(『その2』から つづく。)
今回のお題。
◆ 課題1 (『なんちゃって JLカジノ 2』新規製作)
● 1-2:塗装をマット仕上げに。
前回課題「1−1」のピックガード外す “ だけ “ の作業から、一気にハードル上がります。
禁断の木部に手を付ける作業。
過去に何度もそういうところで取り返しのつかないことをやらかしてますので。
実作業に入る前に諸々検証を・・・というか、ギターの塗装に関するあれやこれやを勝手に語ります。
(念の為、ほぼ私の曖昧な記憶と思い込みに基づくものであることを改めてお断りしておきます。)
★ カジノ のナチュラルフィニッシュについて。
今回『なんちゃって JLカジノ 2』への改造のベースとなっているは『Epiphone CASINO Coupe』のナチュラル・フィニッシュです。
恐らく・・・なのですが。
そもそも カジノ・モデル の存続自体が「ビートルズ の存在ありき」な気もするし、更に製品ラインナップとしてこのナチュラル・フィニッシュの設定というのは多分に『ジョン・レノン』使用機を意識したものとみて間違いないかと思います。
ポールもジョージも カジノ を使っていたとはいえ、やっぱり一番印象深いのは塗装を剥がした後のジョンの機体ではなかろうかと。
となれば、メーカーとしても商売的にナチュラルは捨て置けないはず。
その一方で。
メーカー側の都合としては(シグネチャーモデルは別格として)通常ラインナップではあくまで “ 一般的な “ ナチュラル・フィニッシュでグロス仕上げの設定にするってのも、まあ自然な流れでしょう。
私も、『 ’65年リイシュー』の方とは違って『Coupe』に関しては購入時点では特に今回の記事の様な扱い(JLモデルに “ 改造 “ する)みたいなことは想定していなかったので、ナチュラルの雰囲気だけ味わえればよいかな〜くらいに思っておりました。
しか〜し。
実際に手にしてみると欲が出てしまうというか何というか。
この ↓ ツヤの具合に違和感を感じてしまいまして・・・。
尤も、 “ 違和感 “ とか言ってもそれは単に私の好みの問題でしかないですけど。
第一弾企画の 『なんちゃって JLカジノ 1』の時は、当初は本気で塗装を剥がそうと思っておりました。
今回はそんな気概は全く無く、何らかの方法でツヤだけ消せれば OK というのがこの「1-2」のミッションです。(いずれにしても物理的な作業は伴うので決して楽ではないと思いますけど。)
昔は、 “ ホンモノ “ のジョン機については「ジョンが自分で塗装を剥がした」という伝説の印象から、木材が剥き出しの状態だろうと勝手に思い込んでおりました。
が・・・。
以前の連載記事の中でも触れてますが、1992年の『JHON LENNON DAYS 「ジョン・レノン、もう一つの魂」』展にて実物を観たところ、どうやらそうではなさそう。
展示はガラスケース入りだし/現場ではテンション上がって冷静な観察は全くできていなかったという状況。
それでも、同連載記事ではその時の記憶をこんな風に記述しております。
〜 塗装を剥がしてナチュラルに。但し、全くの木肌剥き出しではなく、何らかクリアー塗装が施されている(様に見える)。
現場での見た目の印象としては「木工用の “ ニス “ 」という感じで、元々の塗料の色なのか/経年で黄変したのかは分かりませんが ほんの〜り飴色の塗膜。
うっすらと刷毛目が残っていて、塗料の重なって厚い部分が更に少しだけ色が濃かったりしたので、「何らかの塗装あり」というところについては割と確信はありました。
その後・・・というか かなり最近ですが。
『Guitar magazine』 2019年1月号の ジョン・レノン 特集の中に、
〜 このカジノは、木部保護のために極薄のニスが大雑把に塗られているだけで、仕上げのための磨き上げはされていないという。
という一文が!!
