前から長髪で背の低い人が腕を組んだ状態で歩いてきた。距離が近づく途中でそれが男性だと分かった。額が広く、頭のてっぺんから毛が左右に流れている。歩道を歩く彼と僕がそろそろぶつかろうかという時、車道と反対側の駐車場に彼は大きくそれた。腕組みしたまま歩く姿がまず興味をひき、また大げさに避ける様子は見つめた僕の目を怪訝そうな面持ちにさせたかも知らん。彼は道からさらに大きくそれて、僕をうかがっているように見える。猫かと。
河川敷にいる。どうやら暮らしている。時折、畳が流れてきてそれを集めている。単にそれを重ねた。徐々に高くなるそこが寝床だった。土手には集合住宅がある。2畳程度の容量の、カプセルホテルの要領で、狭い体積にあり得ないほどの戸数がそこにあった。楽しいことはなかった。畳が流れてきては川を泳ぎ、それに乗って岸へ帰る。重ねては土手を見上げる。高さで追いつきたかったのか。しかし目標とするそこもまた楽しさなどなさそうだ。
エレベータの“閉”のボタンだけが汚い。“開”はまっさらな状態だ。必要性でいえば“開”のほうが重要である。乗降が激しい時、大きな荷物を持っている時など、扉を開けておかなければならない。それに対して、扉は一定時間が経つことによって自動で閉まるのであるから“閉”は絶対的な存在ではない。いかに、せっかちな状況下で暮らしているかが垣間見える。かくいう僕もエレベータに乗るや否や“閉”を連打するのであるが。“開”が不憫に思えてきた。降りるフロアの数字を押して意味もなく“開”を、指が間接のところで反り返るほどに強く押した。対等な立場になる日まで。

交流戦地元4連戦の最後は楽な試合展開で締めた。浅尾は決して良くなかったが、謙虚な姿勢は好感度が高い。まだ勢いで投げている段階。谷繁にしばかれつつ大きくなっていく。ロッテに連勝はしかも苦手の渡辺俊介を叩き、このまま勢いに乗りたいところである。

しかし前半までの戦いで守り勝つのが中日のベースボール・スタイルだと思い知らさせれた矢先の荒木の再離脱は痛い。沢井、森岡、鎌田で果たしてどこまでカバーできるか。早く戻ってきてほしい反面、完治までは静観したく、やるせない。

大きくなった がいつものように道路を横断して、それを見守る常連の顔ぶれも覚えた。仕切りたがっている初老の女性がいる。生き甲斐になっているのであろう。必ずといっていいほど見る。緑道を遮る車道に鴨が出る際は両手を大きく広げて往来を止める、そんな彼女の顔はどことなく車に似ていた。どこがどうという説明はつかないのだが、車を髣髴とさせる。その目はしきりに瞬きして、まるでハザードを焚いているかのようだ。飽きない要素は至るところにある。

いろいろあり過ぎた。まずは荒木が2塁を守って、打順も1番に据わっていることに驚く。李はともかくとして中村紀は機能していたものの、2人が2軍に落ちて、まだ完治していないとは思われるが荒木が戻って従来のオーダーに戻った感じがした。

2回の福留のタイムリーで僕はこの後まだもう1本、おそらくホームランを打ちそうな予感がしたのだ。「それ見たことか」といっても周り誰もおらず証言が得られないのが辛いところ。

そして9回の攻防で密度の濃い体験をする。何があっても岩瀬を責めることはない。責める気にはなれない。ただ仕方のないこととして結果を受け止めるだけだが、こう、らしくない投球が複数あると切なくなる。悲壮感は常につきまとう。

「まさか負けるとは」から「まさか勝つとは」へ変わる結末は展開がめまぐるしくて感情が追いつかない。英智がチャンスに強いとなると、プロ野球選手として非の打ち所がなくなる。

7人という大所帯で復習をメインに多くのリズムを刻む。バラクランジャ、アバンダン、ジャンサ、カキランベの伴奏に関しては滞りない。新しい人と叩くのは新鮮だ。何に長けているか、どういう叩き方をするのか、ということを知るのも、人となりが分かるようで楽しい。リズム感、リズムキープ、出す音、叩き方、記憶力、応用力、要領など、自分も含めてそれぞれ個性があり、得手不得手がある。突き詰めれば性格判断にまで発展できそうだ。