いきなり、週刊誌の見出し風に始めてしまいました。漫画の題にしても、ブログの見出しにしても、『えっ、何だろう?』というようなものに惹かれますよね。で、ちょっと、試して見ました。
でも、ご心配なく。ちゃんと、題名に偽りない内容のお話をしますから。綺麗事じゃないアメリカの社会事情をお伝え出来ればなあ、と思っています。
ナナというのは、アメリカでは、自分のおばあちゃんとか、育ててくれるベビーシッターのおばさん(英語ではナニー)を呼ぶ時の愛称です。だから、子供達が、『うちのナナがね』と言うと、おばあちゃんのことか、ナニーのことだと思って間違いないです。まあ、どちらにせよ、子供のお世話をしてくれる大切な人たちです。子供が一番好きな人たちと言っても、いいかも。
(おばあちゃんと筆者の息子)
東海岸では、子供のお世話にオペアと呼ばれるヨーロッパのティーンエイジャーを1、2年契約で雇うことがままありますけど、カリフォルニアでは、ヒスパニックのおばさんをナニーとして雇うことが多いです。土地柄、ヒスパニックは多いですからね。それに、ティーンエイジャーよりも経験はあるし、いい人に当たると、それはそれは、可愛がってくれます。
で、今回は、筆者の家のナナ(シッターさん)にまつわるお話です。日本でも、アメリカでも、両親ともに仕事があれば、保育園に子供を預けるのが、普通ですけど、筆者は、長年、出張も多いし、残業も多い仕事をしていたので、色々、考えた末、融通のきくナニーを雇い入れていました。決まった時間までに、迎えに行かなくていいですしね。ナニーのお話は、また機会があったら。
今回は、そのナナの娘のお話。
(ナナと筆者の息子)
ナナの長女であるヘレンは、(はは、実名を出しちゃいました!)16才で初めての子供を産んで、25才で産んだ双子まで入れて、計6人もの子持ちです。で、未婚です。我が家のナナは、ヘレンが双子を身篭った時は、怒り浸透でした。しかも、どの子も違う相手との子供ですからね。(双子は、当然ですけど、同じお父さんです。)大したもんです。実際、ぽっちゃりしたナナとは、違って、ヒスパニックとは思えないほど、ヘレンは、スリムな美人でした。
どうして、そんなことになったのかと言うと、ヒスパニックの男は、マッチョ文化の心酔者で、惚れた女には、自分の子供を産ませたい!と考えるようなのです。それで、ヘレンは、付きあう相手が出来ると子供を持つ羽目になってしまったと言う訳です。いやはや。
日本の方々は、アメリカに住んでいても、あまりヒスパニックの人達の生活に関わることは無いようですけど、筆者は、ナナを通じて、この人達のカルチャーにも明るくなりました。明るくなったと言うか、望む、望まないに関わらず、随分、いろんなことに巻き込まれました。
で、ヘレンです。ヘレンは、10才離れた妹と一緒に、ナナについて、ガテマラから移住してきたのが、15の時。アメリカに来たものの、言葉は分からないし、一応、高校に突っ込まれたものの、どうしていいか分からず、親切だった同じ高校のメキシコからの男の子と、まず1子。2人は、若いし、生活力も無く、ナナはとにかく娘をそのまま孫と一緒に養育を続けることに。ヘレンは子供を産んだ時点で、高校はドロップアウト。家で赤ん坊の世話をするだけの毎日は、16の娘には、ツマラナイし、近所の別の若いメキシコ人とやっぱりいい仲に。それで、二人目。
ここで、ちょっと豆知識。ヒスパニックと言うのは、中南米出身の人達ですが、ブラジルを除いてみんなスペイン語を話すので、国を超えて、結構、仲良くなりやすいです。それから、まずカトリック信者。日本でカトリックと言うと、真面目そうな深窓のご令嬢なんて想像しちゃうんですが、ちょっと違うかも。カトリックと聞いて押さえないといけないツボは、離婚が許されていないところ。(ほら、イギリスのヘンリー8世だって、それで、カトリックから離脱したでしょ。)問題は、このヒスパニック、情熱のラテン系ですから、色恋は大好き。それで、現実的に、一人の人と一生添い遂げる覚悟がないと、結婚しない訳です。節操があるんだか、ないんだか。だから、カリフォルニアには、ホント、若い未婚の母がゴロゴロいます。
余談ですけど、我が家に長年来ていたクリーニングレディ(お掃除オバちゃん)は、ナナの手下のメキシコ人でしたが、4人の子供を同じ相手と作った末、(一緒に住んで20年たって)40過ぎて、結婚しました。やっと、年貢を納めたと言う訳です。お祝いをあげたら、恥ずかしがっていましたけどね。きちんと、結婚式もしました!マリーンに入っている息子が孫を連れて、参列しているのが、感慨深かったです。(彼も、高校時代に子供を作ってしまったんですが、ちゃんと卒業して、マリーンに入隊しています。ちょっと、エライ!)
