娘に勧められて、タラ・ウェストーバー作のベストセラー”Educated; A Memoir” を読み始めました。これ、オックスフォードで歴史学の博士号までとっちゃったアイダホ生まれの作家の自伝です。
(これが、その本)
ちょっと、この人、凄い。
何せこの人、出生届も出てないから、存在すら認知されてなかった。学校教育を否定するモルモン教の狂信者の親に育てられて、学校に行かせてもらえなかった。まともな教育をモブリガム・ヤング大学(これはモルモン教の大学)に入るまで受けたことがなかったそうです。7人兄弟の末っ子。家族を支配する父親が家族に読み聞かせるのは、聖書のみ。
うーーん。
ちょっと、感動するのは、この人、こんな環境にあっても、オックスフォードまで辿り着いちゃったこと。人間、意志を持てば、どんな所でも勉強出来るんですねえ。そう言えば、”Glass Castle”の著者もバーナード大学(コロンビア大学の女子大)出。こっちも壮絶でしたけど。
と言うわけで、今回は、普通の教育制度とは外れた教育について。
ホームスクーリングじゃないですよ。だって、これだって普通の教育内容を違う環境でするだけですからね。
ズバリ、刑務所のお話です。少年刑務所じゃなくて、普通の刑務所。
コロンビア大学でジャーナリズムを学んで、ロサンジェルス・タイムズで国際問題の記者として活躍した後、長いことカリフォルニア大学バークレー(UCバークレー)の大学院でジャーナリズムを教えている教授が刑務所で教えることになったお話。
(これが、UCバークレーの教授が刑務所と関わったお話を書いた本)
ドラモンド教授は、近年の書き殴ったオンラインでの報道をジャーナリズムの終焉だと思って、大学で教えるのも力が入らなかったそう。書き方を徹底的に極めた編集の力が全く無視されたオンラインのニュースに絶望していた。(筆者のブログなんか読んだら、この人、慟哭しちゃうかも。)ところが、カリフォルニア大学メルセッド校で教授をしているかつての教え子に誘われてサン・クエンティン刑務所に出かけて、またジャーナリズムへの道に目覚めちゃったんですよね。
囚人にジャーナリズム入門の授業をする招聘を受けた。この刑務所は、カリフォルニア州で一番古くて、アメリカ国内で一番大きい刑務所です。つまり、重刑の囚人がゴロゴロいるような刑務所です。学校なんてまともに行っていないような人がザラ。こんな教育とはかけ離れたような場所での授業が、教授のターニング・ポイントになっちゃいました。
信じられないくらい熱心に学びたがる囚人に大いに刺激を受けちゃった。(バークレーの学生、しっかりしてよ。囚人に負けちゃってる?)囚人が語る体験談もジャーナリストを興奮させるに十分だった。まあ、これは、刺激的ですよねえ。直接、犯罪者の内面を知ることが出来るんですから。これが8年前。
で、教授、刑務所で新聞を始めちゃった。授業を受けた『学生』たちによる新聞『サン・クエンティン・ニュース』。この新聞、カリフォルニアの刑務所では月1で発行されている唯一の新聞で、発行部数はなんと3万!大したもんです。この新聞の購読者は、サン・クエンティン刑務所に収容されている4千人の囚人、カリフォルニア州内にある35の刑務所、州政府、そして州議員。
(にっこり笑っているのが現在の編集長。この人の交渉力、管理能力はハンパないとか。これは、教授の母校コロンビア大学の発行するマガジンからの引用。)
現在、スタッフは12ー15人、もちろん全員囚人。この教授を含む7人のプロをアドバイザーにして、運営されてます。それから、ボランティアも手伝ってる。このボランティアと言うのが、また、ちょっといいです。UCバークレーのジャーナリズム専攻学生。学生ボランティアは、教授に刑務所に連れて行かれた。学生たちは、初めて刑務所に入った時は、随分、緊張していたみたいですけど、次第に学生たちも囚人との新聞作りに怖さも忘れて、熱が入っていったとか。これ、学生たちにもいい教育環境を与えたんじゃないですかね。
アメリカで、アメリカで超難関大学のUCバークレーのエリート学生と、中学もまともに行っていないような囚人たちのコラボ。お互いが先生と生徒になって発行する新聞。ある意味、囚人の方が人生経験豊富ですからね。教育のチャンスはどこに転がっているか分からないもんですねえ。ちょっと、いい話。
この新聞に載ってる読者の投稿がまたいい。例えば、もうすぐ刑務所を出るんだけど、刑務所は人を更生させるシステムとして本当に機能しているのか、と言う問題提起があったり、死刑囚として収監されている囚人たちが集まって、ある死刑囚は減刑されるべきだと、論を張ったり。生の声を聞くのは、迫力があります。
でも刑務所に入って本気の勉強をしてみろ、とお勧めしている訳じゃあないですからお間違えなく。だって、普通の教育システムの中で頑張る方が、ずっと楽なんですから。
と言うことで、自分の置かれている環境の中で、自分にとってのベストの選択をして、ベストの方法で頑張って下さいね。
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