精神科医は精神疾患の患者さんを助けるのが仕事です。精神疾患といっても精神というのは脳の働きですから、脳に起こる病気をみているわけです。心理士も心の働きをみているわけですが、結局は脳の働きをみています。
精神科医は医学的に患者さんの状態を様々な角度からみています。精神症状が脳外科的な病気や神経内科的な病気、あるいは内科的な病気からきている場合もありますから、医学全般の角度からみる必要があります。もちろん患者さんとは主に言葉を通して症状や病態を把握する必要があり、患者さんの気持ち、心情を察しながら上手にコミュニケーションをとる必要があります。
心理士は医師とは違う視点で治療に関わります。医師ではないので医学的な判断はできません。カウンセリングや認知行動療法などで患者さんとやりとりしていきます。
私が精神科医になった頃は、心理士は今ほど多くなかったと思いますが、もっと深みがあったのではいでしょうか。精神科医とは違った物の見方をして患者さんとのやりとりにも専門性が感じられました。
ところが、今はどうでしょうか。日々思うのは心理士が心を見なくなったということです。私が患者さんを治療する上で心理士さんはとても重要と考えています。これまでの精神科医としての仕事をしていく上で心理士さんにたくさんのことをしてもらいました。
患者さんの病態を見きわめることは非常に大切で、薬物療法が必須である病気であれば薬物療法を主軸に行います。症例によっては補助的に心理士がカウンセリングなどを行います。
しかし、家族や対人関係などの心理的要因によるもので、薬物療法で治療するような病態でなければ、心理士のカウンセリングなどを中心に治療を行います。医師が限られた時間でできることは限られるので、心理士が時間をかけて患者さんによりそっていくことで良い方向に向かう場合もあります。
さて、とても当たり前なのに今の日本の精神科で軽視されてしまっていることは、薬物療法で治療できる病気を正しく治療する、ということです。
きちんと病態を見極めて、ごく当たり前のルールを守り、当たり前の鑑別診断をして、薬物療法のガイドラインやルールを守っていけば多くの患者さんが改善します。きちんと薬物療法を続けていけばもとの力まで回復しないとしても穏やかな生活を送ることができるようになります。
ここの部分は医師の仕事です。膨大な医学の知識が必要となりますし、多くの臨床経験を積む必要があります。
ところが今多くの心理士がやっていることはなんでしょうか。
口を開けば発達障害、発達障害です。しかもきちんと幼少時に診断を受けて療育を受けてきたような人ではなく、幼少時に療育の必要は全くなく、普通に育ってきたのが明らかな人に対して実は発達障害だった、見逃されていた、です。
発達障害とは発達早期に起こる障害です。成長してから徐々に発症するものではありません。大きくなってからどんどん重くなったり、それまで出来ていたことがどんどん出来なくなっていく障害ではありません。
それは精神疾患です。もしくは他の脳外科や神経内科などの病気の可能性だってあります。
そんな医学知識も全くないのに、心理士がやってくる患者さんに対してやみくもに知能検査とADHDと自閉症のテストをやっています。
あるいは、すでに通院しているような患者さんにまで、主治医は発達障害を理解していないのかもしれない、などと不安を煽るようなことを言って、無意味な知能検査とADHDと自閉症のテストを受けろと間違ったアドバイスをします。
小さい時に障害児でなかったのなら、発達障害ではありません。多くの心理士が発達障害という言葉の意味すらわかっていません。
小さい時に正常だった人に知能検査とADHDと自閉症のテストをしたら発達障害の診断ができる、とかこんなめちゃくちゃなことは世界標準の診断基準に書かれていません。
全く医学的でも論理的でもありません。そもそも道徳的でもありません。患者さんや家族の心を全く想像できていません。
普通に中学校や高校を卒業したのに、大学生だったのに、普通の企業に就職していたのに、結婚もしていたのに、子供の頃は成績も悪くなかったのに、心理士に知能検査をされて生まれつきの精神遅滞と言われた、と傷ついている患者さんや家族がたくさんいます。
