「夢のような夏」がいつまでも続かないことは分かっていたつもりだった。
気が付けば日暮れは早くなり、稲穂は首を垂れ始めている。
季節は移ろうのだ。
そして、否が応でも長良川の鮎もだんだん成熟していく。
この時期の鮎は気分屋だ。
腹が重くなってくると、終日追い合うようなことはしない。
一日に数回は時合が来るが、それ以外の時間は沈黙の川になるのだ。
その濃淡は、秋が近づくと日に日に強くなっていく。
9/16(土)
この日もそうだった。
早朝から板取川合流の寺瀬に入ったが、渇水の上に鮎のご機嫌も悪いようで、昼までに10匹程度しか掛からず、御神手洗(オミタラシ)に移動する。
ここでも夕方3時ごろまでポツリポツリとしか掛からない。
それも、色が白く追い気の弱い中型以下のサイズばかり。
先週まで掛かったような大型は、まったく姿を現さない。
その鮎の腹の中も見たが、落ちてしまうにはまだまだ早い成熟度合だった。
どこにいるんだ?
正解を見つけられないまま日が傾いてきた。
そこからが時合だった。
周囲の釣り人の竿も一斉に立ち始める。
ほぼ入れ掛かり。
ガツン!ギューン!!
オトリを差した瞬間にひったくる。
しかし、針立ちが悪く掛かった半分がバレる。
皮が固いのか、アタリが弱いのか?
大鮎狙いの太軸大針から並軸中針に変更して、やっとバレは減ったが、まだアタリの1/3は水面で外れてしまう。
(自分の下手さに落ち込むほど)
鮎のサイズに対して竿が硬いのか?
それとも、まだ針が合っていないのか?
掛かる鮎は、全てヒレまで真っ黄色で怒っているがサイズは中型どまり。
しかし、宴はたった1時間で終焉。
また川は沈黙し、引いても泳がせても何の反応も返さなくなった。
結局バレバレで、捕れたのは掛けた半分ほどだろう。
この日の釣果は30匹ぐらい。
夜は師匠と反省会だ。
焚火を囲んで鮎を焼く。
日頃のお礼を兼ねて私の特製鮎飯を作った。
まだ夜風は蒸し暑いが、虫の声に秋がきてしまったことを知る。
酔いながら気が付くと、毎年同じような会話をしていた。
もう何十年も鮎釣りをしてきた二人でも、鮎釣りは分からないことばかりなのだ。
どれだけ考えても答えは見つからない。
師匠の愛車のように、そこには技術や道具が進歩しても到達できない何かがある。
だから、こんなにも魅入られてしまうのだろう。
9/17(日)
この日は用事があって、釣りができるのは朝だけ。
朝食後7時半からさっそく竿を出す。
昨日の感触から、どうせ朝からは掛からないだろうと高をくくっていた。
しかし、そんな期待をも鮎は裏切る。
昨日は、どれだけ探っても音沙汰もなかった荒瀬の中でいきなりアタリが出る。
それも良型。
更にアタリは止まらない。
ほぼ入れ掛かり。
こんなチビのオトリにも
すぐに、こんな大きな奴が掛かる。
でも、やはりバレが多い。
そして、急に追いが止まる。
実釣は1時間くらいだっただろうか?
夢のような入れ掛かりで15回以上アタリがあったが、捕れたのは10匹。
最大は26.5センチ。
バタバタした宴が終わると、あれだけ賑やかだった瀬の中も無音に沈む。
時合もここまではっきりしていると、潔く竿を仕舞う諦めがつく。
朝9時前に竿を畳み、いったん帰宅。
9/18(月)
昨日の感触から、朝一から掛かることを期待して師匠のいる御神手洗(オミタラシ)で合流。
しかし、この日は生憎の驟雨。
また状況は変わるのか?
案の定、昨日入れ掛かった荒瀬の中でまったくアタリが出ない。
雨で増水しはじめると鮎の警戒心が薄れるというセオリーが通じない。
マグレアタリすら無い。
遊んでくれたのは・・・
ここまで翻弄されるのは、ある意味面白い。
どんな状況のどんなタイミングでスイッチが入るのか、まったく分からないのだ。
気まぐれな美人に遊ばれている感じ(笑)
朝から昼過ぎの2時まで、元気なオトリで、どれだけ丁寧に探っても時合らしきものは来なかった。
上流で結構降ったのか?
そのうちにどんどん増水してきて荒瀬にも竿が届かなくなった。
この日の釣果は10匹程度。
ドMの私は、懲りずに今週末もまた竿を出すに違いない。