ヘレンは、子供を持つとで、国から貧乏な親に支給される養育費(月に300ドル程度)が貰えることになりました。有難い制度ですが、子供を持てば、持つほど、収入が増えていくことになります。しかも、州からは、粉ミルクだのの支給もあるし、結構、使えるお金ができちゃった。20才で出来た3人目の相手とは、一緒に住み始めたんですけど、そりゃ、自分の子供もいないのは、フェアじゃない、男の意地で、ヘレンにまた、産ませてしまった。それで、3人の男の子の親に。結果、900ドルの収入確保。
ヘレンは、美人だし、ラテンの男は、すぐ声をかけるし、他に好きな人が出来て、3人目の男の家を出奔し、4人目のアパートに。うーーん、結婚してないと、この辺りは、楽なのか!不思議なのは、ヒスパニックの男は、子供がいてもあまり関係ないみたいです。それはそれなりに、いいのかなあ。で、この男は、ヘレンが既に何もせずに不労所得が900ドルもあることにも惹かれていた、と言うオマケ付き。ちょっとねえ。アメリカ風に言えば、『ノーウェイ ホセ!』です。(それはないよね、の意味。ホセはしかもヒスパニックの男の一番多い名前だから、ますます状況にピッタリ。ははは。)それから、3人めの相手と同じく、男としての甲斐性(いや、能力?)を見せる為にも、また子供を作らせちゃった。今回は、女の子。
ねっ、だんだん構図が見えて来たでしょ。不法移民にとって、確実に入るヘレンの収入は、垂涎のマト。それで、次は、ケンタッキーフライドチキンに人の名前をかたって、働いている男に言い寄られ、一緒になっちゃった。ここまで来ると、ご立派!少なくとも、この男、働いているだけましですけど、いつバレて解雇されるか分からないし、日本人のヌクヌクした世界に生きて来た筆者には、驚きの連続!このヘレン、5番目のことは、結構、本気みたいで、クリスマスに金鎖のネックレスなんか買ったりして。もちろん、国からもらった養育費から。このプレゼントを見つけて、ナナが凄く、怒りました。『お金が余ったら、子供の為に貯金しろ!』って。当たり前です。ついでに、税金を払っている筆者も怒った。『こんな男の為に、私は、子供を置いて、何日も出張したのか!』って。
ナナは非常に働き者で、真っ当な人間ですけど、ヘレンは、無理やりガテマラから連れて来られたことを結構、恨んでいる。好きな父親には、もう会えなくなったし。ナナにすれば、アメリカでお金を稼いで、実家に仕送りしようと思ったし、母親として、未成年の子供を手放したくなかった。だから、ナナとヘレンの間には、深い溝があります。
だから、ヘレンは寂しくて、余計に行き当たりばったりに、優しいことを言う男に引っかかる。それを見て、ナナがゲキ怒りする。そんな関係が嫌で、ヘレンは、雲隠れ。5番目の男のアパートが何処か、しばらく、ナナは知りませんでした。お笑いだったのは、ナナは、4番目の男に頭を下げて、次の男のことを教えてもらったこと。もっとも、ナナは笑っていませんでしたけどね。やれやれ。
あれから10年。ヘレンは、子供も成長して、扶養手当の金額も減って来て、やっと仕事を始めました。ナナとは、正面からはいがみあわないようになりましたけど、関係が完全に修復しているわけではありません。とは言いながら、ナナの勧めで、お年寄りの介護の仕事をしています。5番目とは、とっくに別れて、今は7番目だか8番目だかと一緒にいますが、子供の数は、増えていません。良かった!
でも、現実は厳しく、落ち着かなかったヘレンの子供たちは、まだ小さい双子を除いて、学校を全員ドロップアウトしてしまいました。働きもせず、ゴロゴロしているとか。それでも、生きて行けるんなら、結構ですけど。だから、ナナの苦労も絶えません。今だに、1日15、6時間労働中。
ついでに下の娘のことを言うと、高校はきちんと出て、コールセンターの仕事をしています、バイリンガルですしね。でも、お姉ちゃんを見て育ったせいか、筋金入りのレズビアンになりました。まあ、これも人生!ははは。
世の中、どんなことをしても生きて行けますけど、満足出来るかどうか。皆さまも、ご自分の人生、正しく、生きて下さい。