オリックス2023 投手 個人的寸評 | 長嶋茂雄の現役時代を知らない君たちへ〜 500のメッセージ〜(俺も知らない)
山下
「開幕投手も初登板もいっぺんにやっちゃったほうがいい」という中嶋聡の考えのもと、遂にベールを脱いだ怪物。
初登板が開幕戦というとんでもない状況にもかかわらず、堂々たるピッチングを披露し、まさに衝撃のデビューとなった。
3.4月、8月は月間0点台、5〜6月は月間1点台と球界屈指の成績を叩き出した。フォークの精度も徐々に良くなっていた。
楽々2桁乗ると思った矢先、腰椎分離症で長期離脱が決定。オリックス関連のニュースで今シーズン一番落ち込んだのがコレだった。
しっかり治して更なる躍動が見たい。

宮城
3年連続で規定投球回+2桁勝利をクリアし、名実共に一流プレイヤーとなった。
防御率はキャリアハイの2.27。
球審がヘボだと一番影響を受けやすい投手が宮城だったが、今年は高めのストレートの球威が増したこともあり、クソ環境でも試合を作れることが増えた。
日本シリーズ7戦目では誰よりも悔しい思いをした。でも2戦目で前日由伸が打たれた悪い流れを変えたのも宮城だった。あの7戦目を糧に更に凄い投手になって欲しい。
来季は由伸が抜けて、背負うものが大きくなる。気負わずに宮城にできることを積み重ねていけば、結果は付いてくるはずだ。

山﨑福
今年印象的だった試合は5.27西武戦で、8回無失点でエース髙橋光成に投げ勝った一戦かな。
オールスターに選ばれた時や、9.27ソフトバンク戦では8回無失点で初の2桁勝利を決めた時は、遂に福也も一人前の投手になったなぁと感慨深かった。
決してここまで順風満帆な野球生活を送ってきた投手じゃない。ルーキーイヤーから即戦力として期待されたけど、球威不足で一軍では通用しなかった。徐々に先発からロングリリーフのような役割が増え、背番号も0になったこともあった。
だけどそこから這い上がった。ストレートの球威も増し、元々良かったカーブが活きるようになった。
それを活かした相棒が伏見寅威だった。
崖っぷちだった投手福也と捕手伏見。互いが互いの良さを引き出し、2人で駆け上がり出したのが2020年。あの年のソフトバンク戦で中盤まで好投しながら、最後柳田に渾身のインコースストレートをライトスタンドに運ばれて負けたあの試合。負けはしたけど2人の成長を感じたあの試合を俺は忘れない。
21〜22と福也伏見のバッテリーは優勝に貢献した。伏見がいなくなった今年、福也は投手として更に成長した。
そして来年、北の大地で福也伏見のバッテリーが再開する。四連覇を狙うオリックスに牙を剥いてくるはずだ。なんだこの熱い展開は。
福也が抜けるのは残念だ。ただ福也がこのままオリックスに居ても、今の序列のままだと正直思う。2桁は挙げたが正直まだ首脳陣から信頼を得ているようには見えなかった。彼の成長を考えると、日ハムに行くのは正解だと思う。
日ハムで結果を出して、エースピッチャーまで駆け上がれ。オリ戦以外は応援してるぞ。

田嶋
13試合で6勝4敗3.09。長期離脱もあり、本人としては悔しいシーズンだったろう。
楽天戦は1.51で3勝と相変わらず無類の強さを見せ、ソフトバンク相手にも3勝と、今季の勝ち星は全てIT企業から奪う形となった。
CSでも2戦目を任せられるも6回4失点。ああやっぱり田嶋は大舞台に弱いか...と思っていたが、日本シリーズ5戦目では7回無失点の力投。あの試合田嶋に勝ちをつけて欲しかった、本人の自信にも繋がると思うし。
単純計算だとフルで投げれば12勝。来年は達成してほしい数字やね。

昨年の日ハム戦で挙げた初勝利の印象が良かっただけに、今年も期待していた。
7月に先発として昇格すると、そこから快進撃の6連勝。特に8月は1.02で2勝、9月は1.78で3勝。宮城と由伸に阻まれたもののどちらも月間MVPの活躍だった。
CSでも好投、初の日本シリーズ登板(しかもあの甲子園)でも物怖じすることなく初勝利を挙げた。
お試し枠だった東が、投げる試合は安心して観ていられる程の投手に成長し、本当に嬉しかった。
来年は13勝かな。なんかそのくらい期待してしまう。背番号も12に変更は球団からの期待も大きいな。この評価の上がり方は育成でやってる子らの励みにもなるだろう。

