Rensselaer W. Lee,
"Ut Pictura Poesis: The Humanistic Theory of Painting,"
(1940)
「詩は絵のごとく--人文主義絵画論--」
序
・美術や文学の理論書(16世紀半ば~18世紀中頃)
→絵画と詩の密接な関係が論じられる
・絵画と詩:「姉妹芸術」と見なされてきた
→表現の方法や様式は異なるが、本質/内容/目的は、ほとんど同じ
・プルータルコス「絵は黙せる詩、詩は語る絵」(シモーニデスの引用)
(Plutarch,c.46-120/Simonides of Ceos,c.556-468 BC)
・ホラティウス「詩は絵のごとく」
(のちの美術著述家は「絵は詩のごとく」と読み替えることを期待した)
(Horatius,65-8 BC)
・当時(16c~18c)の批評家のほぼ一致した意見
→絵画は詩に類似していることによって、初めてliberal artと見なすことができる
・ドルチェ「詩人ばかりでなく、あらゆる著述家は画家である」
(詩、歴史など、要するに学識がある人の作品のすべては絵画である)
(Ludovico Dolce,1508-1568)
・ロマッツォ「詩的精神をいくらかでも持ち合わせていないような画家など存在しない」
(Gian Paolo Lomazzo,1538-1592)
・レノルズ「シェイクスピアは忠実にして的確な自然の画家」
「ミケランジェロはわれらの芸術の詩的な部分を最高度にそなえていた」
(Joshua Reynolds,1723-1792)
・古代:多彩な想像力を持った作家を画家と結びつける習慣(がすでに知られていた)
・16世紀の批評家:それに加え、眼前にルネサンスの素晴らしい絵画イメージがあった
・詩人の画家への類似点
→表現(記述)の「絵画的迫真性」(pictorial vividness)
(画家がキャンバス上に記録するように、心の目で外界の明確なイメージを描く力)
・「妖精アルチーナの美しさを見事に記述する時の詩人アリオスト」
=女性美の完璧なイメージを提供してくれる画家
(Ludovico Ariosto,1474-1533)
・レッシングが異を唱える(18世紀中頃)
→アリオストの女性記述:細部記述が過剰で、明確な印象をもたらさない
=詩芸術の限界を踏み越えている
(Gotthold Ephraim Lessing,1729-1781)
⇒『ラオコーン』(詩や造形芸術の越境行為に対抗して書かれた)
・「絵画芸術」と「詩芸術」が同一視された主な理由
→アリストテレス『詩学』、ホラーティウス『詩論』:詩と絵画の「類似性」を指摘
(⇔ルネサンス/バロックの批評家:詩と絵画を「同一視」)
(Aristotle,384-322 BC)
・アリストテレス:「悲劇における筋」と「絵画におけるデザイン」の類似性を指摘
(どんなに素晴らしい色彩でも、ランダムに塗られたら悦びを与えない)
・ホラーティウス
1.空想力を自由に行使する権利=画家と詩人
2.実際において、詩は、細部様式/印象主義の両方の絵画に比較されるべき
(細部様式:細部の入念な観察を要求する様式)
(印象主義:離れて見なければ楽しむことができない様式)
・ルネサンス絵画の巨匠たち
→絵画が諸芸術のなかで高貴な位置を占めると主張
(レオナルド・ダ・ヴィンチ「絵画は詩をも凌駕する」)
(Leonardo da Vinci,1452-1519)
・16世紀に至るまでの彼らの関心
→絵画の技術的問題/科学的理論
(3次元世界を、いかに2次元の表面に完全に再現するか)
・ロマッツォやアルメニーニのような画家=理論家の関心(16世紀)
→手許にある知識を後進の画家のために系統立て集成すること
(しかし、こうした側面の歴史的重要性はきわめて低い)
(Giovanni Battista Armenini,1530-1609)
・1550年以降
あらゆる批評家の関心→絵画を基本用語で定義づけること
(絵画の本質と内容と目的についての議論が含まれていた)
・古代の権威ある学理論文:絵画芸術の本質を定義づけるものは残ってなかった
(文学にとってのアリストテレス『詩学』のような)
・詩と絵画の類似性(アリストテレス『詩学』やホラティウス『詩論』が指摘したような)
→古代のどこにも、その理論的展開を見出すことができなかった
・二つの古代理論書に含まれる多くの基本的概念
→いくぶん強引な方法で、元々意図されていなかった絵画芸術に適用した
=その結果生まれた絵画理論:衒学的で不合理な点が多い
・熱狂的な批評家(単に、「絵画」に「詩の修正理論」を押し付けた批評家)
→「異なった媒体の芸術が、合理的に借用美学に従うかどうか」考慮する余裕がない
⇔それでも、これらの批評家が、しばしば啓発的に思える時がある
(自分の考えで「古代の教え」という踏みならされた道からはずれる時)
・こうした新しい「絵画論」:人文主義的ルネサンスの落し子
→(多くの欠点にもかかわらず)合理的で真実の面も含んでいる
・この新しい理論の核心:(詩と同様に絵画も)
→人間生活を、その平均的な形式ではなく、その上位の形式で再現的に模倣すること
(現代では失墜した考えだが、画家の芸術を最終的に評価する際にまだ重要/主要)
・人文主義的な学説の嚆矢:アルベルティの著作
1.「歴史」(人間の意義ある行為)を表現した絵画:真摯な画家の主な仕事
2.古代の美術家は作品に理想美を与えようとした
(Leon Battista Alberti,1404-1472)
・レオナルド「人体の動きを通じて人間の感情を表現することが絵画芸術の基本」
(人文主義の表明)
・理想的模倣
→チマブーエからミケランジェロにいたる最も偉大なイタリア絵画で具現化
(Cimabue,1240-1302/Michelangelo,1475-1564)
・16世紀後期:古今の詩的神話芸術の輝かしい遺産が受け継がれていた
・17世紀:絵画の人文主義的な理論は温存されていた
→さらに、前世紀には見られない方向に発展していった
・イタリアの批評家
→内容の広さ/深さ、表現の力強さにおいて絵画が詩といかに類似しているかに傾注
⇔「姉妹芸術」間の純粋に形式的な対応関係には考え及ばなかった
(対応関係の例:デザイン/プロット、色彩/科白)
・(後の)フランスとイギリスの批評家
→こうした対応関係を過度に強調
(時には絵画芸術にアリストテレスの演劇理論というお仕着せをまとわせようとした)
⇒その結果:批評と実践の双方において、姉妹芸術間の由々しき混乱が生じた
・18世紀半ば:レッシングの果敢で時宜を得た試み
→詩と絵画の再定義、それぞれに固有の境界が付与された
・ラ・フォンテーヌ(その前世紀にレッシングを先取り)
「言葉と色彩は同類ならず、眼もまた耳と同じにあらず」
(Jean de la Fontaine,1621-1695)
(要約flowinvain)
参考
レンサレアー・W・リー
「詩は絵のごとく--人文主義絵画論--」森田義之/篠塚二三男訳
『絵画と文学--絵は詩のごとく--』中森義宗編、中央大学出版部、1984年