中学校生活は、

毎日が 「バスケ部の練習の苦痛」 だった。



「行きたくない……」



朝起きた瞬間から、

まずそう思う。



学校が終わっても、

すぐに帰れるわけではない。

待っているのは、

バスケ部の厳しい練習。

行かなければならないと分かっているのに、

足取りはいつも重かった。



「なぜ、こんなに部活がイヤなのか?」



ボクは、

とにかく 「目立ちたくない人間」 だった。

目立つと、

他人からの評価がついてくる。

うまくできれば褒められる。

でも、

 失敗したら叩かれる。

だから、

目立つのが怖かった。

特に 

「嫌われる」

 ことが怖かった。







バスケ部の練習は、

とにかく厳しかった。

先生は いつも怒鳴っていた。



「お前ら、何回同じミスをするんだ!」



「そんなんじゃ試合にならん! やり直せ!!」



誰かがミスをすれば、

連帯責任で走らされる。



「声を出せ! 走れ! 気合が足りん!」



体育館に響く怒号。



心臓が縮み上がるような感覚。



そして、

ミスをした本人はみんなからの冷たい視線を浴びる。



「こいつのせいで、

また走らなきゃいけない……」



そんな空気が、

ひしひしと伝わってくる。



ボクは、

できるだけ「怒られないように」立ち回った。

ミスをしないように。

余計なことはしないように。



でも、

それでも怒られるときは怒られる。



消極的なことでも怒られる理由となるのだ。



ボクは、萎縮していくばかりだった。







そんな息苦しい部活から解放される

唯一の時間があった。



家に帰ってからの、

スーパーファミコン。


ボクの時代は

スーパーファミコン全盛期。



「ドラゴンクエスト」

「ファイナルファンタジー」

「ストリートファイター」



どんなに疲れていても、

コントローラーを握れば、

一気に現実から逃れられた。



小学生時代は、

親のルールで

「週に一回しかゲームをしてはいけない」

という決まりがあった。



でも、

中学生になってからは、

そのルールが緩くなった。



もしかしたら、 

「もう中学生だから、

少しは自由を与えてもいい」

と親が思ってくれたのかもしれない。



でも――

ボクにとっては、

その 「少しの自由」 が、

逆にボクを縛ることになった。







学校が終わると、

バスケ部の練習。

帰宅すると、

スーパーファミコン。

それを毎日毎日繰り返す日々。



部活は

「逃げられない苦痛」 だった。

ゲームは

「逃げられる楽しさ」 だった。



だから、

家に帰るとすぐにスーパーファミコンの電源を入れる。

コントローラーを握れば、

嫌なことは全部忘れられた。



でも――

そんな生活を続けるうちに、

ボクは気づいた。



「……なんか、

何も成長してない気がする」







気づけば、

 中学生活は

「苦痛」と「逃避」

の繰り返しだった。



バスケ部の練習が

イヤでイヤで仕方なかった。

でも、

やめることはできなかった。



そして、

家ではスーパーファミコンに没頭。

それだけの生活。



勉強は、

ほとんどしていない。

定期テストの直前に、

「最低限の勉強」をするだけだった。

それでも、

学年で30番以内には入れていた。

だから、

「このほどほどなくらいでいいや」

と思っていた。

成績が良いわけでも悪いわけでもないため、

目立たないほどほどなバランスだと。







朝起きて、

学校へ行き、

部活に行き、

帰ってきたらスーパーファミコン。



同じことを繰り返す毎日。



でも――

その「繰り返しの中で、何も変わらない自分」 に

気づいていた。



「このままでいいのか?」



「何かを変えるべきなのか?」



でも、

どうすればいいのか分からなかった。



そして――

何も変えないまま、

中学生活は過ぎていった。



ボクが成長したのは

「身体的な成長」だけだった。

内面は、

何も変わらなかった。

ただ、

 同じことを繰り返すだけの、

そんな日々だった。