疲れたーーー!
朝、5時半起きで、高速95号線を北上して、娘の室内楽コンサートに出かけて来ました。しかも日帰り。ブランチコンサートだったんで、10時までに娘の大学に着きたくて。たった10分の出番だったんですけどね。親バカ。道中、ニューイングランド地方の紅葉を楽しみましたけど。
で、面白い話を聞きました。
先日のブログで、オーバーリンのオーケストラに普通の学生は入れない、って話を書きましたけど、まさしくそんな学生がいる、って話を娘から聞きました。今年、オーバーリン大学から娘の大学に編入してきた男子学生の編入の一番大きい理由がチェロが弾きたい。びっくりしました。今は、上手いプレーヤーだと言う評価を受けて、大学のオーケストラでチェロを弾いているとのこと。
いるんですねえ、本当にそんな学生が。それで、頑張って、アイビーリーグに編入?オーバーリンでは音大に入れなくて挫折感を味わったんでしょうけど、最後は世間的には勝ち組ってことですかねえ。面白いですねえ。
それはともかく、音楽で生きていこうという覚悟は、バレエ男子の進路(前のブログ見てくださいね。)と同様、簡単には行かないようです。
と言うことで、今回は、『神童だった』あるお嬢ちゃんのお話を。
このお嬢ちゃんとは、筆者の娘が参加したバイオリンのマスタークラス(有名な先生に見てもらえる公開レッスンのこと。こう言うレッスンに出るのも結構、大変で、推薦だとか、オーディションだとかを受けてやっと見てもらえる。)で、初めて会いました。娘は、その頃中1で、地味にバッハの『パティータ』を弾いたんですけど、このお嬢ちゃんは小学5年生で、サン=サーンスの『序奏とロンド・カプリチオーソ』を弾きました。あの、技巧に走るメチャクチャ派手な曲です。
(これが『序奏とロンド・カプリチオーソ』の楽譜。ただし、娘の楽譜)
高名な先生は、このお嬢ちゃんが、曲名を言ったら、『ふー〜ん』って感じだったんですけど、第1楽章を弾き終わった時のコメントが面白かった。
『ちゃんと、弾けるんだねえ』
この言葉に尽きる、演奏でしたねえ。実際、びっくりするほど、巧かった。バイオリンは、その曲が弾けると言っても、音が外れていたり、テクニックが雑だったり、それはそれはレベルが色々あります。
で、このお嬢ちゃん、楽譜通り。全く楽譜通り、弾きました。まるで、機械みたいに正確。いやあ、びっくりしました。ホント、『ちゃんと、弾けるんだねえ』です。それ以上でも以下でもない。幼い彼女には、このドロドロした曲はちょっと早かった。
筆者は、こんな才能の塊みたいなお嬢ちゃんが、いつソリストとしてデビューするんだろうか、と思いながらこのお嬢ちゃんの成長を楽しみにして来ました。でも、人間的な成長が必要だろうなあ、とも思いながらも。
このお嬢ちゃん、その後、娘と同じ芸術高校に進学しました。入学当時はまだ、バイオリニストとしての道を真っ当に歩いていたと思うんですけど、反抗期が来ちゃった。
まず、ディズニーチャンネルに出ている同級生と付き合い初めて、選択科目として本来取るべき弦楽室内楽グループのクラスの代わりにそのBFが取っているゴスペルのクラスに入っちゃった。バイオリンの先生も親も筆者もみんな
『えーーーーっ!』
でも、このイケメンBFの効用はありました。
高1のリサイタルで弾いたチゴイネルワイゼンは、ナヨナヨするくらい良かった。同じ人とは思えなかった。機械じゃなくなった。恋愛は人を成長させる(?)
情感のあるバイオリンを弾くようになったんですけど、世の中にバイオリン以外のものがあるって、気がついちゃった。ゴスペルもそうですけど、大学の進路も。小さい頃からテクニックだけがやたら凄い少女が、やっと人間になったんですけど、他のこともしたくなっちゃった。
(筆者の娘とこのお嬢ちゃんがいた芸術高校のオーケストラ)
で、その後どうなったか。
彼女は、今年ボストン大学に入学しました。小さい頃から神童として育って来て、誰しもが彼女がコンサートホールの中心で演奏するものだと信じていた彼女が。バイオリンで大学に行かなかった!
これが成長、と言うことなんでしょうけど、これだけの才能を持った子がその才能をみすみす捨てちゃうのは、心が痛い。このお嬢ちゃんも、色んな迷いが出る前にデビューしていれば、人生変わったんでしょうけどね。残念、バイオリニストをひとり失っちゃいました。
才能があっても、保証のない芸術の世界で生きて行くのは、非常な勇気がいるんですけど、色々な迷いの出る思春期をうまく乗り切るのも難しい、ってお話です。このお嬢ちゃんにこそ、オーバーリンみたいなリベラルアーツ大学と音大の両方の勉強が出来る所に行って欲しかった!
まあ、他人の余計なお世話なんでしょうけど。
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