ジョジョの奇妙な冒険 第9部

ザ・ジョジョランズ 第1巻 レビュー

 

作:荒木飛呂彦

発行所:集英社

 

 

 

 

表紙は第9部の主人公ジョディオ・ジョースター

このブログ記事では、『ジョジョの奇妙な冒険 第9部ザ・ジョジョランズ 第1巻』のレビューを行っている。

作品の感想や考察、次巻以降の展開の予想を通して、作品の魅力を共有できれば幸いだ。

 

 

 

登場人物

ジョディオ・ジョースター:本作の主人公、夢は大富豪になること

11月の雨(ノーヴェンバー・レイン):ジョディオのスタンド、勢いや量を自在に操れる雨粒を発射できる

 

ドラゴナ・ジョースター:ジョディオの兄、メリル・メイの経営するブティックに勤務している

スムース・オペレイターズ:ドラゴナのスタンド、固定された物を動かしてずらすことができる

 

パコ・ラブランテス:手癖が悪い、ジョディオと同じ高校に通っている

THE()ハッスル:パコのスタンド、自身の筋肉を操作して物を掴んだりできる

 

メリル・メイ・チー:ジョディオの高校の校長、ブティックの経営やその店で販売する服のデザインもしている、ジョディオ達の犯罪チームのボス

 

ウサギ・アロハオエ:どこか軽い調子のある人物、メリル・メイの推薦でジョディオ達のチームに新たに加入する

THE() MATTE(マッテ) KUDASAI(クダサイ):ウサギのスタンド、誰かが欲しいと思う近くにある物に変身できる生物を生み出す

 

宝石の所有者:ジョディオ達に宝石を盗みに入られる日本人

 

謎の猫:宝石の所有者の家で出くわす、スタンド使いと推測される

 

 

 

あらすじ

 主人公のジョディオはオアフ島に住む15歳。兄のドラゴナやパコと共に犯罪チームに属しており、薬物の販売をしている。警察に疑われることもあるが、スタンド能力を駆使して難を逃れる、という生活を送っている。

 そんなある日、チームのボスであるメリル・メイから、ダイヤを盗んでくるように、と指令が出る。そのダイヤとは、とある日本人がハワイ島に所有する別荘において保管されていて、24カラット600万ドルもするらしい。さらに、メリル・メイから別荘は広い、という理由でウサギを紹介され、4人で行くことになる。

 初めて行動を共にするウサギに戸惑いつつも、4人でハワイ島に赴くが……。

 

 

 

本書の感想

 まさか、いきなり主人公が犯罪をする話から始まるとは思ってもみなかった、というのが読後の第一の感想だ。『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズは部が変わる毎に、主人公や登場人物は一新される。部を跨いで登場する人物も中にはいて、それが作品の世界観の構築に一役買っている、と個人的に思っている。この主人公の交代によって、作中の時代背景や舞台も変更できるため、部が変わる毎に新連載のような新しさを読者に感じさせる。

 

今回で9人目となる歴代のジョジョの中には、警察のお世話になっている人物が比較的多い。そこから更に掘り下げて、本格的に犯罪組織に加入している人物、となると第5部の主人公の『ジョルノ・ジョバーナ』以来だろう。

 

 

 

 第1巻ではあらすじにもあるように、以下の3つの出来事が起きた。

①    警察に逮捕されるリスクのある仕事

 警察の中にスタンドを視認できる人物が未だ登場していないことから、ジョディオ達はスタンドを使って犯罪を有利に勧めている。スタンド能力自体に強い弱いは存在しない、と作中で明言されており、実際に「馬鹿とハサミは使いよう」という言葉がある。使い手の工夫次第で強くも弱くもなるのがスタンドだ。

 

作中での使い方の例としては、ジョディオが自身のスタンド能力で薬物を溶かして、警察からの捜査を逃れる場面がある。一々口でキャラクターにスタンド能力を説明させるのではなく、何かあったときにストーリーの流れで能力を駆使して物事を解決することで、どういった能力なのか読者の印象に残る工夫がされている。

 

しかし、第6部のように警察に逮捕されてどん底にまで落ちるが、そこから大逆転、というのも面白そうだ。何らかの罠にはめられたその先で新たな仲間を得る、という展開だ。今時流行らないかもしれないが、獄中で自身の正義や黄金の精神を身に着け、そこから大逆転。物語としてのカタルシスが無いとは言い切れないだろう。

 

 

 

②    宝石泥棒に行くジョディオ達

 ジョディオは犯罪者チームに所属している、と紹介したが、今のところボスのメリル・メイとパコと兄のドラゴナの四人しか登場していない。この4人は以前から共に活動している顔なじみと思われるが、新たにメリル・メイの紹介でウサギが加入する。ウサギの言動は軽い感じで、今後もこの4人がメインでストーリーが展開されるならば、ムードメーカーの立ち位置に納まりそうだ。

 

 

 

③    宝石泥棒失敗!?