山岡
さあ、山岡泰輔はじっくり振り返る必要があるぞ笑
4月1.99、5月2.12、6月1.54。この期間10先発、1救援して、さてこの間の勝ち星は...1勝0敗?!?!
それでは今期の山岡先発試合を細かく見てみよう。
4.2西武戦、援護0点のまま6回にマキノンにソロ被弾。その後ピンチ作るも宇田川が抑える。一時追いつくもチームは敗戦。
4.18楽天戦、援護0のまま6回にピンチ作り降板、宇田川が抑える。チームは敗戦。
4.30ロッテ戦、援護1点で6回1失点で降りる。その裏2点援護が入るも、追いつかれ、延長で若月サヨナラ。
5.7西武戦、援護3点入るも6回に3点吐き出す。その後チームは敗戦。
5.19日ハム戦、援護0点、5回無失点で降板。その後チームは敗戦。
5.26西武戦、援護4点、6回1失点で今季初勝利。
6.2中日戦、援護1点、6回1失点で降板。その後チームは敗戦。
6.8巨人戦、援護0点、7回無失点で降板。その後チームは敗戦。
6.15阪神戦、援護1点、4回に2失点し、5回に満塁のピンチを招き降板。その後ノブが抑える。チームは勝利。
6.24ソフトバンク戦、援護2点、6回2失点降板、チームは敗戦。
7.2日ハム戦、援護は1点、5失点で4回途中で降板。今季初の敗戦投手になる。
7.9西武戦、援護7点もらうも、5回途中4失点し尚もピンチの場面で降板。宇田川が抑える。チームは勝利。
これ以降は中継ぎに回った。
...いかがだっただろうか。
大事な場面踏ん張れない印象はあったが、そんなことよりも無援護が酷い。本人に負けも付いてないし、本人のピンチは宇田川やノブが刈り取ってるのに、なんか最終的にチームも負けるし。
中継ぎとしても8月は1.86、9月は0.00と頑張ってくれた。
数字以上に何より評価すべきなのは山岡が「中継ぎ楽しいです」と前向きに取り組んでくれたことだ。たまに抑えもやったが、基本はロングリリーフ待機。その扱いにも腐らず、チームのために献身的に投げたその姿勢が素晴らしかった。
来季は恐らく先発に戻るだろう。去年今年不運だった分は、来年報われるから頑張れ。

曽谷
正直大学時代の映像観ると、個人的にはうーんどうなのかなと思っていた。球威にばらつきあるし、スライダー投げる時に腕が緩む印象。
今年投げてるところをみて、なるほどストレートとスライダーの質は良いから、身体が出来上がってくれば菊池雄星みたいになるのか!と納得した。でもまだ2年くらいはかかるのかなーと思った。
しかしシーズン最終戦の快投をみて、おやこれは来年からイケるのでは?!と楽しみになった。とりあえずプロ初勝利おめでとう。

ワゲスパック
昨年の日本一胴上げ投手も、今年は絶不調。
昨年のようにスピードが出ず、もともと課題である制球力を球威でカバーする投球が今年はできなかった。
今季限りで退団が決まったが、神宮のマウンドでワゲスのグローブが舞い上がったあのシーンは一生忘れない。

小木田
中継ぎ陣の中で今季一番飛躍したのが小木田だ。38試合で2.19の4勝0敗。9.20優勝決定試合のように、小木田が粘り強く投げて勝利に繋げる場面というのを今年は多く見た。ポストシーズンに入ってからは疲弊した中継ぎ陣の中で、小木田の存在は頼もしかった。
来季は先発転向とも言われているが、個人的にはセットアッパーとして活躍して欲しい。

阿部
今年の阿部はいい時と悪い時がはっきりしていた。フォークのキレが悪い時はかなり苦しんだ印象だ。49試合で2.70の3勝5敗。昨年はリリーバー(40試合以上)としてはパリーグ歴代1位の防御率0.61を叩き出しただけに、それと比べると物足りないが、それでも充分結果を残したと言える数字だ。
来年は兄貴分近藤の20番を継承する。

宇田川
中嶋聡に喝を入れられて始まった宇田川の2023年。WBCでも好投し、昨年の夏まで3桁だった男は一気に階段を駆け上がった。
開幕直後はピンチの場面でマウンドに放り込まれることが多かった。その中でしっかり仕事をしていたものの、春先からこんなに心身に負担かける起用続けて大丈夫か?中嶋監督らしくないなぁ、イニング頭から行かせてあげて。と心配してたら、やはり疲労がたまり離脱した。7月くらいからはちゃんと回頭から投げる試合も増えたイメージ。そのへんからは、去年後半の快投が戻ってきたように感じだな。終わってみれば46試合で1.77という素晴らしい成績。来季は背番号14。個人的には平野の後のクローザーは彼に担って欲しいと思っている。

