ムゲンの元総長・琥珀と、そのライバルである雨宮兄弟の次男・雅貴が合流し、巨大組織・九龍グループを倒す方法がついに判明したその翌日、マジ女校舎には敵の魔の手から学園を守るべく、大勢の不良生徒やギャング達が集まっていた。その先頭に立つのはさくらとゼロ、生徒会長のシャドウ、矢場久根総長・シュラ、嵐ヶ丘学園・花組のリリィーに荒地工業のネロ、さらにWhiteRascalsのリーダー・ROCKY、鳳仙学園の番長・上田佐智雄、そして仲間達の説得により、亡きタイヨウの思いを背負って立ち上がったラッパッパ部長・ツクヨミである。己の矜持を貫き、信念を守る為に、街の境界を越えて団結した彼らの前に、1つの大群が現れようとしていた。
ネロ「・・・おいでなすったみたいだな」
グラウンドからの入り口から侵入してきたのは、九龍と政府のカジノ計画に賛同する組織・クライシス財閥が雇ったクリーナーのバイオ、ラブ、グンソウ、シンゲキ、そして笑い声や呻き声を発しながら捻くれた動きを見せる囚人の群れだった。
リリィー「クライシス財閥のクリーナー・・・!」
バイオ「あれ・・・?マジ女に矢場久根、Rascalsだけじゃなく、嵐ヶ丘に荒地の人間、鳳仙の軍団まで集まってるんだ」
グンソウ「ハッ!わざわざ揃ってアタシらに潰されに来てくれたの?」
ラブ「ウフフ、今日はいっぱい楽しめそう・・・」
シンゲキ「今日こそこの学園・・・SWORDと一緒に消えてもらうよ」
ゼロ「・・・?あいつら、武器を持ってる?」
シャドウ「今までの奴らは本気ではなかったということか」
ROCKY「後ろに集まってるのは、羅千のプリズンギャングか・・・」
シュラ「しかもあのイカレっぷり・・・かなりの量を投薬してるみたいだね」
佐智雄「関係ねえよ。1回ぶっ殺して現実見せてやりゃいいだけだ」
強い殺気を放つクリーナーと囚人の群れに、早くも対抗心を燃やしている仲間達。そんな中、ツクヨミは身に着けていたタイヨウのスカーフを握りしめ、呼吸を整えながら覚悟を決めようとしていた。
さくら「・・・菜緒」
ツクヨミ「・・・この学園では、多くの生徒達が熱い思いを胸に生きてきた。でもその人達の思いは、大きな魔の手によって突然踏みにじられた・・・この学園に遺された意志を、皆のマジを守る為に・・・今日、ここで・・・!全部終わらせるっ!!」
ツクヨミの宣言と共に、一行は雄たけびを上げながら駆けて行く。クリーナー・囚人軍団もグンソウの指示でプリズンギャングが突進し、ついに最後の一戦が幕を開けた。
リリィー「私の前に・・・!」
ネロ「立つんじゃねえっ!!」
嵐ヶ丘のリリィーと荒地のネロは、2人を囲む囚人達を前と後ろに交代しながら殴り、蹴り倒していく。かつては対立していた両者だったが、拳を交えて和解した今だからこそ、何のわだかまりも無く背中を預けて戦えるようになっていた。
ROCKY「Last Party・・・!」
ROCKYはステッキを用いた華麗な戦術で囚人の群れを蹴散らし、時にはステッキで捕まえた相手をNo.2のKOOら仲間達に止めを刺させる。KIZZYとKAITOを中心とした一団も、怒涛の勢いで敵軍を突破していく。
仁川・志田「行くぞオラァァァァッ!」
小田島「クスリ、ダメ、ゼッタイ!!」