   宝石を見つけることは出来たものの、見張りのジョディオを除いた3人は宝石の所有者とスタンド能力を使用する猫の1人と1匹に鉢合わせてしまう。この宝石の所有者はこれまでの『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの読者なら、誰もがアッと驚く人物となっている。

 

3人は宝石を手に持っていることもあり戦闘になるが、その場に居る全員がスタンド能力を使えることもあり、相手のスタンド能力による攻撃から逃れるためにスタンドを使用する。つまり、1巻から本格的なスタンドバトルの醍醐味を楽しむことが出来るようになっている。

 

   この場面に関しては、ジョディオだけ別行動を取っていることが良い方に転びそうだが、なぜか手や鞄から転げ落ちている宝石、についての謎解きも2巻以降にお預けとなった。誰かしらのスタンド能力なのか、超常現象のようなものか、そもそも宝石を持ち逃げすることが出来るのか、それらも含めて2巻ということになるだろう。また、今後の展開予想や考察については『本書の考察』の項目で行う。

 

 

 

本書の考察

ここからは2巻の展開予想や第9部全体の展開予想を含めた考察を3つ行う。

 

①    『ジョディオ』と『ジョルノ』の共通点

まず、前提として、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズはというと、第1~6部と第7部以降とで、明確に世界観が分断されている。細かい説明は省くが、第6部の最終盤での出来事を端緒にして、パラレルワールドという形で主人公の系譜などが一旦リセットされた、という歴史がある。

 

第7部以降の主人公や登場人物の中には、名前などに一新される前のキャラクターの名残があったりする。主人公のジョディオの場合、ジョジョ+ディオから来ていると思われる。第5部の主人公のジョルノはディオの息子として登場している。つまり、ジョディオはジョルノを意識したキャラクターとして、今後も描かれていく可能性がある。

 

共通点は名前以外にもある。チームの下っ端であること、スタンド能力を利用した犯罪集団に所属していること、1巻の段階で夢や目標があること、言葉少なだが周囲を観察してさりげなくサポートしていること。細かく見ればもっと共通点はあるだろう。

 

 

 

②    2巻の展開予想

 主人公以外でも第5部と共通点が出てくるだろう。ズバリ言うと、宝石は持ち帰れるだろう。どこまでなぞるかは分からないが『ジョジョの奇妙な冒険』はシリーズ全体を通して、負けていい闘い、というものが全く無い。負けに限りなく近い闘いの場合、引き分けや逃亡、和解といったパターンで命のやり取りを回避している。今回の場合、宝石の所有者とは何らかの取引をして警察に通報しないように持ちかけるだろう。流石に『あのキャラ』とのっぴきならない関係になるとは考えられない。

 

ただし、猫に関しては、言葉が通じない以上倒すしか無いだろう。ただ、第3部のペット・ショップのように誰かの指示で行動しているのか、第4部の虫喰いのような野生の存在なのか、が気がかりだ。もし裏に人間がいるのなら、別の犯罪チームが存在していることになる。主人公達のことを妨害していることから、少なくとも味方ではないことは確かだ。

 

 

 

③    第9部全体の展開予想

 大まかにだが、どこかでジョディオ達はメリル・メイを裏切る、または独立するかもしれない。これには根拠があり、ジョディオが大富豪になる、と語っていることを信用してのものだ。

 

 何をして大富豪になるのかは不明だが、富が自然と流れ込んでくる『仕組み』を自身の物にすることで成就される、とジョディオは考えている。そのためには、下っ端のままだと使い捨てや飼い殺しで終る可能性が高い。第5部のディアボロも下剋上が起きないようにしているシーンがある。

 

 お金を儲けるためにはリスクを取って新規事業を行うか、安定を取って既存の事業を行うか、大まかに二つに一つだろう。私が以前読んだ転職関係の本でも『サラリーマンが収入を増やそうとしたら、成長しきった産業や業界、業務を転職の際に選択すると、自身が主戦力になる前に衰えてくる』と解説していた。近年話題になっている副業でもそれは顕著だ。あくまで本業が軌道に乗っているから副業。本業がおろそかになってはならないのだ。

 

話が転職や副業に逸れてしまったが、これをジョディオの今後に当てはめてみよう。すると、一つの仮説が立った。それは、今居る組織を乗っ取るか独立するかをしつつ、既存の組織があっ、と驚くようなアイデアを生み出して既得権益層に入りこむことだ。先ほどの転職の話のように、既存の組織と同じ事をしつつ、新しいことをして抜きん出る。そういった飛び移りがスムーズにできるのかが『仕組み』には必要なのかもしれない。

 

第1巻を読んだ時点での感想や考察のため、どこまで当たるのか楽しみだ。