ニューヨークの古本屋で吉田秋生の名作漫画『カリフォルニア物語』を見つけて、買ってしまいました。この話、題名とは裏腹に舞台はニューヨークなんですけど、その中の登場人物たちはカリフォルニアに憧れながら、凍えそうなニューヨークの寒さに震えているんですよね。
と言う訳で、今日も当地は粉雪が舞っています。筆者も長年住み慣れたカリフォルニアは、夢だったんじゃないだろうかなどと、バカなことを考えてしまうくらい寒いです。
前回、シングルファーザーのお話をしたんで、公平を期す為に今回は、シングルマザーのお話。映画でもTVでも結構苦労しているシングルマザーのお話は、お涙頂戴的に出てくるんで、ちょっと、違うシングルマザーのお話を。
筆者の息子を通じてキンダー(幼稚園の年長)時からのお付き合いしているお宅のお話。初めて、学校で会った時は、Aちゃんは、お父さんとお母さんと一緒でした。ご両親同士の苗字は違っていたんですけど、アメリカではフェミニストとか夫婦別姓だし、中国系の人も夫婦別姓だし、まあ取り立てて不思議とは思っていませんでした。ちなみに、こちらはお父さんが北欧系で、お母さんがユダヤ人。背が高くて、色白で茶髪の可愛い女の子でした。
父兄参観にも、学校行事にも両親揃って参加しているし、てっきり仲の良い夫婦だと信じていました。ある時、お父さんが来ていなかったので、『あら、珍しい。今日は、ご主人いらっしゃらないんですか?』と聞いたことがあります。すると『あの人は、私のハズバンドではありません。』と言うので、離婚したんだと思って『じゃあ、あなたが養育権をおもらいになったんですね。お一人で、大変ですよね。』と返したんですが、『彼とは一度も結婚していません。』と言うではないですか。ああ、内縁だったんだ、だから苗字が違ったんだ、と思った次第です。
でも、それも違っていた。お母さんがずっと養育権を持っていた。生まれた時から。子供の苗字もそう言えば、お母さんのだったし。つまり、お父さんは、単なる精子提供者。一緒に暮らしたこともない。『えっ!』です。お母さんは、実は、レズビアン。それでも子供が欲しかったので、知り合いに頼んで、協力してもらったと言うお話。だから、お父さんは、一銭も養育費を払っていなかった。そりゃそうだ。
面白いのは、子供に、正々堂々とお父さんを紹介していたことですかねえ。子供には、将来、誰がお父さんなんだろう、と言う疑問を持たせたくなかったそう。ご立派。そう言えば、貰われた子供たちが、大人になって本当の親を探す、なんて話よく聞きますからねえ。
このお父さんも大したもんで、生物学的に自分の娘なので、正々堂々と成長の様子を見させてもらっていたというお話。お母さんが、きちんと事ある毎に、招待していたみたいです。だから、このお父さんが娘の前に現れるのは、学校行事の時のみだった。つまり、こちらの『ご家族』と筆者がお会いする時にだけ、この人たちは、家族だったと言うことです。
世の中、色んな人がいます。
このお母さん、あのカリフォルニア工科大学で博士号まで取った科学者で、某大学の教授。だから、TVのシングルマザーみたいに、生活に苦労していると言うことはなし。お父さんは、地元の警察官。だから、Aちゃんは、お母さんから優秀な頭脳、お父さんから強健な身体能力をもらったハイブリッド。究極の組み合わせ(?)ですよねえ。お父さん、背が高くて、マッチョで、他のお父さんと比べても抜きん出てカッコ良かった。流石、インテリのお母さんは、知らない人から精子の提供を受ける冒険はせず、自力で提供者を開拓した。だからこそ出来る組み合わせ。恋愛で結びついた夫婦だったら、同じようなタイプでくっついちゃいますもんね。いいなあ。
このお父さん、小学校の頃は、いつもきちんと学校行事に来ていたんですけど、そのうち中学に入る頃には、全く見かけなくなりました。その後、きちんと結婚して、自分の家族を大切にしているとか、聞きました。まあ、こっちは、単なる精子提供者で、本当の意味では、お父さんじゃなかったんですから、そうなんでしょうね。フェードアウト。妙に会っちゃうと自分の家族に波風が立ってしまいますから。
インテリのお母さんは、筆者にすらどう言う子供なのか教えてくれたんですから、きっとAちゃんにもきちんと、どう言う経緯で生まれたか話したことと思います。他人から、Aちゃんの耳に入るよりも先に。
で、ハイブリッドのAちゃん、高校時代は水球で活躍して、名門リベラルアーツ大学に行きました。文武両道。お母さんの思惑通り(?)に良い子に育ちました。
めでたし、めでたし。