謎の古いアルバム第5話<職漁師と趣味人>
私のブログテーマ「長良川と郡上竿の世界」の主人公は「職漁師」である。
昭和初期の郡上の職漁師
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一方の、道楽として鮎釣りに興じる「趣味人」は、その対極に位置する。
それは、どちらが高尚だとか優れているとか比較して論じるような性質のものではなく、人が本能として持つ「釣りたい」というエネルギーを「生きるためにどう使うか」だけの違いだと思う。
また、目的こそ違えど、どちらも影響し合いしながら技術や道具を進化させてきたことも事実である。
今回のアルバムにより、郡上の職漁師が活躍したのと同時代の表裏とも呼べる友釣りの姿を知ることができた。
そこには、また違う世界があった。
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昭和初期の自由闊達な時代、古都京都を舞台に時代を背負う実業家が「釣り」を磁力として集った「水曜会」。
その釣りに対する情熱は、日本を動かす潤滑油とエネルギーになったのであろう。
その会の一員であった亀山素光は、このアルバムが作られた5年後に、自著「釣の話」の序文で下記のように述べている。
自序
新緑滴る碧流に、炎天下の瀬から瀬に釣竿担いで飛び歩き、秋深く紅葉散る池畔に静かに糸を垂れ、厳冬の霜柱を踏んで釣り場に急ぐ等、業務に疲れた人の心身の慰安であり又鍛錬でもある釣は、自然性に富む娯楽趣味で、心理学者の説をまつまでもなく人間の一つの本能である。
我国の様に幾多の釣するに勝れたる河川、湖沼を持ち、四面海の国民が原始時代の祖先の血を受けて現代に相応しい方法なり心境で釣をすることは、現今の煩瑣な我々の生活を幾分でものんびりと和げ、且つ保養上役立つところも多い事と思ふ。
「釣れねば興が湧かぬ」
興の湧くところに釣りの効果は生まれ、歳と共に釣りに関する研究は益々すすめられてゆく。
世間で釣程暢気(のんき)で馬鹿なものはないと子に対する親馬鹿と両大関のように思われ勝ちであるが、その馬鹿の親玉と思われる処に或いは釣りの真髄がひそみ、釣の真の目的が達せられ、釣りの秘訣が生まれるのではないだろうか。
—後略—
昭和15年5月「釣の話」弘文堂書房
煩瑣(はんさ=ごちゃごちゃ煩わしいこと)
最後にアルバムの中の人々をご覧いただきたい。
ここに写る人々はもう生きていないに違いないが、この後、太平洋戦争に突入し、平穏の中で無心に釣り糸を垂れることの意味を痛感したことは想像に難くない。
それぞれ、どんな人生を歩んだのだろうか・・・
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謎の古いアルバムの話はこれで終わり。
お付き合いいただき、ありがとうございました。