この度、エルム凪様の15周年記念アルバム【⠀翡翠 】で作曲を担当させていただきました!
エルム凪様から、神々の王国の姫と旅人の青年による西洋のかぐや姫のような素晴らしい物語をご共有いただき、そのストーリーをもとに楽曲を組み立てていきました。
今回は天上と地上を繋ぐ物語ということで、世界観ごとに使用する楽器を設計しました。
<天上の世界>
・シロフォン
・チャイム
・クワイア
・オルガン
・オーケストラ
→透明感や神聖さを表現する音色で構成
<地上の世界>
・パンフルート
・アコーディオン
・タンバリン
・ターキッシュ系リズムパーカッション
→人々の営みや温かさを感じられる音色で構成
【各シーンの詳細】
1.人々の間で語り継がれる伝承(00:00~00:30):
イントロは夜の海を思わせる波の音と、降り注ぐ月の光のような繊細なストリングスで構成しました。メロディは「人々の間に受け継がれている言い伝え」をイメージした、シンプルな旋律にしています。
実はいただいた物語では、この伝承は物語の最後に登場していたのですが、イントロとエンディングを円環のようにつなげることで、姫と旅人の心、そして果てしなく長い時間が、どこまでもつながっていることを表したいと思ったので、この構成にしました。
2.天上から地上へ急降下(00:30~00:44):
その後、天女たちの歌声によって、一気に時代が過去へと遡ります。
ここは伝承を歌い継いできた地上の人々が、遥か彼方の空の向こうにある天上の国に思いを馳せるようなイメージでもあり、同時に天上から地上へ降り立った姫の軌跡を追うようなイメージでもあります。
疾走感のあるサウンドで、聴いている方も空を飛んでいるような浮遊感のある気持ちになっていただけたらと思いながら作りました。
あと個人的に「人ならざるモノ」のテーマは変拍子で作りたいという思いがあるので、5拍子→6拍子→5拍子……みたいな複雑な拍子構成にしています。
3.天上の掟を破り、地上へ降り立つ姫(00:44~00:58):
私はミュージカル映画の序盤、活気に満ちた民衆が大勢で歌を歌うシーンが大好きなので、Aメロは初めて人間たちの営みを目の当たりにする姫に楽しんで貰いたくて、彼女をおもてなしするようなイメージで作りました。
ガヤガヤした街の喧噪をSEとして入れたり、左右からランダムに町娘たちのコーラスが入ったり……姫を歓迎する楽しい空気感を表現しています。
4.旅人の青年と手を取って踊る(00:58~01:13):
続くBメロは旅人との出会いのシーンをイメージしました。
ここは民衆の輪の中で二人が手を取り合ってダンスを踊っているイメージにしたくて、ステップを踏むような力強いパーカッション類と、旅人の声をイメージした男声音源(SynthesizerV Riku)をハモりとして加えました。
二人の心情としては、旅人の方は「生まれた場所は違うけれど、同じ寂しさを持つ運命の人」みたいなイメージで、姫の方は「惹かれてはいけないのに、どうしても目が離せない」という葛藤を抱えているというイメージで考えていました。
5.神々の国から降りてきた使者(01:13~01:27):
そして、ストーリーを読んだ時に絶対に入れたいと思っていた、天の使者たちが降りてくる場面です。
天の裁き・怒りを表現するため、雷鳴や逃げ惑う人々の悲鳴、鴉の鳴き声などのSEを入れ、賑やかな街の喧噪が翳りを帯びる様子を表現しました。
エルム凪様の多重コーラスの力によって、厳格で美しい使者たちの声が見事に表現されています。
6.「私は、天に帰らなければならない」(01:27~01:44):
天の使者たちによって混乱に陥った街に立ちすくみ、心優しい姫が別れを決断するシーンでは、姫の内面の世界を表現するため、あえてギター一本というシンプルな伴奏にしました。
先ほどの天の裁きのターンで限界まで音の厚みを増していたので、ここに来て一気に音とリバーブを下げることで強いコントラストを演出しています。
7.彼女を想い続けることを誓う青年と、雲の彼方へ消えてゆく姫(01:44~02:28):
そして旅人が手を放す別れのシーンがやってきます。
後半にもう一度Rikuに登場してもらい、たとえ離れ離れになってしまっても、ずっと互いを想い続けるという未来への誓いをデュエットしてもらいました。
姫が空高く舞い上がり消えてゆくことを表現するため、エルム凪様の透き通るようなハイトーンで幕を閉じます。
イントロ直後に登場した天女たちのモチーフを再登場させ、姫が彼女たちに連れられて帰ってゆくイメージを作りました。
8.満月の夜、人々はいつまでも語り継ぐ(02:28~):
そして最後は、再びイントロと同じシンプルな言い伝えのフレーズをリフレインして終わります。
スウェーデン語にはMångata(モンガータ)という美しい言葉があります。これは『水面に映った道のように見える月明り』のことで、一言ではなかなか翻訳できない珍しい言葉なのだそうです。
エルム凪様から「満月の夜、雲の切れ間から光が降り注ぐ日に、人々から語り継がれている伝承がある」というお話をいただいた時、頭の中に浮かんだのがこのイメージでした。まるで姫が旅人の青年と出会うための道を作っているようでロマンチックだなぁと思いまして……![]()
私はエルム凪様の歌声にずっと救われてきました。
可愛らしい姫の歌声も、厳しく厳かな天上の使者の歌声もお一人で歌われている、その歌声の幅広さもそうなのですが、何よりその歌声は、深い奥行きと豊かな感情表現に満ちており、だからこそこれほどまでに多彩な物語を紡ぎ出せるのだと感じました。
私はいつもはSynthesizerVというAIの歌声ソフトを使って曲を作っていますが、今回エルム凪様の歌声が入ったオケを聴いた時に、鳥肌が立つ場面が何度もあり、やはり人間の歌声の持つ固有の力を感じました。
そして他の楽曲の作曲や作詞、イラスト制作をされている、技術的にもお人柄的にも素晴らしいアーティストの皆様とお話をさせていただくことで、非常に大きな刺激を受けました。
今回このような素晴らしいアルバム企画に参加させていただき、本当にありがとうございました。
このアルバムも、ここで得た経験もどちらも一生の宝物です!![]()







