猛暑の中、いかがお過ごしですか?
暑い時はホラーで、というのは、昔からある正しい日本の夏の過ごし方であるかと思います。私は、大学の頃、『13日の金曜日』シリーズにハマっていて、友達と集まると、部屋を暗くして、ビデオを観ると言うあまり、自慢にならない趣味がありました。何回も見ると、どこでジェイソンが襲いかかって来るか覚えてしまうんですけど、それはそれで、さあ、来るよ!と言う具合に盛り上がっておりました。オリジナルはそれなりに、何でそんなことになったのか、きちんと説明されているんですが、続編、続々編になって来ると、意味もなく、単に怖い、と言う良く分からない話になって行きます。それは、それで、もう趣味ですから、観てしまうわけです。
ここからが本題ですけど、この『13日の金曜日』の舞台になっていたのが、アメリカの典型的なサマーキャンプです。子供たちのお世話をしている大学生のカウンセラー同士のカップルが、ちょっと森に入ってしまったり、いい感じになるとジェイソンの出番です。ジェイソンの話はこのくらいにしておきます。まあ、ちょっと涼しくなりたかったら、ご覧ください。
アメリカの、特に東海岸のアッパーミドルクラスは、子供たちを4−8週間もの長い間、キャンプに送る伝統があります。親は、暑い都会で仕事をして、週末の面会日に、長時間ドライブして、数時間会いに行きます。子供がホームシックにならないようにケアパッケージと言って、好きなお菓子だの、本だのをつめた箱をせっせと送ります。親は、ちょっと大変そうに聞こえますけど、久しぶりに子供抜きで、お洒落なレストランに出かけたり、大人の映画を見に行ったり出来るという恩恵もあります。
このサマーキャンプは、森や湖なんかの近くにあって、子供達が寝起きする2段ベッドがいくつも壁に作りつけてあるキャビンが中に点在しています。同じキャビンに、ジェイソンのターゲットになる(これは、私の単なる妄想)2人のカウンセラーが一緒に生活しています。ジェイソンも推奨するサマーキャンプですけど、結構な値段です。何せ、1ヶ月とか泊まりで、全食事付きで、たまに、遠足にも出かけて、しかも毎日めくりめくような、お楽しみがあるのですから。これが、ちょっと前までの典型的な、いいとこの子供たちの夏の過ごし方でした。
ところが、最近は、長い伝統を誇ったキャンプもどんどん廃業に追い込まれているようです。東海岸を縦断する高速道路95番沿いをニューヨークからボストンに向けて走っていると、かつては、賑わったと思われるキャンプ場の一つがあるんですが、夏になっても人気がなく、森の木に取り付けられたロープのジャングルジムがそのまま残されています。ロープだけが風に揺られているのを見るのも、結構ホラーです。いろんな意味で、アメリカ人も子供たちをただ遊ばせておく余裕がなくなってきたと言うことでしょう。
日本では、『夏を制する者は、受験を制す』とか、言ったりしますけど、アメリカも近頃は、同じ傾向にあります。アイビーリーグを始め、有名大学への競争率が年々上がって来ていることに比例して、アメリカでも教育熱は加熱気味です。のんびり、サマーキャンプで子供を遊ばせている余裕はなくなって来たわけです。息子がロープにぶら下がっている間に、息子と同じクラスのジョンは、ロボットを作っているんですから。
学校区によりますけど、普通2.5ヶ月とかある長いお休みを、子供の将来に直結して、しかも経済効率が良いのか、せちが無くも、親たちは、最近、とみに考えているのが現実です。
ジェイソンも子供が消えたサマーキャンプ場で、活躍の場を奪われてホラーを感じているんでしょうけど、子供達も夏休みに勉強を強いられるようになって、やっぱりホラーを感じているのかもしれません。
これを読んで、いやあ、日本もアメリカもせちがないなあ、怖い世の中になったもんだ、とホラーを感じて頂ければ幸いです。このお話続きます。