一徳さん、小日向文世さん、高嶋政宏さん、濱田岳さん…富司純子さんに田畑智子さん…ひと癖もふた癖もある役者たちが縦横無尽に活躍する。
なかでも、この主役の子! 上白石萌音ちゃん。読めんのだけれど(^_^;)>(ニホンゴムズカシーね)
よくもこんな子を見つけたなと(「東宝シンデレラ」の審査員特別賞だから、もともと特別なのは当たり前なんだろうけれど)。
最初は「おかずのりまゆ毛」(byクレヨンしんちゃん)みたいな印象なんだけれど、だんだんとそのまっすぐな瞳に惹かれていってしまう。こう…なんというか、だれもが応援せずにはいられないような、そんな稀有な雰囲気を持っている。
その上、無垢な魅力だけじゃなくて、歌っても魅せられるというね。すごいよ、この子。
正直、48系で(この役をやらして)こんな子に対抗できる子がいるだろうか…みーおん(向井地美音)なら、なんとか…なるのか…? って、対抗する必要はないと思うかも知れないけれど、映画やドラマで主役を張りたいなら、こういう子を向こうに回してやっていかなきゃならんわけでさ。
もっとニッチな立ち位置を狙ってるとしても、少なくとも女優を目指す子は、(この子に限らず)自分と同世代のトップランナーたちがどういう演技をしているか…というのは分かっておいて損はないと思う(すべては、どれだけ差があるか知ることから始まる)。
4.
さて…(松井)珠理奈&(武藤)十夢は…う~ん…声に艶がないというか、流れに乗っていないというか、そもそも「演技」として成立しとらんのじゃないかと。出番も少ないしね。「千葉です」は面白かったけれど、あれは岸部さんの力で面白くしているだけだし…。
そもそも「バイト」って設定だから、声に艶がないのも演出なのかも知らんけれど…なんかさ…そういうのって悔しいじゃない。そういう風に使われてるんだよ、これ。この映画はハッキリと「舞妓はアイドルみたいなもん。芸妓より未熟なのに人気がある」って言ってるわけだしさ。
なんかさ…悔しいじゃない…。それに言い返せないんだよ、この演技じゃ。もうさ、本番なのに、「経験を積みに行く」みたいな心構えは止めようよ。別にこの2人がそうだって言いたいわけじゃなくてね(ボクが48系の演技に厳しいのは今にはじまったことじゃないわけで)。
たしかに、実戦が最大の練習だってのは事実なんだけどさ。ちゃんと訓練してさ、本番では監督とか撮監の度肝を抜くような演技を見せようよ。見返そうよ。たった2カットだけの出番ならさ、その2カットに命かけなくてどうするのよ。
☆☆☆☆(4.0)