読書セラピー(幸せのページ)

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木に吹いた風が緑色になるように
花に吹いた風が芳香を運ぶように
風に言葉を託して届けます。

「日本人の外科医は
器用だから手術がうまい
わけではありません」

―不器用な人もいる?

「ええ、大勢います。
でも、その人たちの手術が
危険なのではなく
むしろ不器用な外科医ほど
任せて安心です」

―なぜですか?

「不器用な外科医のほうが
手術は丁寧ですし
慎重に行います。

それに覚えるまで
何度でも繰り返すので
基本がしっかりできている」

―なるほど。

「器用な外科医は
最初は褒められますが
自信過剰になれば油断が
生じます。

外科医で一番大切なのは
間違って血管や神経に
メスを入れないこと。
そのためには解剖学が
わかっている外科医ほど
安全な手術を行ってくれます」

―器用・不器用は
 手術の安全性とは
 関係ないんですね。

「はい。
先に進むスピードは遅くても
基本がしっかりしていれば大丈夫。
後は経験を積むことで
自信が生まれてくるので
不器用な人ほど
大きな失敗は少ないものです」

おわり

出典:『いいことを考えると「いいことが起こる」心理学』(和田秀樹、新講社、pp.108-109)

「手先が不器用だと
就職に不利ですか」と
尋ねるUさん。

「いいえ、そんなことありません」

―でも、私みんなと同じ速さで
 できないし、失敗もするんです。

「Uさん、一般的に
器用なことはいいことだと
思われていますが
料理とか建築関係の
職人さんでも修行時代は
自分の不器用さに
泣かされたという話が
たくさんあります」

―えっ? そうなんですか?

「はい。

『人が1回で覚えることを
何度もやり直して覚えた。
自分は(この仕事に)
向いていないのかなと思った』

指先を魔法のように動かし
お寿司を握る職人さんが
そう言ったことがあります。

器用・不器用というのは
個人差に過ぎません。
何か学んだり覚えたりするとき
大した問題ではないでしょう」

つづく

出典:『いいことを考えると「いいことが起こる」心理学』(和田秀樹、新講社、pp.107-108)

(再掲)

我慢強さの奥には
自己評価の低さが
潜んでいます。

本当の強さは
自分の気持ちを表現し
感情を解放するところに
あります。

もっとラクに
もっと自分らしく・・・。

花は自ら開いていきます。

・・・・・・

まだ2つか3つの幼いころ
アンジェラは両親から
「いいえ」と言っては
いけませんと躾られました。

お父さんと
お母さんの言うことには
素直に従いなさいと
教えられました。

もしアンジェラが逆らうと
お尻をたたかれ
2階の寝室に送られました。

だからアンジェラは
とても聞き分けのよい子に
なりました。
決して怒ったり
暴れたりすることなく
いつも人に分け与え
常に人を思いやる子になりました。

喧嘩をすることなど
一度もありません。
そして、両親が言うことは
すべて正しいと信じていました。

天使のようなアンジェラは
学校でも優等生。

いつもきちんと規則を守り
先生からも躾がいい
おとなしくて
いい子だと言われていました。

でもアンジェラが
心の中で何を感じているか
誰も知りませんでした。

アンジェラは
友だちの間でも人気者。
いつもニコニコしているので
皆に好かれました。

アンジェラが人のために
自分を犠牲にすることを
皆が知っていました。

たとえ風邪をひいていても
疲れて休みたくても
誰かに何かを頼まれれば
いつも「ええ、いいわよ」と
言うのでした。

33歳のアンジェラは
弁護士の妻になっていました。

9歳の男の子と
4歳の女の子に恵まれ
郊外の素敵な家に住み
絵に描いたような生活を
送っていました。

そして、誰かに気分は
どうかと聞かれれば
いつも「ええ、元気よ」と
答えるのでした。

ところが、クリスマスも
近いある寒い晩のこと。
家族の皆は寝静まっているのに
アンジェラは横たわったまま
寝付けません。

頭の中では、恐ろしい考えが
ぐるぐる回っていました。

なぜかわかりません。
どのようにかもわかりません。
でも、彼女はこんな生活を
終わらせたかったのです。

アンジェラは自分を
創ってくださった方に
お願いしました。
どうぞ、私を取上げてください。

そのとき、彼女は
身体の奥底から
低く静かな声が
沸きあがってくるのを
聞きました。
それは、「いいえ」の
ひと言でした。

その瞬間、アンジェラは
わかったのです。

自分のすべきことが
正に何なのか。
彼女の人生はこの言葉に
かかっていました。
家族たちは聞きました
アンジェラがこう言うのを。

いいえ、私はそうしたくないわ。 
いいえ、私はそうは思いません。
いいえ、それは引き受けられないわ。 
いいえ、それは正しくないわ。
いいえ、私が欲しいのはこれじゃない。  
いいえ、そんなのはひどいわ。
いいえ、疲れているの。  
いいえ、忙しいの。
いいえ、やめておくわ。

そんな彼女の変化に
家族は衝撃を受けました。
友人たちも目を見張りました。
でも、彼女はもう
それまでのアンジェラでは
ありません。

その目を見れば
よくわかります。
そこには、かつての従順の色は
ありません。

3年前のある晩に
天使のようなアンジェラは
神様に「いいえ」と
言うことを
許されたのです。

今日アンジェラは
まず自分自身であり
それから母であり
妻であるのです。
彼女はそのけじめを
よく知っています。

彼女は自分自身の生活を持ち
才能と志を持ち
感情と欲求と目標を持ち
自分の銀行預金を持ち
自分の意見をはっきり述べます。

そして、子どもたちに
こう教えます。

人の気持ちを大切に
することはいいことです。
でも、イヤなときに
「いいえ」と言えないのなら
あなた方は決して
自分が本当に望む人間に
なれません。

お母さんだって
いつも正しいとは限らないし
お母さんはあなた方を
愛しているからこそ言うのです。

あなた方は
いつだって私の天使よ
たとえあなた方が
「いいえ」と言ったときも。

出典:『明日はもっと素敵な日』
   (ジャック・キャンフィールド、マーク・V.ハンセン:編著、奥勝實:銅版画、
ダイヤモンド社、pp.76-81)