Andre Kertesz
≪West 134th Street, New York≫
さて、今回もケルテスを取り上げます。
とは言え、この写真が「詩的である」と言い切ることは、
なかなか難しいかも知れません。
なぜならば、前回のディストーションとは違い、
きわめて、真っ当な手段で撮影されているからです。
したがって、この写真が「詩的であるとするならば」、
どの点がそうなのだろうかということを考えてみましょう。
まず、ひとつ明らかにしておかなければならないことがあります。
それは、「言葉」を持つ写真が即「詩」であるわけではないこと。
画面右上から当てられた強い光。
光と影のコントラスト。
静かな夜の街を歩く1人の男性。
これらは、この写真に言葉を与えていますが、
それは詩的要素とはまた少し違うものです。
では、何処に注目すべきか。
ここではリズムに注目してみることにしましょう。
この写真には、大きく分けて3つのリズムが存在します。
まず、画面に奥行きを与えるパースペクティブのリズム。
これは、下方から左上に向かって収束しながら緩やかに流れています。
(当然、)車や人、ごみ箱、柱がこの流れに従って配置されています。
そして、第2に柱と人が織りなす垂直線のリズムが存在します。
この1つは、画面中央をほぼ貫き、写真に力強さを与えています。
さらに、これら2つのリズムを制する3つめのリズムがあります。
画面右上からの強い光によって出来る種々の影のリズムです。
右上から左下に流れる、このシャープなリズムは、
緩やかな第1のリズムと、部分的に第2のリズムと絡み合い、
この写真全体の印象を支配しているように見えます。
そして最後に、このリズムを崩す要素が存在します。
それは、アーチ曲線を描く鉄筋です。
これは、第3のリズムにやや同調するように見えますが、
結局のところ、それに従わずに、そのリズムを変調させ、
ともすれば単調にもなりかねないリズムを崩しています。
また、右上で枠を作っているかのような曲線は、
第2のリズムを生み出す垂直の柱から発生し、
最終的には第1のリズムに同調するように、
90度以上の展開を見せています。
(この曲線はまた、著しい遠近感を生み出し、
鑑賞者の視線を動かす役割も担っています。)
(さらに、シルエット化した力強いアーチは、軽やかな地面と対比され、
まるで、地面が吊り下げられているかのような印象を与えています。
これは、我々が持つ固定観念から地面そのものを解き放つでしょう。)
これらすべてが相互に絡み合い、ある統一したリズムを奏でている。
このリズムこそが、ケルテスが見出した「詩的なもの」だった。
そんな風に思えます。
次回もケルテスを取り上げます<(__)>