やっぱり。
私の見立て通りで安心いたしました。
★ 「ギターの塗装を剥がす」という作業について。
過去に雑誌などで見た知識程度ですが、一般的に概ね
[1] サンディング(= 紙ヤスリなどで物理的に削り落とす)
[2] 剥離剤の使用(= ケミカルな処理で溶かして(?)剥がす)
[3] アイロン法(= 温めて浮かせた塗膜をヘラでこそぎ落とす)
といった手法や、その複合で何とかするみたいです。
かつて ビートルズ・メンバー の間で “ 自分で “ ギター(ベース)の塗装を剥がすのが流行り、ジョンの カジノ もその一環で加工されたもの・・・というのはお馴染みの伝説。
また、その理由も
〜 塗装を剥がすと、楽器が持つ本来の音に近付くから。
みたいに説明されているのもよく見掛けます。
ですが、ホントのところはどうなんでしょう。
『塗装剥がし祭り』の前に、メンバー内では『サイケペイント祭り』がありました。
ビートルズ の楽曲『Hello, Goodbye』の MV でポールが弾いている リッケンバッカー・ベース などがそれに当たります。
スプレー塗料で勢い任せに “ やっちまった “ 感溢れる仕上がり。恐らく、「祭り」の熱が冷めた後に大いに後悔するパターンのヤツ・・・ではなかろうか。
で、結局
「このままじゃあ 人前に出せない・・・。
この際、塗装全部 剥がしてしまおう。」
ってなったんじゃなかろうか。
・・・と、私は踏んでおりますが。(違うか?)
あと、” 自分で “ 剥がしたっていうのも、実際のところどうなんでしょう。
ソリッドの リッケン・ベース とかならともかく、カジノ は「ベニア」ですからね〜。
少なくとも紙ヤスリとかで強引に削ったりしたら表層の 1枚目なんかあっさりなくなっちゃう気がします。
若かりしころのジョンが リッケン325 を「ナチュラル」→「ブラック」に塗るのは本当に “ 自分で “ スプレーでやったのかも知れませんが、剥がす方は実はプロフェッショナルの仕事だったりするんじゃないのかな〜。
〜 元々のメーカーの仕様に対してのリフィニッシュ。
という意味での言葉の綾として “ 自分で “ っていう表現になってる気がするんですが。(違うか? Reprise)
まあいいや。
とにかく、『Coupe』のツヤを消したい。
★ そして、ギター塗装のツヤについて。
先に「剥がす」方に触れてしまいましたが、こちらは「塗る」方のお話。
これまた雑誌などからの一般的な知識の範囲ですが、ギターの塗装仕上げとして
[1] グロス仕上げ(ツヤあり)
[2] マット仕上げ(ツヤ消し)
[3] オイルフィニッシュ
くらいの分類をよく見聞きします。
一番フツーなのは [1] のグロス(ツヤあり)でしょう。
[2] は、マット仕上げにも色々あるかとは思いますが、まあツヤ消し仕上げ全般込みということで。
[3] については本来は木肌に直接オイルを塗り込む仕上げのことだと思いますが、恐らく「ステイン」系の着色なんかも含まれている気がします。
今回の『なんちゃって JLカジノ 2』の目指すところは [2] です。
必ずしも「マット仕上げ」と同義ではないとは思いますが、「サテンフィニッシュ」というのもツヤ消し仕上げの一種としてギター界隈ではよく見聞きします。
市販のギターでボディがマット仕上げというのはどちらかというと特殊な部類かと思いますが、
〜 グロス仕上げのボディ + マット仕上げのネック
という組み合わせはよくあります。
製法上の区分けがされているのかどうかも存じませんが、そんな感じで「サテンフィニッシュ」は状況的にネックのツヤ消し仕上げを指す場合が多いので、結果的として「サテン〜」=「ネック」という印象は強い気がします。
因みに。
『ツヤ消しの塗装』と聞いて思い当たるのは・・・。
プラモデル経験者ならご存知かと思いますが、本来ツヤの出る塗料に適量混ぜてツヤ消し塗料にしてしまう『フラットベース』なる添加剤が存在いたします。
理屈はよくは存じませんがそれ自体が半透明のペーストみたいなものなので、恐らく光を乱反射させる成分が表面に出てツヤを消すのではないかと。
一方 ギターの「マット仕上げ」ですが、ネットでちょっと調べてみても「素材」若しくは「技法」のところで具体的に何をどうするのかがよく分かりません。
いくつか見掛けたお話として、
〜 グロス仕上げは最後にバフ掛けをしてツヤを出すが、マット仕上げ(サテンフィニッシュ)はバフ掛けしないままの状態。
みたいなのがありました。何なら、「マット」の方がその分 手間が少ない・・・とか。
ナルホド。
その理屈だと、前提としてツヤありの塗料の塗膜に対してバフ掛けを するか/しないか の違いってことになります。
