ボカロ民族調曲投稿祭2025にて、2011年に作曲した処女作『追憶のカムパニルヤ』のSynthVカバー版を投稿させていただきました!
動画生成AI『Adobe Firefly』によるストーリーMV付きでお楽しみいただければと思います![]()
1.制作のきっかけ ― Adobe Firefly 無制限キャンペーン
10月1日までFireflyで動画生成が無制限――そんな告知を見た瞬間、当時AIで動画を作るのにハマっていた私の中で何かが弾けました![]()
わし「えっちょ待っあと1週間しかないじゃんどうしよ何の企画も立ててないのに何作ろう
(0.1秒後)とりあえず何でもいいから作るか……」
ということでそこから怒涛の1週間が始まりました。
まずはGemini(nano banana)を使って登場人物のラフ画を生成し、考案したMVの構成をChatGPTに共有しつつ、各シーンに挿入するカットを決めていきます。そして再びGeminiでFirefly用の英語プロンプトを作成し、各シーンを出力して組み合わせるという流れで作業を進行しました
い、忙しい……!
2.題材決定 ― 原点回帰
私がボカロオリジナル曲を作ろうと決意したきっかけとなった楽曲は、おそらくひとしずくP様による『Synchronicity~第二章 光と影の楽園~』だったのではないかと思います。
当時は緻密に作り込まれた物語と、そのシリーズ楽曲が流行しているという大変幸せな時代でした。
当然ながら私もその影響をモロに受け、当時は1つの楽曲を作るたびに、その下地となる短編小説を逐一書いていたほどでした。
今は流石にそこまではしていませんが
それでもひとつの楽曲を作る際は、いつも背景となる物語を考える癖がついているな~と思っています。
今回、動画生成AIでMVを作るにあたり、どの楽曲を題材にするのが良いだろうかと思い悩みました。いくつかの候補曲を思い浮かべた結果、最も物語が明確な形を成していた、処女作『追憶のカムパニルヤ』に決めました。
ちょうど12月に「ボカロ民族調曲投稿祭2025」が開催されることを思い出し、これに合わせて完成させるのが良いのではないかと思ったためです。
実は『追憶のカムパニルヤ』には、今は亡き『魔法のiらんど』というサイトで公開していた前身小説があったので、その時の展開なんかも断片的に思い浮かべながら、「なんか……こんな感じの話だったような気がする……(??)」という朧げな記憶を頼りにMV構成を組み立てました。
何故記憶を頼りに組み立てたのかというと、あまりに昔に書いた小説なので怖すぎて読み返せなかったからです![]()
本来はバッドエンドの物語でしたが、短い楽曲のMVでそれを再現しようとすると後味が悪すぎるので、アレンジを加えてハッピーエンドの展開に変更しました![]()
3.キャラクター設定 ― 新しい三姉妹の形
2011年に公開した原曲『追憶のカムパニルヤ』は、3人のUTAU音源を使っていましたが、今回はSynthesizer Vで制作するため、世界観に合わせた新キャラクターを構築しました。
■ ヴェルマ(Velma)/長女
名前の由来は「Wilhelmina(ヴィルヘルミーナ)」に由来し、“強い意志を持つ者”を意味します。
民衆を脅かす“狼城”の者たちに立ち向かう義勇軍の兵士です。
妹たちと再会するため、地道に情報を集めながら剣の腕を磨いてきた努力家のお姉さんですね。
キャラデザは『欲音ルコ』さんをオマージュし、紺色のマントに黒髪ボブという凛々しい姿に仕上げました。

■ フィオラ(Fiora)/次女
名前の由来は「花(イタリア語系・fiore)」。
幼い頃から狼に懐かれる体質を持ち、その特性を利用しようとした城の者たちに連れ去られました。本当は彼女自身も狼に変身できる、という新しい設定が生えています。
原作では「幼い城主の息子」との恋物語が描かれていましたが、今回は前身にあたる小説から狼男との関係性を採用しました。
生成AIでキャラデザを出力する際、特に髪色や髪型の指定をしていなかったのですが、自然と原曲を歌っている『雪歌ユフ』さんの容姿に似たキャラクターが出力されたのには驚きました。

■ ビビアナ(Viviana)/三女
名前の由来は「生命(ラテン語系・vivus)」。
姉たちとはぐれた後、仕事を求めて乗り込んだ船がまさかの海賊船だったという不遇な子ですが、自由を愛する逞しい性格の持ち主。フリーランスのように各地を渡り歩いています。
デザインは『重音テト』さんをイメージした赤髪ツインテールで、海賊らしく日焼けとそばかすを入れました。
最初は少しダサい服装で出力されてしまったので、「パイレーツ・オブ・カリビアンみたいに格好良い感じでオネシャス」と注文して修正してもらいました。

三人は血のつながりが定かでないまま、孤児として身を寄せ合い、姉妹のように育ちました。
しかし、次女フィオラが城の人間に連れ去られてからは、それぞれ別の道へ。彼女を奪った城の男たちは「納税を怠れば狼の餌にする」と脅して民衆を支配し、恐怖政治を敷いていました。
義勇軍と海賊が立ち上がる背景には、そうした圧政への怒りがあるのですが、ここをナレーション・説明なしのMVで表現するのが難しかったです。
4.シーン構成 ― 言葉を使わずに伝える挑戦
前回soraで動画生成をした時、同じプロンプトでも別人のような顔で出力されることが多いという反省点がありました。
そこで今回も顔がアップになるカットを極力抑え、手・足元・風景などパーツカットを中心に構成しつつ、登場人物の感情をしっかりと伝えるという難易度の高い試みに挑戦しました![]()
「驚きのあまり新聞記事をくしゃっと握りしめる」「月に向かって伸ばされた指先が震えている」など、ストーリーを知らない人にも登場人物の心情が伝わるよう、一つ一つの場面に意味を持たせています![]()
5.Adobe Fireflyでの生成 ― 制作の裏側
さまざまな動画生成AIの中でも、Fireflyは「キャラクターの一貫性」に強いという情報を耳にしたので、どうしても顔のアップが必要なシーンは、人物の描写だけでなくキャラクター名もプロンプトに含めるようにしました。
これが思いのほか効果的で、まるで“ミュージカルの別キャスト版”のように、統一感のある面影でまとまりました。
それとこれは倫理的な問題だと思うのですが、どうやらFireflyでは「子どもが可哀想な目にあう映像」をリアルに生成できない仕様になっているようでした。そのためフィオラが連れ去られるシーンは、「男と一緒に逃げる」など柔らかい表現で回避しました。
その結果、過去の回想シーンだけは油彩画のようなタッチになり、幻想的な仕上がりになったのは嬉しい誤算だったと思います!
6.おわりに
“言葉を使わずに物語を伝える”という挑戦は想像以上に難しく、そしてそれ以上に楽しいものでした。
AIによる動画生成という新しい技術の中で、「感情」や「物語」をどう表現するか――その試行錯誤の結果が、このMVとなっております![]()
約15年前に思い描いていた物語を、架空のミュージカル風の映像として作成することができて本当に嬉しかったです!
原曲を御存じの方も初めて聴くという方も、ぜひ新しい動画を楽しんでいただけますと幸いです!![]()


