追憶と予感――あるいは未来についての想像――ほど詩的なものはない、過去についての思念は、われわれを死へ、寂滅へむかわせ、未来についての想像は、われわれを生命へ、具現へ、同化的活動へと駆りたてる。それゆえ、すべての追憶は、もの悲しく、すべての予感は、よろこばしい。前者はあまりにも烈しい生気をおさえ、後者は、あまりに弱い生命をたかめる。通常の現在は、過去と未来とを制限することによって結びあわせる。接触がおこり、凝固することによって結晶が生じる。これに反して、両者を溶解することによって同化する精神的現在がある。この同化物こそ、詩人の元素であり、大気である。
人間世界は、神々の共有器官である。詩(ポエジー)は、われわれ人間とおなじく神々をも結びあわす。
「花粉」前田敬作訳
『世界の詩論』pp.100-101