『大きくなったら、何になりたい?』
この質問は、誰しも幼児の頃から、投げつけられましたよね。筆者は、この質問に答えるのは、苦痛でした。考えてもみて下さい。人生経験の少ない子供に何が答えられるのでしょうか?知っている職業も少ないし、知っている職業の人が好きかどうかで判断するしか術はなく、子供の割には、処世術にたけた筆者は、その質問をする人の職業を答えることにしていました。ほんと、小憎らしい子供でした。
勇気のある少年たちは、この無神経な質問に対し、『仮面ライダー』と答えて大人を煙に巻き、少女たちは、『お嫁さんになりたい』と言って、大人に媚を売ったりしていましたよね。まあ、いずれにせよ、大人の顔色を伺う回答であったような気がするのですが、どう思われますか?
筆者は、長年、仕事をして来たので、アメリカの大会社で部長だとか、役員だとかをしている、いわゆるキャリアウーマンという人たちとの付き合いがあります。その中で、特に親しくしている白人の女性がいるのですが、ある日、そういうキャリアウーマンが集まってのディナーの席で、彼女がショッキングな話があるのよ、と言って話してくれたのがこれです。
小学校4年生になる彼女のお嬢ちゃんが、学校の授業で、将来の人生設計についての作文を書かされたらしいのですが、その時に、『お嫁さんになって家庭を守りたい』と書いたそうです。筆者は、アメリカの女の子でも、やっぱりそんなことを言うんだなあ、と妙に感心してしまいました。でも、もう4年生ですから、大人から聞かれて仕方なしの返事じゃなくて、お嬢ちゃんなりの熟考した結果だったことを考えると、ちょっと驚きました。友人が嘆いたのは、お嬢ちゃんの人生設計は、あまりに非現実的で、現段階でそんな考えなら、将来的なオプションを狭めてしまうではないか、と言うことです。まあ、そうでしょうね。
悲しいかな、日本でもアメリカでも、可愛いお嫁さんになって、後は、She lived happily ever after... なんていう生活は、今どき難しいですからね。世の中厳しく、始めから、白馬の王子様に養ってもらおう、と言う図式は描けなくなって来ました。
男であろうと、女であろうと、小学生のうちから将来、どんな職業につこう、なんてことを決められる人は、ごく僅か。大体の人は、その時、その時で選択をして行った結果、何らかの職業につく、と言うパターンかと思います。ですから、その時が来た時に、選択肢を多く残しておくためにも、現段階で、出来ることをして頑張りましょう、と言うことだと思います。
その友人は、アメリカの大銀行で役員まであと一歩の所まで、登り詰めている人で、それはそれは、優秀で、良く働きます。営業を束ねているポジションなので、いつもいつも出張ばかりしています。だから、そのお嬢ちゃんは、母親のメチャクチャな働きぶりに、寂しい思いをしているのかもしれませんけど。それでも、働く母親の背中を見て育っている訳で、そこから、人生のあり方を学んで欲しかったなあ、と、母親も寂しく思ったと言うお話。結果、思いっきり、説教をして、泣かせちゃったらしいです。お嬢ちゃんも、親心わかってくれるといいけど。
良く、考えて下さい。学校時代は、女子生徒の方が良く勉強して、成績も良かったですよね。アメリカでも、大学進学は女子の方が多いです。アイビーリーグも女子学生の比率の方がちょっと高い。だから、普通に考えると、社会に出た途端、女性が出来なくなる、と言うのはちょっと不自然ですよねえ。まあ、家庭を持った場合に、女性への負荷が大きくなるということなんでしょうねえ。働く女性のお話は、また機会があったらしたいと思います。
性別に関係なく、人に頼るのではなく、自分の人生設計は、自分のことを考えてして欲しい、と言うのが友人の主張で、そこに居合わせた筆者たちは、全員、相槌を打ちました。仮に、いい男性と結婚出来ても、その人に頼る人生だと、何か起こった時に対処が出来ない、っていうこともありますしね。
このキャリアウーマンの集まりで、面白い話も出ました。お嫁さんになって、悠々自適の生活をしている人の話です。でも、その人もそこにたどり着くまでに、物凄い努力をした、と言うところがミソ。
その女性は、誰もが認めるほどの美人で、モデルに何度もスカウトされたくらいスタイルもいい。で、彼女は、高校の時に、お金持ちと結婚をする、ことを人生設計にしたそうです。単に、夢を見るのではなく、具体的な計画を立て、実行に移したとか。まずは、NYの大学に進んで、その頃から、ウオールストリートのインベストメントバンカーたちが集まるバーやクラブを調べて、そこに通い詰めた。そして、彼女は、美貌を保つためのあらゆる努力をした。話が理解できるように、大学では経済を学び、本も読みまくった。ここまでするのなら、自分がインベストメントバンカーになってもいいじゃないかと思ったりしたんですけど、まあ、お金持のトロフィーワイフになるべく修行を積んだそうです。それで、大学卒業と同時に、晴れてお金持ちと結婚した。めでたし、めでたし、と言うお話です。ここまで来ると、頭が下がります。これも、ちょっと違った意味での、自助努力のお話。
皆さん、『将来、何になりたい?』という質問を子供に安易にするのは、やめませんか?聞かれた方も、聞いた方もそれなりに、困るような気がするので。それよりは、その時にやっていることを応援しましょうよ。