意図性 : ナスリのレッドカードについて | 想像上のLand's berry

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言葉はデコヒーレンス(記事は公開後の一日程度 逐次改訂しますm(__)m)

 
『意図性』
 
 昨日のノリッチvsマンチェスターシティ戦で、こんな場面がありました。ノリッチのDFバソングの危険なタックルを受けたナスリが激昂し、バソングに挑みかかりました。両者が角を突き合う形で、ガンを飛ばし合っていたのですが、その時、ナスリが頭を振ったのです。結局、バソングには当たらずに、空振りになりました。しかし、これを見ていた副審が主審に耳打ちし、ナスリにはレッドカードが提示されました(バソングにはイエロー)。
 
 
 
 
 ボクはマンU戦を見ていたのですが、ナスリ退場という情報を聞き、ハーフタイムにマンC戦にチャンネルを切り替えたのでした。そこで気になったのは、解説者(永井洋一氏)の「副審が良く見ていました。審判団の連携の勝利です」というようなコメントです。
 
 たしかに、このレッドカードに対しては、様々な意見があると思います。FIFAの競技規則(「Laws of the Game」訳:flowinvain)を見てみると、「ある選手が、ボールではなく、相手選手に対して、過度の力(excessive force)を用いるか、野蛮に振る舞う(brutality)のならば、彼は暴力行為の罪である」、「暴力行為の罪を犯した選手は、退場させられなければならない」とあります。
 
 そして、その「過度の力」(excessive force)とは、「力の必要な使用を大きく超えて、相手を傷つける危険性があること」を意味します。まあ、これも余り良い訳じゃないっすね。だけど、「傷つける危険性があること」ってのが重要でしょう。ナスリのプレーは「傷つける危険性がある」のか、そこは判断が分かれるところだと思います。
 
 当てようとしているように見えなくもないですが、空振りを狙っているようにも見える。意図を立証するのは難しい(実際の裁判でも「中止未遂であることを立証するのは困難であるため、認められるのは実際には稀」-wiki-だと言います)。そもそも、当たっていないのだから、「過度の力を用いる」という定義に当てはまらないようにも思えます。
 
 そこで問題になってくるのは、「野蛮に振る舞う」(brutality)という方です。brutalityはFIFAの競技規則に定義されていないのですが、OED(Oxford English Dictionary)で調べると4つの意味があります。1と2は、「獣のような」という意味なので、これは除外します。4も「非人道的/残虐的」という意味なので、ここで用いられるには強すぎます。残るのは3の「粗野な無作法/マナーの暴力的な粗雑さ」になるでしょう。
 
 しかし、これも判断が難しいところです。どこからどこまでを粗野だと捉えるのか。暴力的と捉えるのか。これは報復という観点から考えても同じです。どこからどこまでを報復と捉えるのか。そもそも、当たっていないものが、当たっているものと同じように裁かれるのも変な話ですし(法律上も――日本の話ですが――中止未遂は刑を減軽しなければならないことになっています)。
 
 結局、最終的にはレフェリーの裁量次第な部分があるわけです。そこで、ナスリに対するレッドカードが正しいか正しくないか…あのレフェリーは赤だと判断したわけで、それはそれなりの根拠があるのでしょう(ボクは納得していませんが)。
 
 そういう状況で、「審判団の連携の勝利」と、解説者が(その外に権威があるかのように=自身が絶対的基準を把握しているかのように)決め打ちで語ってしまうのは、どう考えてもおかしい。その判断基準は解説者が決めるものじゃありません。ましてや、今回のジャッジは議論の余地があるところで、明々白々のものではありませんでした
 
 ルールブックを読んでも、そんな細かいことは書いていない。個々の状況は千差万別ですから、レフェリーの解釈次第で判断は変わる筈なのです。こうした状況で、解説者が言えるのは、「レフェリーは(規則のこの部分に従って)そう判断した」ということ、そして「私ならこう判断した」という主観的意見だけの筈です。
 
 ボクはYouTubeをはじめとして、海外サイトのコメ欄やら掲示板を見ていたのですが、海外では、マンUサポですら、「あの判断はおかしい」という意見が主流を占めていました。まあ、一番、支持を集めていたのは「厳しいジャッジだったけど、あのナスリだぜ?誰が気にするんだ?」ってものでしたけど(笑)
 
 …それはともかく。この解説者氏が罪深いと思うのは、次のことです。日本の掲示板やコメでは、当初、ナスリが一方的に悪いって意見が大勢を占めていたのです。それは当然、解説者がそういう論を展開していたからです。のちに、海外の情報(監督のコメントなど)が入ってくるようになって、掲示板/コメの論調が変わりましたが。
 
 権威のようなもので、一方的に判断を押しつけ、それで済まそうとする解説者。これでは、聞いている側の人間は、なにも考えなくなってしまいます。あたかもそこに絶対的基準があるかのような、決め打ちの話し方をする人間に、ボクは解説者をして欲しくはありません。
 
-flowinvain記-
 
「Laws of the Game 2012/2013」(FIFA競技規則)