
遠くにある時はゆっくりと近づいた。
その動きにも気が付かない程に。
近くにある時は過ぎ去るのも早かった。
それを考えている余裕もない程に。
君の降りる駅、君の住む街。
窓鏡に映しても文字は読めない。
気が付けば木々の名前も知らない。
きっと、それぞれに違うのだろう。
失うことが怖いとは思わない。
線路のポイントが切り替わって
取り留めのない連想は空へと散り
空虚な時だけが僕に残された。
まばらな駅の人影、失われる輪郭
色彩だけの中を不器用に通過する電車。
いる筈もない影をぼんやりと探した。
無表情に遠ざかっていく駅は
いつしか地平線の下へと消え
それでもレールは続いていて
果てしない距離を僕は感じた。
いつもの景色、変わらなかった景色。
今となっては、届かない景色。