ランチタイムが憂うつ。
これからお届けする物語は、そんなフィクションです。
・・・・・・
「Aちゃん、お昼行こう!」
いつものようにB子が声をかけてきた。
すかさず
「最近できたイタリアンの店があるんだけど、すごく美味しいみたい。
そこ行かない?」
という提案が続く。
(ん? イタリアン、好きだけど・・・)
と思いながら、あることが引っかかってすぐに返事できない。
「並ぶのイヤだから、早く行こっ!」
B子は急かしながら、私の背中を押した。
店に着いてみると、雰囲気もいいし、お料理も美味しそうだ。
メニューを見ても、私の好きなものがたくさんある。
(ステキなお店だわ)と思った瞬間、いつものあれが始まった。
「ねえ、Aちゃん、今朝さぁー、
部長が『君は仕事ちゃんとやらないから』って言うのよ。
仕事でミスしたのは、半年も前なのに。
全くやってらんないわ」
(またか。B子はランチタイムのとき必ず、愚痴を言う。
部長もしつこいけど、B子も半年同じようなことばかり言ってる・・・)
料理が運ばれてきても、B子の愚痴は続く。
(おいしい! このお魚、最高!)
私はお料理の話に切り換えようとしたが、
機関銃のように喋るB子の話に入っていくタイミングがつかめず、
押されっぱなし。
こうして、いつものように1時間のランチタイムが、
“あっ”という間に過ぎていった。
(あ~ぁ、私はどうしていつも愚痴の聞き役なんだろう?
どうしたら、ノビノビ話せるようになるんだろう・・・)
後味の悪い思いを引きずりながら、午後の仕事にとりかかった。
ランチタイムはときどき、3~4人になることもある。
でも、不思議なのは、私と2人のとき以外、B子は愚痴を言わないこと。
だから、他の人はB子が愚痴っぽいのを知らない。
むしろ、朗らかな人と思われている。
そのせいもあるのかな?
B子と2人でいると、私はウップン晴らしに利用されているような気がする。
でも、こういうのって、いまだけじゃない。
振り返れば、小学校から大学に至るまで、
ずっとB子のような人が私の周りにいた。
・・・ってことは、私の内に愚痴を引き寄せる何かがあるってことかな?
「Aちゃんて優しいよね」
「怒ったことないでしょ?」
「私たち仲良しだよね」
しょっちゅう言われてきたけれど、素直に「うん」と言えなかった。
自分の内の何かが「違う」って感じてたから。
これって何?
私が悪いの?
相手が悪いの?
どうしたら、人と一緒にいて楽しめるの?
いままで気にしないようにしてきたけど、この際、考えてみようと思った。
つづく