山﨑颯
WBCで追加招集で選ばれ、1試合も投げれなかったことが悔しいと語った颯一郎。ああいう試合で投げたいと思えるメンタルの強さ、侍に選ばれるべくして選ばれたのだなと思ったね。さて彼も帰国後少し球威に苦しんだイメージがあったが、春先からしっかり成績を残した。怪我した9月以外の、3〜8月までの成績が素晴らしい。特に6月9試合、8月10試合に登板しながら、どちらも月間0.00というパーフェクトっぷり。その頑張りが認められて9.20優勝決定試合では胴上げ投手に指名された。トータルでは53試合で2.08。来季から背番号21。

平野
昨年、38歳の平野は防御率としてはキャリアハイ1.57を叩き出した。2010年、26歳の時の1.67を上回ったのだ。
さあ、今年も去年程とはいかないまでも、平野らしくやってくれるだろうと思っていたが、ハイ最終成績はこちら、
42試合1.13 29セーブ。
は???
39歳で防御率キャリアハイじゃねえか、なんだこのおっさん笑
走者無し被打率.316、走者有り被打率.164は名人芸。俺のイメージだと日ハム戦はギリギリのピンチ作って0で抑える場面めっちゃ見た気がする。その結果日ハム戦防御率0.00笑
CS4戦目では、実は初めてとなる胴上げ投手として登板するも、いきなりポランコに被弾し1点差に。2秒程悔しがるも、その後グラブをポンとまるで打ち取ったかの様な余裕な表情に切り替え、その後しっかり抑えてくれた。日本シリーズ3戦目では阪神ファンの大歓声がこだまする中、絶対絶滅の場面をしっかり抑えた。
平野佳寿、今も尚全盛期。来季はシーズン、日本シリーズでも胴上げ投手になってほしい。

山本
「オリックスのファームに防御率0.30の高卒ルーキーいるぞ」って話題になったのが2017年の夏頃。当時は今以上にドラフト関係に疎く、ドラ4の高卒投手のことは全然知らなかっただけに、そんな凄いヤツがいるんかと驚いた。
そしてその直後、京セラのロッテ戦でプロ初登板を果たし、そこから始まった山本由伸伝説。
2年目は魔球カットボールを武器にセットアッパーとして大ブレイク。
3年目は先発に転向し最優秀防御率を獲得。
4年目は背番号もエースナンバー18になり、最多奪三振を獲得した。
ただ3〜4年目は、チーム状態が最悪で、無援護が続き、3年目は8勝6敗、4年目は8勝4敗と、タイトルホルダーとしては見栄えの悪い数字に終わった。
余談だが4年目の2020年、俺は、由伸の登板試合だけは見ないようにしていた。普通のチームだったら確実に勝てる投手が、見殺しにされる瞬間を見る事ほど精神衛生上悪い行為はないからだ。そのくらいこの頃のオリックスの迷走に俺は心のバランスを乱していたのだ。
そして5年目2021年、開幕では味方の度重なるエラーでまたしても由伸は負けた。
あー、今年もコレが繰り返されるのか...。
そう思っていたが、この年チームがとんでもないスピードで急成長し、由伸自身も本物の大エースに成長。終わってみればチームは優勝、由伸に18の勝ちが付いていた。
2021〜2023年の3年間、最優秀防御率、最多勝、最多奪三振、最高勝率、ベストナイン、ゴールデングラブ、最優秀バッテリー、シーズンMVP、沢村賞...先発投手が獲得できるタイトル全てを山本由伸は独占し続けた。
今年は1956年の稲尾に次ぐ、歴代パリーグシーズン防御率2位の1.21を記録。9.9ロッテ戦では、2年連続となるノーヒットノーランも達成した。
もう日本でやれること全てやった。あとは日本一を掴むだけだった。
しかしCSファイナル初戦、日本シリーズ初戦これまで見た事が無い程炎上した。
これまで幾度と無くピンチを切り抜けた、魔球カーブの変化が悪く、ストレートもビタっと来ない。
「由伸ってたいしたことなくね?」とか「由伸って大事な試合弱くね?」そんな他球団ファンの意見を何個も目にした。
確かに日本シリーズでは勝ちが付いてない。
ただシーズン中の肝になる試合や、去年一昨年のCSファイナル初戦、由伸は絶対に勝ってくれた。
俺たちの絶対エースを舐めるな!由伸頼む、このシリーズ中にリベンジしてくれ!
そしてその時はやってきた。阪神に王手を掛けられて迎えた第6戦。
序盤は決して良く無かった。ただイニングを追うごとに本来の由伸の姿に近づいていった。9回表、渡邉から奪った三振は日本シリーズ新記録となる14個目だった。
そして最後のバッターをセカンドゴロに打ち取り、山本由伸は京セラのマウンドにしゃがみ込み疲れきった笑顔で右手を天高くかざした。ありがとう山本由伸。君は令和初期のプロ野球でただひとり、圧倒的で本物のエースだった。野望抱き海を超え新たな伝説をアメリカで刻んでくれ。