鳳仙は小田島、仁川、志田の活躍に鼓舞されながら、スキンヘッドの生徒達が一枚岩な団結力で周りの敵を一掃する。佐智雄も血痕が染みついたままの学ランを羽織り、傷が完治していない沢村の意志を背負いながら群がる敵を次々と返り討ちにしていった。
ハンター「ラッパッパ!私らが手を貸してやってんだ、足引っ張るんじゃないよ!」
ウサギ「う、うん・・・っ!」
スパイク「『うん・・・』ってそれだけかいな!?他にうちらに対してかける言葉ないんかい!?」
シンガー「アンタこそ、しゃべってないで手を動かしなよ!」
リッスン「騒がしい奴らやな~。まあ、こんだけうるさい方が気持ちも昂ってくるわ!」
プリンセス「こっちこそ、今まで敵対してた連中がこんなに頼もしく思えるなんてね・・・!」
ウサギら四天王3人とハンターら矢場久根の精鋭も、言葉を交わしながら悉く囚人達を倒し、ツル達2年組もそれに続くかのように群れを押し出していく。だがここに来て、囚人を従えていたクリーナー達が動き出した。
グンソウ「そらぁぁぁっ!」
グンソウは触れた相手に電気ショックを流す警棒を振り回し、Rascalsや鳳仙の部下達を攻撃する。容赦ない攻撃で仲間達が倒れていく中、彼女の暴行を殴って阻止したのがシャドウであった。
グンソウ「っ!?マジ女の生徒会長・・・アンタの首を獲れば、マスターもいっぱい労ってくれるわよね?」
シャドウ「やってみるか?お前如きに獲れればの話だがな・・・!」
グンソウ「・・・生意気言ってんじゃねえよ、クソガキがぁ!」
グンソウとの一騎打ちに望むシャドウ、その裏でラブは片手に巻いた鎖を使って鳳仙の生徒達を一蹴していた。鎖の攻撃に怯み、鳳仙側が手を出せずにいると、そこにシュラがスライディングを仕掛けてラブの動作を止めた。
ラブ「おっと!危ない危ない・・・」
シュラ「面白い遊びしてるね。アタシも混ぜてよ」
ラブ「ウフフ・・・貴女も私が、愛してあげる」
シュラ「愛・・・?そんな捻くれた愛なんかいらないね!」
シュラは不敵に笑いながらラブに突っ込んでいく。その一方、ゼロはトンファーを用いた武術を仕掛けるシンゲキと激しい攻防を繰り広げていた。
シンゲキ「へえ・・・貴女、やっぱりただのルーキーじゃないね」
ゼロ「他人の命を平気で奪うような奴に、褒められても嬉しくないよ」
シンゲキ「そう?これでも驚いてる方だよ、私達と互角に渡り合える不良がいるなんて・・・!」
ゼロ「だったらもっと驚かしてやる・・・アンタを倒してね!」
ゼロとシンゲキ、2人の対決は尚も続く。そんな中、両手にかぎ爪を装備したバイオは、1人で多くの囚人を片づけたツクヨミに狙いを定めていた。
バイオ「ラッパッパ部長、今度こそ死んでもらうよ・・・!」
ツクヨミ「・・・!?」
さくら「菜緒っ!」
しかしそこにさくらが乱入し、バイオの攻撃からツクヨミを守りながら反撃する。ツクヨミも加勢しようとするが、さくらは手を伸ばして彼女を制止した。
さくら「菜緒は下がってて」
ツクヨミ「さくら、でも・・・!」
さくら「私もタイヨウさんと約束したから。タイヨウさんの分まで、菜緒を守るって・・・!」
ツクヨミ「・・・さくら」
バイオ「美しい友情愛ってやつかしら・・・?全く、そんなものを見せつけられると反吐が出るわ」
さくら「貴方達には、何も奪わせません・・・菜緒の命も、私達の居場所も!」
ツクヨミを守る為に、さくらは単身でバイオに挑む。マジ女の存亡を賭けた戦いの行方は、そして彼女達の運命は――?
