もうすぐ20時半、看護師に車椅子を押されてミーティングルームへ向かった。

医師、研修医、看護師、7人。

部屋の真ん中に夫が座っていた。

2日ぶりなのに、随分久しぶりの感じがした。


車椅子のまま夫の隣へ。

たくさんの人に囲まれていた。

緊迫した空気に飲み込まれそうだった。


木田先生から病状の説明が始まった。

2日前、合併症がないことを確認して手術を終了した。

肉眼的に出血や多臓器損傷はなかった。

術後に炎症反応の上昇、腹痛の憎悪のため、原因精査を行った。

婦人科手術での癒着剥離の際、消化管穿孔が発生し、汎発性腹膜炎を来たしていると考えられる。


田部先生から手術の説明。

救命のために、腹腔内の洗浄・ドレナージ、人工肛門増設、消化管切除が必要。

早急に手術を行わないと死亡する可能性が高い重篤な状態。


言葉も出ない。

涙も出ない。

人工肛門って何?

あんまりピンと来ない。


夫『妻が何度痛みを訴えても、先生や看護師のみなさん、術後だから仕方ないと対応してくださらなかったんですよね?

どういうことですか?』

私『大丈夫だから』

すぐに夫を制止した。

夫は沸点が低く、普段は全く怒らない。

その夫が見たこともない形相だったので、大変なことが起きているのだと実感した。


私は、まな板の鯉。

この人達に命を預けている。

優等生的対応を選択するしかなかった。


何か聞きたいことはないかと問われたが、何を聞けば良いかもわからない。

しばらく沈黙が続いたが、どうにか絞り出せた。

『私の体の状態が悪いから、こんなことになったんだと思います。

何軒も病院を回ってやっとこちらにきて、すぐに手術してもらえました。

先生方には感謝しています。

状況は理解しました。

だから大丈夫です』


木田先生『手術に伴う合併症です。

申し訳ございません。

心が追いつかない状態だと思います。

日常生活に戻れるように、最善を尽くします』

今にも消えてなくなりそうな声だった。


なんだかかわいそう。

偉い人に怒られるのかな。


たくさんの同意書にサインをしながら、色んな感情が溢れてきた。


大変なことになっていたのに、見落とされていたんだ。

【しつこく痛いって言わなかったら死んでたんですか?】

飲み込んだ。

言えなかった。

将来ある若いお医者さんを傷つけられないと思った。


2日間、病室へ来る人みんなに痛いと言い続けた。

先生も看護師も、向き合ってくれなかった。

でも研修医の伊東先生のお陰で助かった。

ありがとうございます。


恐怖、怒り、安堵、不安、絶望、感謝

感情が追いつかない。


看護師『手術の準備をしに部屋へ戻りましょう』