3章「ヴァーチャルな世界」
反論1章と2章により、テキスト反論箇所の文章は意味が通じていないように思われるのですが、その前の段落で「セカンドライフ」に触れていることから、(無理やりに著者の意図を汲みとって)ネットによるバーチャルな世界⇔日常世界の対比と捉えてみましょう。つまり、反論箇所の文章を
ネットによるバーチャルな世界に、われわれが関わるとき、そうした世界が、どのようにして成り立っているかを、その仕組みを物理的に知っておく必要がある。そのことによってこの世界が、一つのコピー、ひとつの虚構であることを意識化し、それに容易に没入し続ける弊害から逃れることができよう。
と読み替え、その上で反論を試みます。実のところ、反論1と2はここに来るまでの手順に過ぎませんでした。もちろん、これは不規則な手法であり、厳密な反論としては成立しないことをぼくは認めます。
初めに、バーチャルという言葉の範囲を確定させましょう。広辞苑ではバーチャルとは「仮想的。虚像の。」とあり、さらにバーチャルリアリティーという項目へのリンクが貼られています。そこでバーチャルリアリティーを調べてみると「コンピューターの作り出す仮想の空間を現実であるかのように知覚させること。仮想現実。仮想現実感。」とあり、バーチャルリアリティーという言葉が「知覚させること」というところに重心がある言葉だということが分かります。もう少し詳しく調べるために、日経パソコン用語事典で調べてみましょう。すると、仮想空間を表す言葉として、サイバースペースという言葉が出てきます。これは「インターネットとほぼ同義」であり、「ネット上の仮想空間」を指します。そして、仮想現実(つまりバーチャルリアリティー)という言葉の説明では、広辞苑と同じように、「空間があたかも現実そのものであるかのように知覚させること。」とあり、やはり知覚させることに重心があることが分かります。
仮想空間と仮想現実。どうやら、ぼくらは二つの言葉を切り分けなければいけないようです。この両者の違いは、たとえば、ネット上でチャット(文字による会話)をする場所も仮想空間(サイバースペース)の世界であるのに対し、仮想現実(バーチャルリアリティー)の世界では、あたかもそこが三次元空間であるかのように知覚させなければならないということです。ネットに繋がっていなくても仮想現実は作れるので、必ずしも全てのVRがサイバースペースに含まれるというわけではありません。そこで、誤解を避けるためネット上の仮想空間をサイバースペース、仮想現実をVR(バーチャルリアリティーの略)と呼ぶことにしましょう。
バーチャル:仮想的。虚像の。『広辞苑六版』
バーチャルリアリティー:コンピューターの作り出す仮想の空間を現実であるかのように知覚させること。仮想現実。『広辞苑六版』
サイバースペース:コンピューターネットワーク上の仮想空間を指す。主としてインターネットと同義に扱われる。『日経パソコン用語事典』
仮想現実:コンピューター内に仮想の空間を作り、その空間があたかも現実そのものであるかのように知覚させること。『日経パソコン用語事典』
メタバース:Second Lifeに代表される、ネット上に存在する三次元仮想空間のこと。『日経パソコン用語事典』
ちなみに、Second Lifeはネット上に存在するという意味ではサイバースペースに属しますが、そこで三次元的な空間を形成しているという点ではVRの側面も持っています。ただし、その中を歩き回るのはアバターと呼ばれる自らの化身(つまりCG)なので、純粋にVRと呼べるかどうかについては疑問が残ります。日経パソコン用語事典によれば、そうした世界はメタバースと呼ばれるようです。
それはともかく、ここでSecond Lifeを例に些末な反論をいくつか試みましょう。第一に、「Second Life」は単なる虚構の世界ではないということです。そこにはアバターと呼ばれる住人がいて、そのそれぞれの住人は現実世界の人間をrepresentしているのです。そして第二に、そもそも、ネットは(PCを介して)現実世界に生きる人間同士を繋ぐコミュニケーション・ツールであるということです。たとえばSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などは、その典型と言えるでしょう。セカンドライフにも専用のSNSが存在しています。