一方、無名街――ここでもSWORDの運命を左右する大きな戦いが始まろうとしていた。街の入り口には、定時の番長・村山を筆頭に、全日制の楓士雄、司、轟、辻、芝マンらを加えた鬼邪高校、そして山王連合会のコブラとヤマトが陣取っていた。
司「・・・来たぞ、九龍だ」
司の言葉に全員が反応すると、前方に九龍が仕向けた大勢の刺客が見えてきた。善信会と源会の構成員達である。
轟「流石、九つの龍・・・数だけは多いな」
辻「九龍の下っ端なんざ、いくら集まっても怖かねえよ!」
芝マン「フッ・・・だな」
村山「皆、九龍ちゃん絶対ここ通すなよ?全員蹴散らせぇぇぇっ!」
楓士雄「・・・行くぞ、テメエらぁぁぁぁっ!!」
村山の号令で、楓士雄を先頭とした鬼邪高の生徒達、その後に続くコブラとヤマトが一斉に駆け出す。ドスや鉄パイプを持った刺客達も突撃し、鬼邪高・山王連合と九龍の戦いが勃発する。
ヤマト「オラ、退けえぇぇぇっ!!」
ヤマトは驚異的なパワーで、襲い掛かる数人の刺客を次々と一蹴。そこに司と轟も加わって1人1人を確実に倒し、辻と芝マンは敵の足を掴んで持ち上げ、そのまま地面に叩きつけることで数人を巻き込んで圧倒する。
村山「挑戦者募集中~!by 鬼邪高のキング」
村山は自身に攻めかかる九龍の構成員を頭突きや連続パンチで返り討ち、楓士雄とコブラもスピーディな戦法で敵を翻弄する。だがその時、別方向から大きな衝撃音が響いた。
楓士雄「うおっ!何だ、今の音・・・!?」
司「何か走っている・・・まさか、重機を使って無理やり侵入してるのか!?」
村山「もう~、それズルくない!?」
鬼邪高・山王連合が戦っている場所とは別の方向から、家村会の構成員が操縦する重機が柵を壊し、街へ侵入しようとしていた。しかし、コブラとヤマトはほんの少し落ち着いた様子を見せていた。
ヤマト「けど、あっちには・・・!」
コブラ「ああ・・・ここで喧嘩してんのは、俺達だけじゃねえ」
やがて壊れた柵から家村会の構成員が街に踏み入れる。ところが、そこに突然殴り掛かってくる一団が現れた。ノボル、ダン、テッツ、チハルら残りの山王メンバーと、元ムゲンの九十九、そして雨宮兄弟である。
雅貴「テメエら、堂々とこんな汚い真似しやがって!」
広斗「潰してやるよ・・・!」
ゼロレンジコンバットを習得している雨宮兄弟は、素早い動きで拳や蹴りを繰り出し、凶器を用いる構成員達を悉く倒していく。九十九も山王メンバーと共に応戦し、1人の腕をへし折って敵の群れを威嚇した。
九十九「RUDEの奴らは、上手くやってんだろうな・・・!?」
鬼邪高、山王と九十九、雨宮兄弟が九龍の刺客を喰い止めている一方、タケシを中心としたRUDEBOYSは過去に起きた公害を暴く為の証拠になる研究資料を手に入れる為、無名街の地下を走っていた。
タケシ「・・・!?九龍・・・!」
ユウ「もうこんなとこまで入り込んでんのかよ!?」
ピー「ここは俺とユウが引き受ける、タケシ達は先に行け!」
タケシ「分かった!」
ユウ「鬼さん、こちらぁ~~っ!!」
タケシ達を先に行かせ、ピーとユウは侵入した家村会の構成員を誘き寄せる。そしてアクロバティックな動きで駆け回りつつ、構成員を確実に仕留めていく。
ピー「全員ぶっ倒す・・・!!」
最初に起きた火事でも、何人もの家族が命を落とした・・・ピーとユウはそれに対する怒りを燃やし、果敢に九龍の構成員へと立ち向かっていく――!
所変わって、再びマジ女校舎――Rascals、鳳仙、矢場久根、リリィーとネロを味方に加えたマジ女一行が羅千のプリズンギャングを相手に善戦する中、シャドウもグンソウの攻撃に怯むことなく立ち向かっていた。
グンソウ「この・・・っ、調子に乗んじゃないわよ!」
自身を追い詰めるシャドウに苛立ちを見せるグンソウは、ただひたすらに警棒を振り回す。シャドウはそれを冷静にかわしながら反撃するが、彼女が警棒を掴むとグンソウはニヤリと笑んでスイッチを押し、電気ショックを流した。
グンソウ「アハハハッ、バ~カ!自分からそいつに触ろうとしてどうすんのさ!?」
シャドウ「・・・だから何だ?」
グンソウ「・・・えっ?」
シャドウは電気ショックをものともせず、掴んでいた警棒をそのまま地面に叩き落としグンソウを殴り飛ばす。そして落ちた警棒を強く踏みつけ、あっという間に破損させた。