子供の頃は普通の子供で障害児でもなんでもなかったのに、おとなしい子供だったのに、心理士にADHDのテストをされて、点数が高い、知能検査でワーキングメモリーが低い、あなたは実はADHDだと言われるのです。
全く倫理的ではありません。これが多くの心理士がやっていることです。そして、自分達は精神科医が見逃した発達障害をみつけているのだと威張っています。
障がい者を精神遅滞だと見下して、育ててきた家族を見下して、真面目に勉強してルールを守って患者さんのために努力している精神科医を見下して、それで自分達は医者より偉いと鼻高々です。
親の離婚や再婚、親の病気、家族の病気、経済的な問題、学校の先生の問題、普通に聞けば理解できるような状況で、心が折れてしまったのだろうと思えるような状況の人をみても、心の声を聴くことよりも、記憶力が低下している、集中力が低下している、注意力が低下している、人とのコミュニケーションがうまくいかない、理解力が低下している、もしかするとADHDや自閉症や知的障害が今まで気づかれずに存在していて、それが環境への適応が限界にきたのかもしれないと言って、知能検査とADHDと自閉症のテストをしているのです。
そして、その結果は生まれつきの数値を示しているのだと本人や家族に説明するのです。
信じられますか?ほとんどの心理士がこんなことをやっているのです。患者さんの心の状態よりも知能検査のことばかり考えているのです。ほとんどの心理士の頭の中には知能検査の4つの項目がばらついて有意差があれば実は発達障害という意味不明なエビデンスがあるようです。(もちろんそんなエビデンスはありませんし、専門知識があって発達障害を理解している精神科医であればそんな馬鹿なことはしません)
入院している患者さんにもこんなテストをしている心理士もたくさんいます。精神科病院に入院になるということは人生においてよほどのことです。
もしも、あなたやあなたの家族が精神的に不調をきたして精神科病院に入院、あるいは強制入院になったような状況で、知能検査を受けますか?家族に知能検査を受けさせますか?精神科病院に入院するような状況ですよ。
いくら向精神薬で症状がある程度改善した後であっても、入院しているような状況です。精神疾患の状態です。精神科に入院する必要のなかったもとの状態よりかなり認知の力が落ちていているのは誰でも想像できると思います。精神科にかかることなんて考えていなかった時期と比べると、悪化していることは素人でもわかるはずです。
しかし、心理士達はこんな患者さんにまで知能検査をしているのです。それを認めた精神科医も同じくくらいひどいですが、こんな患者さんによく知能検査を受けさせたなとこういう検査結果を見るたびに心が痛みます。検査をしている数十分の間、なんとも思わなかったのでしょうか。明らかにその人がもともと出来ていたであろうレベルより出来ないのに。
論理的な思考ができて、道徳心のある人であれば、自分で調べて勉強をして、精神障害ではどれくらい知能指数が低下するか知っているはずです。数10ポイントは低下していて当然です。
偏差値が高い学校に行っていた人でも、境界知能くらいの値がでることも普通です。精神状態がよくなければ思考や動作が遅くなってテストを解くスピードが落ちます。それだけでも結果は悪くなります。
もしもあなたやあなたの家族が高校や大学を卒業しているのに知能指数が70台でした。実は境界知能だったのです、と言われたら怒りませんか?そんなことを信じますか?本当の精神遅滞の子供を育てている親がこんなこと聞いたらどんな気持ちになると思いますか?
もともと普通に学校に行っていた人、働いていた人、生活歴や病歴をみれば障がい者でなかったのは明らかな人の精神、つまり脳の働きが弱っているところに脳の機能をみる検査を受けさせるのです。よくこんなことが出来ますよね。
もとのようにうまく頭が働かないのに頑張っている患者さんの気持ち、心はみてないのでしょうか?自分が反対の立場だったらどう思うか考えないのでしょうか?