ただ、塗料がツヤあり仕様なら塗りっ放し状態でもそれなりにツヤは出るはずなので、恐らくバフ掛け前の面出し(サンディング)までで工程を終えるってことかと思います。
で。
私なりに思う、市販ギターの「マット仕上げ」の製法の可能性。
[1] ツヤ消し剤入りの塗料で塗装する。
[2] グロス塗装+面出し+バフ掛けまでした後に、サンディングでツヤを落とす。
[3] グロス塗装+面出しまでの状態で終了。
の 3パターン。
市販品の場合、恐らく現実的なのは[3] でしょうか。
モノによっては[2]のケースもあるかも。2度手間の様ではありますが、むしろ工程によってはこっちの方が適している場合もあり得る気がするので。
[1]はあまりなさそうな・・・。(何となく。)
ふと思い出しました。
私の手持ちのギターにも「サテンフィニッシュ」のネックがあったはず・・・。
そう思って一通り見てみたら、意外にもけっこうあります。
ネックの サテンフィニッシュ って、割と “ 最近 “ の流行り(とは言ってもここ 30年くらいのイメージですが・・・)かと思い込んでおりました。
が。
私の手持ちの中でもほぼ最古に当たる『ヤマハ FG-250』(約 40年前のアコギ)が、既に サテンフィニッシュ のネックでした。
あと、某外国製のアコギがマホガニー材のザラッとした仕上げのタイプだったので、アコギのネックに関してはむしろ伝統的に「グロスではない」のが一般的なのかも知れません。
それ意外は、やはり 30年くらい前以降の国産エレキが概ね サテンフィニッシュ でした。
(これまで ほとんど意識してませんでしたが。)
エレキの方を中心に サテンフィニッシュ の観察をしてみました。
私としては、やはり[3](若しくは[2])の手法であろうという結論。
恐らく「ツヤあり塗装 」の後にサンディングで充分に面を出した状態で終了しているのではないかと思われます。
少なくとも[1]の「最初からツヤ消しの塗装を施す」というのはなさそう。
分かり易い例。
『TOKAI Talbo』 のヘッド。
エボニー指板の限定仕様ネックで、ヘッド表面がグロス仕上げ。
そして、ネック裏 〜 ヘッドの裏&サイド が サテンフィニッシュ になっております。
そのヘッドのサイド、先端部分。
一番先端(『タルボのアキレス腱』と言われている・・・かどうかは知りませんが 多くのユーザーがぶつけて欠けさせている部分)については使用中の擦れなどでツヤが出てしまっている可能性もありますが、問題はその下側(裏面に近い側)。
面出しが不十分で凹凸が残ってしまった部分の底に、「ツヤあり塗装」の痕跡が・・・。
(画像では分かり難いですが、深いところがテカってます。)
もう一例。
少なくとも「ツヤ消し」の部分がサンディングの結果であるという証拠。
現行の『FENDER STRATOCASTER』のメイプル・ワンピースネックです。
ネックのフレット側/及びヘッド表面はグロス仕上げ。
『Talbo』と同じく ネック裏側 〜 ヘッドの裏&サイド面 はサテンフィニッシュ。
よ〜く観察してみます。
グロスとサテンの境界は、フレット側のエッジ 〜 ヘッド表面側のエッジへと繋がって行きます。
これといって明確な段差の様な境目はありません。
サテンフィニッシュ 側を観ると、ヤスリ目と思しき細かいキズが残っております。
木目に沿っているところは非常に視認し難いのですが、決定的なのは ↓ こちら。
ネック裏のヒール部分。
画像のハイライトの周辺、木目が等高線状にカーブを描くのとは無関係に、ヤスリ目がまっすぐネックの長手方向に沿って流れているのが見て取れます。
(この画像だけ、オリジナルはちょっと大きいサイズのモノを貼っておきます。)
少なくともこのヤスリ目が効いた結果の「ツヤ消し」状態なのは間違いない。
あと、こちらも先の『Talbo』に似た塗面の凹部に残るグロスの痕跡が、極小ながらヘッド裏に散見されます。
[2]の様に一旦全体的にバフ掛けまでしたものを改めてサンディングでツヤを落としている可能性も否定はできませんが、いずれにしても結論としては
~ サンディングでツヤは消せる。
ということでよろしいかと。
従って、今回の『なんちゃって JLカジノ 2』については「サンディング」で攻めたいと思います。
・・・という感じで。
もしかしたら「常識レベルの浅〜い情報」若しくは/「私の勝手な思い込みによる誤情報」の可能性のあるネタを、いつも通り ねちねちと語ってしまいました。
今回の考察(?)を踏まえて、次回は『Coupe』を実際に「マット仕上げ」にするための具体的な方策を探ります。
(『その4』に つづく。)
■ FJスズキ ■