この週末は、フレックスラーニングのある市内の中学校が提供するビジネスEXPOにブースを出しました。
アイビーリーグのブラウン大学に在籍している2人のチューターも来てくれて、中・高生の質問に答えてくれました。筆者は、そんな2人にブースをまかせて、他のベンダーを冷やかしたりしてましたが、そのうちそれにも飽きて、このブログを書き始めました。
(大学進学の相談を受けるフレックスラーニングのチューター)
ちょっと面白かったのは、市内の高校生が『放課後に小・中学生の宿題を手伝います』と言うブースを出していたのですが、その競争相手にとも言える高校生たちは、フレックスラーニングのチューターのところに進学相談にやって来たことです。子供達に教えられるぐらいの勉強の出来る高校生ですから、アイビーリーグを狙っている子もいたりして、いい機会だったようです。お役に立てて、良かったです!
アメリカの公立学校区は、州から支給される予算だけでは、十分ではなくて、色々なファンドレイジングつまり、寄付金集めをしています。フレックスラーニングが参加しているエキスポもそんな学校区の資金集めに貢献したわけです。ブースを出すのに学校側は、業者からお金を取って、それで集まったものを足りない予算に加えると言うしくみです。実際、州は、基本的な授業をするための予算しか組んでいません。ですから、どの学校区も、教材を買ったり、音楽や美術やスポーツの先生を雇ったりする為に、奔走します。
筆者が長年住んだ、カリフォルニア州では、映画俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーが知事だった頃、それはそれは、教育費が削られて、PTAは大騒ぎでした。教育予算が無くなると、まず、教師の数の削減があります。普通、雇われて5年以下の新米教師からクビになります。どんなにいい先生でも、クビになります。それと、コアの教科でない、音楽だとか、美術だとか、そんなものから無くなります。学芸会だとか、遠足だとか、そういうイベントも切り捨てられて行きます。情緒教育なんて、直接勉強に関係ないものから切り捨てようというわけです。
極端な話、勉強だけすればいいのなら、近頃は、オンライン授業も充実しているし、学校に行かせなくてもいいくらいです。だから、本当に学校に行かないと出来ないこと、つまり、クラスメートと組んでやるプロジェクトだとか、合唱とか、ミュージカルだとか、サイエンスフェアだとかが、(そういうのが学校に行かないと出来ないことに当たるんだと、思うのですが、)教育費の削減で、とばっちりを受けます。ちょっと、マズイと思いませんか?それに、一人じゃ、サッカーも出来ないですしね。チームがいるでしょう。
少女漫画の世界では、一番の目玉は何と言っても、学園祭。これだって、教育費が削れれれば、無くなります。それは、マズイでしょ。彼氏との進展が無くなるし。アメリカの中高生なら、ミュージカルに参加して、その打ち上げパーティーとかで、本命の子と上手く行く、って筋書きになるかも。それが無くなるのは、ちょっと悲しい。親にしてみれば、どうでもいいことでしょうけど、結構これ、成長の上で、大切。
小中高生のレベルだけではなく、この予算削減は、大学レベルまで大きく影響します。カリフォルニア州立大学は、提供できるクラスの数が減って、学生は、クラスの登録が上手く出来ずに、4年では卒業出来ないのが普通になりました。それに、寮だって、1年生は保証して貰えるけど、後は、自力で探してね、なんて言われたりしますし。結構、学校にお金が回らないのは、問題です。
で、学校の予算が減らされると、学校のレベル差が拡大します。要は、親がお金を持っている地区は、学校のレベルを落とさない為に、学校に寄付をすることになります。ですが、ロスアンジェルスのような大都市には、貧乏なヒスパニックがたくさんいるのですが、そういう地区だと、親からの寄付なんてまず期待出来ません。なんせ、給食費免除の子供がワンサカいるようなところですから。だから、州も、ロスアンジェルス市内の学校には、ちょっと、多めにお金を回して、郊外のお金持ち地区には、『自力でやってね』のノリで、本当に最低限しか予算を回しません。それでも、ロスアンジェルス学校区は、潤沢ではありませんから、コアの授業が中心になります。
