「衆院選2012<6>戦が終わって…」
冬の衆院選が終わりました。終わってみれば、自民の圧勝、民主の惨敗という結果だったわけですが、これにはいくつかの理由があったと思います。民主が信頼を失ったことが、もちろん一番大きいとは思うのですが、この結果には、もっと周辺的な要素が介在していたと思います。
ひとつは、投票率の低下です。これは民主が信頼を失ったことで、政治不信が高まったこととも関係しているかも知れません。しかし、結局のところ、投票率が下がって得をするのは自民党です。なんたって、自民は、もともと素で持っている票、地盤が他の党とは違いますから。
今回、民主に対する逆風があったというよりは、これまで民主の追い風として吹いていた風が、凪いでしまったというような印象です。無党派層が風を吹かさなければ、かつて、60年余りに渡って、自民に政権を与えてきたシステムが力を発揮するということですね。(実のところ、この風を捉まえる選挙戦術をもっとも得意としてたのは小泉さんでした。だからこそ、小泉政権ってのは従来の自民党的な政権ではなかったわけです)
もうひとつは、多党乱立の影響です。今回、自民が大勝するという予測があったために、各選挙区において、自公 vs 各党という構図が出来上がってしまった。たとえば、ある選挙区で、自民 vs 各党(民主/維新/みんな/未来/共産)という構図になるとしましょう。この場合、ある政策に対する支持が2分(自公vs各党)していたとしても、各党の方は1/5に票が割れてしまうのです。
単純に図式化するとすれば、たとえば、原発維持派はみんな自民に入れるであろうのに対し、脱原発派の票は5つに割れてしまうということです。このため、たとえ全体としては各党の方(脱原発)の得票数が多かったとしても、当選するのは自民の候補者である確率が高くなります。小選挙区制では得票数1位の候補しか当選できませんから。
こうした理由を見ていくと、安倍さんを筆頭に、自民の各候補者も言っていたように、自民に(3年半前の民主のような)積極的な追い風が吹いたという感じは全くないですね。むしろ、小選挙区の特性が、各党の分裂によって、安定的な基盤を持つ自民に、地滑り的な大勝をもたらしたという印象です。大勝とは裏腹に、安倍さんの青い顔が印象的でした。
最初にこの結果を知った時、正直、ボクも「恐ろしい」と思いました。民主党は、たった3年で約300議席から約50議席に激減してしまった。前回を振り返れば、自民も約110議席に激減していました。そして、今回はまた約300議席です。まるで、ジェットコースターみたいな感じですよね。いつまた落ちるか分からない。
誰もが、心のどこかで、漠然と、「このままじゃいけない」、「何かを変えなければ」、「新しくしなければ」と思っている。その漠然とした思いが、次から次へと新しい政権を生み出していく。むしろ、時代のトレンドは、すでに「変わり過ぎてしまう」ということになったようです。海外メディアの多くが、日本の政治の問題点を、「政権がコロコロ代わるから、政策に一貫性がない」と言っていることを考え合わせると、これは皮肉な傾向と言えるかも知れません。
そして、ボクが恐ろしく感じたのは、何より、「日本はまた戦争するかも知れん」ということでした。とは言え、安倍さんという人は、何だかんだ言う割りに、現実路線の人だと思っています。たとえば、前回の首相就任時には、真っ先に中国に行って、関係改善に努めましたし、今年、自民の総裁に再就任した折りも、親中派の高村さんを副総裁に任命しています。ですから、ボクが恐ろしく感じたのは、(いわゆる「タカ派」と呼ばれる)安倍さんが首相に就任したからではありません。
ボクのこの感情。これはネット世論と関わっています。マスコミなどでも、民主惨敗を予想していましたが、ここまでの状況は想定していなかったようです。しかし、それがハッキリと現れていた場所がありました。それはネット世論です。「ネットウヨ」などという言葉がありますが、ネット上では明らかに日本の右傾化が進行しており、そこでの民主党に対する批判はすさまじいものがあります。
ボクの考えでは、ネットで起きたことは、現実世界でも実現します(例:ジャスミン革命)。なぜならば、どこか他の隔離された場所にネット社会などというものがあるのではなく、それはつまり、とりもなおさず現実世界の意思の投影だからに他なりません。今回の選挙結果を見ても、それは明らかなように思えます。
そして、ネット上ではすでに中国、韓国、北朝鮮に対する「戦争」が始まっています。彼らは、もはや、上記3国を敵として認識したかのようです。それでも、ボクは日韓が戦争するとは思えません。なぜなら、両国ともアメリカの忠実な犬だからです。いくら表面上、仲が悪く見えたとしても、ご主人さまの命に背いてまで喧嘩するとは思えない。と言うより、喧嘩したくても出来んのです。
でも、中国に対しては、その「アメリカ・ブレーキ」が通用しません。中国は中国で、ネット世論を抑え切れなくなっているように見えます。それは日本も同様です。もはや、政治家が状況をコントロールしきれない時代に突入しつつあります。ネット社会の特徴は、感情の瞬間的な共有です。そうして瞬間的に共有された感情は、瞬く間に、現実世界に影響を及ぼします。
小選挙区制というシステムが、それに追い討ちをかけます。300から50。110から300。もはや、一握りの政治家が状況をコントロール出来る時代ではありません(数少ないマトモな政治家、仙谷さんも落ちてしまいました)。思い返してみれば、我々がかつて起こした戦争は、政治家が起こしたものではありませんでした。圧倒的な世論が、坂道から転げ落とすように、我が国を戦争に突き動かしていったのでした。
300から50。110から300…ボクには、それが恐ろしくてなりません。