掌上の郡上釣具     第7話 | 長良川と郡上竿の世界

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第7話 「福手作のミニチュアあまご竿」

「郡上魚籠」、「虫入れ」、「郡上タモ」が揃うと、どうしても「郡上竿」が欲しくなる。
しかし、器用貧乏を自称する私でも「竹竿」だけは、素人が手出しできないことは承知している。
そこで、ミニチュア魚籠を持参して「これに合う大きさの竿を作っていただけないか?」と福手さんに泣きついた。
すると・・・
米寿を迎えても創作意欲一杯の福手さんが前のめりになり、面白いからもっと詳しく話をきかせろと言うのだ。
私の構想を伝えて、二人で材料や構造の打合せに熱くなって語り合った。
70年近く竿作りをしてきた福手さんでも、こんなに小さい竿を作るのは初めてだという。
案の定、すぐに難関にぶつかった。
ミニチュア竿の穂持に必要な極細の竹が手持ち材料中には無いというのだ。


かと言って、今は春で竹切りの時期外れであるし、今年の秋に切ったとしても乾燥しないと使えないのだ。
だが、そんなことは私には想定内である。
この構想は数年前から温めており、実は一昨年の冬にそんな穂持ち用の細い竹を十数本ほど切って乾燥させていたのだ。
私が車からその竹を出してくると、私のバカさ加減に福手さんが呆れて笑っていた。
材料さえ揃えば、あとは福手さんにお任せするだけだった。
翌週末には試作品が完成したから見に来いと言われ、その数週間後には数本のミニチュアの郡上竿が完成していた。
出来上がった竿は見事だった。


まさに、1/4縮小版の郡上竿そのものだった。


更に繋いで振ってみて驚いたことには、福手さんは飾るためだけに作ってはいなかった。


そもそも、私は事前に「実用の竿ではないので機能は省略しても構わない」と伝えてあった。
しかし、その竿は細部まで実際の郡上竿と同じ構造に作られており、妥協した点など、どこに見つけられなかった。


 挙句には、「ミニチュアの竿は短いので、どうしても硬くなり本来の郡上竿の調子が出ないので困った」と言うのだ。
カーボン竿全盛の時代になっても、やはり福手さんは実用の竿を作りたいのだ。

中途半端なお願いをした私が恥ずかしかった。
そんな福手さんは、13年前に亡くなった私の父と同じ生まれ年である。
今回も息子のような私の無茶を聞いていただき、感謝の気持ちで一杯になった。
いつまでも元気で郡上竿を作り続けて欲しいと願うばかりである。

PS.
今回作ったミニチュア郡上竿の内の数本は、福手さんが欲しい人に販売したいとのことで、私のブログで紹介する許可を頂いた。


価格は、塗り竿8,000円〜段巻き竿10,000円ぐらい。

全長150cm前後(仕舞寸法35cm前後)

ご希望の方は、福手さん宅(0575-79-2283)へ
ミニチュアは作れる本数が少ないので、ご希望の方は早めにお願いいたします。
(売り切れの際はご容赦ください)

※ミニチュアの竿のみの価格で、当ブログ中にある魚籠やタモ・虫入れのミニチュアは売り物ではありません。