お金がないせいで、どんどん入ってくるヒスパニック新移民の為に学校を増設することも出来ず、ロス学校区の1部は、20年くらい前から、アメリカ伝統の長い夏休みを廃止しました。要は、細かに生徒のグループを纏めて、こっちグループの子供は、この時期に学校に行って、そっちのグループはお休みにするという具合です。だから、見かけ上、1年中学校が開いていることになります。こういう学校に入ると、前、お話したような、サマースクールだとか、キャンプだとかは、無縁になります。もっとも、そういう子供の親が高いキャンプに子供を送ることなんてないでしょうけど。
誰でも知っているお金持ちのビバリーヒルズのお話をちょっと。ここは、州から、貧困地区の子供を何百人か引き受けることで、最低の教育費分配金にちょっと上乗せしてもらっていました。貧困地区から、選ばれた子供たちは、バスで、越境入学が許され、ビバリーヒルズの高いレベルの教育を地元の不良から離れて、タダで受けることが出来るわけです。これは、本気で、勉強したかった子供には、凄く魅力だったと思います。
ところが、先述の某ハリウッドスターは、州の予算合わせをする時に、教育費をバッサリ、してしまったので、ビバリーヒルズは、上乗せ金額がほとんど無くなりました。そういう子供たちには、給食費も、通学バス代も市から出さないといけないし、結局、貧困地区の子供を受け入れるのは、金銭的にマイナスになるという結論を出し、市議会で『もう、やめた!』と、結論を出してしまいました。自分たちの子供たちを教育する為に必要なお金を懐からもっと出さないといけなくなったのに、何でまた、他所の子供の面倒までみないといけないんだ、というわけです。真っ当な結論ですけど、今まで、ビバリーヒルズの学校で育った子供には、辛い現実だったことと思います。綺麗事を言っても、世の中、平等では、ありませんからねえ。
ビバリーヒルズを始め、郊外のお金持ち地区では、親が不足分の教育予算を賄う努力をします。先生の数は、減らしたくない、イベントは継続する、音楽も美術もやる、スポーツチームのコーチも雇う、と言った具合です。じゃあ、どうやって、お金を集めるのか。新学期に学校から、父兄は、先ず、教室で必要な教材資金のお願いが来ます。各学年毎、先生たちがまとまって、「ポスター用紙とか、ペンだとか、絵の具だとかが買いたいから、200ドル頂戴』と言った具合に、言って来ます。まあ、きちんと、明細も書いてあるし、直接担任の懐に行くんですから、父兄は払いますよね。それから、イベントがある毎に、お金を出すことになります。
市単位での集金活動も活発です。市は、住民の賛同を得て、不動産税徴収の際に、教育税というのを上乗せする。金額は、年間500 - 3,000 ドル(5万から30万程度)と言ったところです。その地区の教育レベルが高いというのは、不動産の価値にも影響してくるので、子供の居ない家も、喜んでとは、言わないまでも、納得して出します。嫌でも、送られて来る不動産税の支払い請求書に書いてありますからね。
その上、子供を学校に行かせている家には、寄付金の要求が矢のように飛んで来ます。例えば、300万ドル(3億円くらい)集めないと、先生を10人解雇しないといけない、と言った理由で、です。それで、新学期から、寄付金集めの目標金額の書いたビラだとかメールだとかが、定期的に来ます。目標、300万ドルとか、書いた大きい立て看板が市の目ぬき通りに出ます。
筆者の住んで居たロスアンジェルス郊外の市では、学校に通っている子供一人に付き、年間2000ドル(20万円くらい)求めらました。そして、払った人の家の前にだけ、その学年が終わる6月始めに、1週間、立て札が立ちます。これが、物凄い、プレッシャーになります。要は、世の中に、ここの親は、お金を払わなかった、と言われるんですから。しかも、1年中、誰が出したか、のリストがウェブサイトにアップデートされます。『あああ、隣のジョン君の家は、もう出したんだ。でもトム君のとこは、まだね。』なんて具合に、一目瞭然。そして最後のトドメが、この5ドルもあれば、出来るような立て札の見せしめというわけです。だから、親たちは、泣く泣く、お金を出します。
(この立て札ひとつ2000ドルなり。ボーイスカウトがボランティアで立てて回ります。)
郊外の学校区では、『うちは、公立の環境の私立です』なんて、平気で言っちゃいますから。やれやれ。
だから、高い私立に入れるよりも、ちょっと値段は高いけど、レベルの高いこの地区に家を買って住もう、と思っていらしゃる方、ご注意。本当に金銭的に得をするかは、分かりませんからね。どれだけ、寄付金を要求されるのか、ちゃんと、ソロバンをはじいてくださいね!
はい、まいどあり!