写真徒然11<世界内世界> | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)


 かつて、アル・ゴアが構想した「デジタル・アース」は、あらゆる手段を使って地球の情報を取り込み、それをデジタル化し、もうひとつの地球「デジタル・アース」を作ろうとするものであった。これを実際に実現したのは、「世界中の情報を整理して、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」Googleであったことは言うまでもない。

 つまり、デジタル化とは、「デジタルの世界」に「現実の世界」を取り込むということに他ならない。世界の内にある世界、「世界内世界」がこうして誕生する。

 写真は、(唯一ではないが)この「世界内世界」に現実世界を取り込み、そしてアクセスできるようにする有効な手段である。件のGoogleによって作られたのが、写真を使い、「世界内世界=もうひとつの地球」にアクセス可能にした(つまり、写真を撮って現実世界をデジタル化し、それに誰にでもアクセスできるようにした)「Googleストリートビュー」であったということが、端的にこのことを表わしている。 

 もちろん、写真で取り込めるのは、世界の表面だけである。その内面(パラメーター)を書き込むためには、レンジスキャナーなどを用いて、まず3次元情報を取り込み、デジタル世界を3次元化しなければならない。我々は、あらゆる情報をそこに「書き込む」ことによって、この世界を(生み出し)育て続けている。

 こうして、「世界内世界」が、ある程度においてこれが育ち、自律性を持つようになると、世界は真の意味で二分される。すなわち、現実世界と仮想世界とに。写真は、そのインデックス(≒痕跡)的性質によって、対象を指し示すものだ。Googleストリートビューの写真が指し示しているのは、現実の世界であると同時に、仮想世界そのものである。

 しかし、ここではもっとラディカルな事態が起こっている。「もうひとつの世界=仮想世界」が、それ自体、自律的な世界として自らを顕示し始めるのだ。この状況において、「写真」とは、インデックスとして、仮想世界のみを指し示すものをも含むようになる。たとえば、CGゲームの(PC上)キャプチャーが写真展に「写真」として登場していることは、この例である。

 ここでは、「存在を証すもの」としてのインデックスの機能が反転し、「存在せしむるもの」として「写真」が用いられている。これは以前に述べたように、写真の外見とインデックス性が分離することによって可能になっている。より正確に言えば、写真的外見に刷り込まれた、インデックス性への(我々の)思い込みがこれを可能にしているのだ。

 アニメにおける写真的描写もまた、この一例として考えることが出来るかも知れない。アニメ作家の新海誠は、彼のアニメ制作において、大量のデジカメ画像の中から画像を選んで風景を作っている。そのことを、東浩紀は、こう指摘する。

東:『ほしのこえ』はオープニングでも予告編でもいいけれど、フォトショップで作った映像の断片が大量にあって、その一部をつまんで作るという方法論になっている。つまり、新海さんのHDDのなかに別の「世界」があるわけです。

 東は、この文脈においては、この別の世界とは「まんが・アニメ的世界」だと述べているが、東浩紀のデータベース理論に従うのならば、この別の世界はデータベースと呼んでも差し支えないだろう。ここで、写真的描写が指し示すものは、データベースそのもの、東が言うところの、「別の世界」になる。



イメージ 1
新海誠『秒速5センチメートル』より
右上にスミアが見える)



 スミア (smear) は、CCDイメージセンサを用いたカメラで周囲より極端に明るい被写体を撮影した際に白飛びする現象。この白飛びは特徴的で、垂直、あるいは水平方向に被写体の発光部とほぼ同じ幅の直線状に発生する。その幅の中では画像の端から端まで白飛びを起こす。CCDの構造に起因するCCDセンサ特有の現象であるためCMOSイメージセンサを使用したカメラや、銀塩カメラなどでは発生しない。(Wikipedia)



 自律し始めた「世界内世界」は元来、現実との関係によって作り出されたものである。それは現実と環流し続けるものでもある。ここで起こってくる次の状況は、デジタルの中にある仮想世界が現実の世界に出てくるということだ。

 ヴァーチャル・リアリティからAR(複合現実)へ。まず内的な創造(現実の内化)があり、そして外化がある。これは、もっともシンプルな形で現れてくる。たとえば、仮想世界のアイドルである筈の初音ミクが現実の世界でライブをする。架空の世界だった筈の映画が、現実世界に飛び出してくる=3D映画。そして、なによりも3Dプリンター。それは、仮想世界を具現化(現実世界化)する、もっともシンプルな手段だ。

 仮想世界を撮影するものが、(先述した)PCキャプチャーであるならば、3Dプリンターは、仮想世界を現実世界に彫り込むもの。かつて、ミケランジェロが心に掴んだ神聖なものを槌に託し、大理石に彫り込んだのと同様に、3Dプリンターはその「槌」に仮想世界を宿し、現実世界に彫り込んでいく。