例えて言うならば、手足に怪我や骨折した人に筋力テストを行って、生まれつき筋力が弱かったのです、と言っているようなものです。
真面目に勉強している精神科医、真剣に患者さんを治療している精神科医、患者さんや家族の気持ちを想像できる精神科医であれば、こんな残酷なことできません。臨床的に全く意味がなく、治療に全く役にたちません。知能検査が患者さんの予後を良くすることもありません。むしろ間違った治療に結び付き予後が悪くなります。長期的な結果に責任もてません。
もともと、記憶力に問題がなく、普通に学校に行っていたのに、普通に仕事に行っていたのに、物覚えが悪くなり、頭がうまく働かなくなり、生活がうまくいかなくなって悩んで精神科にくるのです。
その悩んでいる心、精神疾患の症状に苦しんでいる心に寄り添っていくことが仕事なのに、知能検査をして、あなたがうまくいかないのは実は生まれつきだったのです、生まれつきの特性なのです、実は精神遅滞だったのです、治しようがありません、上手につきあっていきましょう、です。
精神障害の人も、知的障害の人をも見下しています。
小学生の子供が、支援学級の子供を馬鹿にするのとかわりません。社会人が、しかも専門職を名乗って一般の人がよく知らないテストを使っている分、もっとたちが悪いです。
相手の気持ちや心を考えないのは自閉症、今まで気づかれなかったのは自閉症の程度が軽かったから、よくそんな出鱈目が言えたものです。自閉症のことを何もわかっていません。
自分達こそ人の気持ちを全く考えていないのではないでしょうか。自閉症の子供はそんな心理士よりももっと純粋で悪意はありません。人を馬鹿にしたり見下したりしません。こんな心理士のように人を見下したり人を馬鹿にして優越感に浸るなんてできません。そういうことに関心もないし、出来ません。そういう障害です。
自分の子供が2歳や3歳で自閉症とわかって心に傷つき、苦労して育てている家族がどれだけ傷つけられているか全く想像できないようです。
子供の時には障害児でもなんでもなかったわが子が、様子がおかしくなり、学校や仕事にも行けなくなったとたんに知能検査を受けさせられて、実は精神遅滞でした、自閉症でした、ADHDでした、あなたが気付かなかっただけだ、と言われてどんなに傷ついているか想像できないのです。
その後、どんどん精神疾患は進行して大変な想いをした後にようやくまともな精神科医にたどりつき、知能検査は全く必要なかったこと、知能検査の結果について間違った説明を受けて何年もの間違った治療を受けてきたことを説明されて、また傷つきます。説明するこちらのほうも心が痛みます。
心をみるのが専門のはずの人達が人の気持ちを考えず、無意味で医学的に全く必要のない知能検査で患者さんや家族の心を傷つける。真面目に勉強して患者さんのために真摯に向き合っている精神科医の心を傷つける。本当の精神遅滞や自閉症、ADHDの子供を苦労して育てている家族の心を傷つける。世間やネットで発達障害という言葉が嫌な人や迷惑な人のレッテルとして使われているのをみてたくさんの人の心を傷つける。統合失調症や双極性障害などできちんと治療を受けている人や家族も、自分の病気のことを否定されているようで傷つけられて肩身の狭い想いをしている。
医学的な知識はないのに、診断方法すら知らないのに、医学的なエビデンスは何も知らないのに、治療の方法も知らない、治療の選択肢によって予後がどうなるか、薬物療法を適切に行えばどれくらい改善するかも予想できない、何もわからないのに、精神科医がわかってないのだと一方的な嘘とデマを流して患者さんを正しい治療を受けさせないほうに導いて、たくさんの人の心を傷つけて喜んでいる。
トラウマをみるはずの人達がたくさんの人にトラウマを作っています。こんなことがしたくて心理士という職業を選んだのでしょうか?こんなことを毎日やっていてなんのやりがいを感じているのかさっぱり理解できません。
こんなことは一切しなくてよいので、本当に患者さんや家族、まわりの人の心をみてほしいです。