「夢を語ることの無防備さ」
今週の『AKB48ネ申テレビ』は、合宿企画の第4弾、演技指導だった。女優志望の4人が俳優西岡徳馬さんの指導を受けた。この4人の中には、ボクが「女優の素質がある」と期待しているゆいりー(村山彩希)も居た。
でも、期待しているだけに、ちょっと残念だったな…。演技がヘタだったからとかじゃない。演技ができないのは訓練してないんだから仕方ない。そうじゃなく、「今日の演技、誰がいちばん上手かったですか?」という無防備さに。
「女優になりたい」という夢は、言い換えれば「プロとして女優でやっていきたい」という意味である筈だ。でも、彼女たちはまだその入り口にすら立っていない。少なくともボクにはそう見えた。
たとえば、体験企画でフットサルをやるとする。30分か1時間くらい練習して、ハンデつきでプロの選手と戦って、そこそこ良い勝負が出来たとしよう。それって相手が「お付き合いしてあげてるだけ」なんだけど、自分たちはそこそこ出来てしまうんじゃないかと考えてしまう。
そこで「上手い」とか「素質がある」とか褒められて、気分よく仕事を終える。でも、その「上手い」ってのは、いったいどういうレベルなんだという話。ホントにプロとしてどうかという基準で判断したら、評価はまったく別ものにならざるを得ない。30分か1時間くらいでプロレベルになれるんだったら、誰も苦労しない。
でも、「女優になりたい」ってのは、まさにプロになりたいってことだ。だから、そのレベルで判断されなければならない。そう考えると、(子役の経験があるから、自信があるのかも知れないけれど)ゆいりーの「誰がいちばん演技が上手かったか」という質問は、あまりにも無防備なように思える。それってまだ、「自分がどれだけ出来ないか」ってことに気付いていないように思えるからだ。
西岡さんは、すべてを肯定していくようなスタイルで指導をしていた。それは彼のスタイルなのかも知れないけれど、収録後のインタビューでは、「経験が必要」と言っていたから、やっぱりその辺のところ(経験不足)は感じ取っていたんだと思う。だから、逆に言えば、まだ彼は本気じゃなかったようにも思えた。30分の放送時間のうち、演技指導の場面がものの15分しか放送されなかったことも、あの演技指導が真剣勝負じゃなかったことを表していた。まだ、入り口にすら立っていない。
もちろん、夢を語ることは悪いことではない。それは未来に希望を持つ者の特権だ。でも、今のままじゃ、あまりにも無防備だ。ボクはいつだか、声優志望のしゃわこ(秦佐和子)が言っていた言葉を思い出す。「このままじゃ夢を見ることも、語ることも出来ない」。そう言ってしゃわこは辞めていった。あれは魂の叫びだった(もうあんな叫びは聞きたくない)。
ボクは、運営にはAKB48に居ても夢を見ていられるような環境を作って欲しいと思うし、彼女たち自身でも今そこで出来る努力は継続的に行って欲しいと思う*(もちろん、大変だとは思うんだけどね…)。だからこそ、彼女たちにはまず、「自分がどれだけ出来ないか」ってことを知っておいて欲しいんだ。それで初めてスタートしたことになるんじゃないだろうか。
*(とりあえず、平田オリザの『演技と演出』でも読んでみようか…そうすれば、少なくてとも役者にとって何が大切――と舞台演出家が考えている――かは分かる)
P.S.
ネ申のあとは「思い出せる君たちへ」、13期14期(+15期)によるA5th公演だった。後半曲で白のベレー帽をかぶり、センターで踊る彼女は輝いていた。やっぱり、あの子は絵になるな~と思う。ボクはゆいりーに期待している。