メモリアルデーが終わって、アメリカでは夏シーズンが始まりました。会社でも子供の夏休みに合わせて、旅費が高くても仕方なく休暇をとる人が増えます。ホント、人の足元を見ますよねえ。
(サンタバーバラでカヌー)
日本では、『夏を制すものは受験を制す』なんて言ったりしますけど、アメリカでも同じです。長い夏休みをどんなに有効に使って、大学進学に繋げるかは親も子供も大問題です。塾の夏期講習に行くという手もありますけど、大学のセミナー参加もあり。サイエンスキャンプに行くのもあり。ミュージックキャンプに参加するのも良し。スポーツキャンプだってあります。だから、年の初めから夏はどうするのかを決めるのは大仕事です。キャンプによっては、エッセイを書いたり、成績を出したり、音楽だったらオーディションのビデオを提出したりなんて言うのもありますからね。だから、夏の過ごし方は、半年前から始まっています。
で、そんなこんなの準備が済んで、この時期小中高生とその父兄は、学校が終わるのを待つばかりなんだと思うんですけど、大学生も結構、夏は忙しい。大学で夏学期の授業を取って、単位を取る。インターンとして働いて、将来の就職に備える。アスリートは、トレーニングがある。音楽専攻の学生は、夏の音楽フェスティバルに参加する。もちろん、バイトでお金をとにかく稼ぐというのもあります。こちらの方も、半年前から準備が必要です。
筆者の息子は、数学専攻なんですけど、夏休みは地元の州立大学でコンピュータープログラミングのクラスを取ります。それはそれでいいんですけど、息子が自由に使える車がないので、仕方なく送り迎えをする羽目になりました。送ってすぐ迎えに行くのは嫌なので、授業の後も学校に残って宿題は済ませて欲しいと言ったら、『うん、分かった。どこか黒板の使える所で勉強する』と答えました。
えっ、黒板?
今時、黒板なんてあるの?ホワイトボードなんじゃないの?第一、この息子、黒板なんて見たこともなかったんじゃないだろうか?と思ったりしたんですけど、涼しい顔で、『テスト勉強は、いつも数学図書館か、数学課の教室の黒板を使ったんだよね。図書館で勉強するよりずっといいんだ。』と。『いやあ、黒板いいよね。体全体を動かしながら、問題を解くと何でも解けるんだ。』と宣った。
へえー。
(これが今アマゾンで買える羽衣チョーク)
よく聞くと、黒板は大学の教室どこにでもある訳じゃあないらしいです。どうやら、数学教授のいる所にはあるらしい。
そう言えば、近頃、数学者たちがチョーク版ロールスロイスについて話をしているユーチューブを見ました。『世界一』のチョークを作っていた名古屋の羽衣文具が2015年に廃業してしまってからの数学者たちの悲哀、そしてそのチョークを引き継いだ韓国のチョーク会社が製造を開始してアマゾンを通じてまた買えることが出来るようになった喜び、だけどやっぱりオリジナルには敵わない失望、について語るものです。
いやはや。世界の数学者は、黒板書きが好きなんですねえ。
スタンフォードだの、アイビーリーグのコロンビアとかコーネルだのの数学の教授たちが、羽衣のチョークの書き心地がどんなに素晴らしくて、間違った定理なんて黒板に絶対書くことはない、とか語っちゃうのはちょっと可愛い。その会社が清算されると聞いて、15年分くらい買い占めたとか、数学者の間でもう市場にないチョークを闇市のように売り買いしているだとか、先のことが見通せずちゃんと買って置かなかったことを悔やんでいるとか、真剣にそんな話をしているのが面白いです。
スタンフォードの先生は、東京大学の教授が自慢げにちょっと使ってみろよ、凄いから、と言ったチョークを試した結果、ハマっちゃったと言っていました。アメリカの数学者たちは、日本土産にチョーク、と言うのが定番だったらしい。
ローテクの最たるもののチョークにも粉が手につかないとか、すべすべの書き心地だとかハイテクを極めるものがあったんですねえ。ちょっと、勉強になりました。と言っても、もうこのチョークはないんですけどね。まがい物があるだけで。残念。日本の技術はこんな所にもあったんですねえ。
と、ここまで書いて気がつきました。息子は、コンピュータープログラミングのクラスを取るんですから、黒板は関係ないじゃん。バカだなあ。
ともあれ、8月半ばまで送り迎え頑張ります。とほほ。
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