シャドウ「こんなもんで崩れ落ちる程、俺達は脆くねえんだよ・・・!!」
グンソウ「・・・ッ、ウアアアアッ!!」
怒りが頂点に達したグンソウは叫びながら襲い掛かるが、シャドウは赤いスカーフを結んだ腕に力を込め、彼女の腹に強烈な一撃を叩き込んだ。そのダメージの重さに耐えられず、グンソウはシャドウの前に倒れる。
ラブ「ウフフ・・・!」
一方、シュラの猛攻を受けながらも平然としているラブは、鎖を操ってシュラに反撃の機会を与えようとせず、さらに鎖を放り投げてシュラの首を捕まえてしまう。
シュラ「ぐ・・・っ!」
ラブ「捕まえた!さあ、このまま絞めて私だけのものにしてあげる・・・」
ラブは鎖を引っ張り、シュラの首を絞めて彼女を殺そうとする。しかし、シュラは足を強く踏ん張って耐え、さらに首を勢いよく下に降ろし、鎖ごとラブを引っ張って転ばせた。
ラブ「うわぁ・・・っ!?」
シュラ「ハ、ハハハ・・・ッ、今のは面白かったよ・・・マジで死にかけた」
ラブ「・・・!?えっ、ちょっと・・・!」
シュラ「お返し・・・だっ!!」
今度はシュラが落ちていた鎖を握ってラブを引きずり出す。さらに鎖を巻いた拳を振り下ろして頭に炸裂させ、シュラはラブを地に伏せた。
シンゲキ「グンソウ、ラブ・・・!?」
ゼロ「余所見してんじゃねえよ・・・!」
シンゲキがグンソウ、ラブの敗北に気を取られた隙に、ゼロは連続攻撃を仕掛けてシンゲキにダメージを与えていく。しかしシンゲキもタダでは屈さず、すぐにゼロに視線を戻しトンファーを駆使して彼女を圧倒する。
ゼロ「くぅ・・・っ!」
シンゲキ「いい加減くたばりなよ・・・!」
さらに追撃を図るシンゲキだが、ゼロは体勢を立て直しシンゲキのトンファーをガードする。シンゲキはゼロの目が、未だに鋭い光を発していることに気づく。
シンゲキ「何なんだよ、貴女は・・・ここまでやってんのに、何で立ってられるんだよ・・・!?」
ゼロ「何でかって?それは・・・アンタ達が気に入らない、ただそれだけだよ!!」
ゼロはシンゲキに頭突きをお見舞いし、彼女が怯んでいる隙に体を捻った勢いで拳を繰り出し、さらに逆回転からの回し蹴りを顔面にぶつけ、シンゲキを撃破した。
バイオ「ハアァァァッ!」
さくら「くっ・・・!」
同じ頃、さくらはかぎ爪攻撃と蹴り技を交互に繰り出すバイオに苦戦を強いられていた。高い身体能力を惜しみなく発揮するバイオは、さくらの右腕にかぎ爪で切り傷を与えた。
さくら「痛・・・っ」
痛みを感じたさくらはバイオに腹を蹴られ、そのままバイオにかぎ爪で刺されそうになったが、すかさず両手で捕まえて動きを止める。するとバイオは、止められていた片手を引っ張ってさくらを起き上がらせ、もう片方のかぎ爪でさくらの腹を狙う。しかし、さくらも咄嗟に放していた右手でこれを受け止めた。
バイオ「!また防がれた・・・!?」
さくら「うああああっ!」
さくらはバイオの両手を掴んだまま放り投げ、自身から遠ざける。すぐに立ち上がったバイオはさくらと同時に突進し、かぎ爪を繰り出す、ところが、さくらは左手を刺されながらも片方のかぎ爪を捕まえたのである。
バイオ「そんな!?自分から、左手を餌に・・・!」
さくら「こんな痛み・・・っ、菜緒が・・・大切な人を二度も失った悲しみに、比べたらっ!!」
バイオの動きを封じたさくらは、連続でバイオの顔面を殴り付ける。そして最後の一撃に力を込め、バイオを強く殴り飛ばした。
さくら「はぁ、はぁ・・・っ」
さくらは傷跡がついた右腕の袖を引きちぎると、同じくかぎ爪の跡が残る左手の血を拭った。だが勝利を確信していたのも束の間、倒れたと思われていたバイオは再び起き上がり、油断していたさくらに襲い掛かった。
さくら「・・・っ!?」
バイオ「油断大敵・・・!」
その時、咄嗟に誰かがさくらを庇い、腹にバイオのかぎ爪をくらってしまう。さくらをバイオの不意打ちから守ったのは、彼女が守ろうとしていたツクヨミだった。
さくら「な、菜緒・・・!?」
ツクヨミ「うぅ・・・っ!」
腹を刺されたツクヨミは、その痛みを堪えつつバイオを殴り倒す。しかし、ツクヨミもガクッと膝を落とし、さくらやウサギ達が彼女の下に駆け寄る。
ウサギ「ツクヨミっ!?」
さくら「菜緒!どうして・・・」
ツクヨミ「はぁ、はぁ・・・大切な友達を、二度も・・・失いたく、なかったから・・・ぐっ!」
プリンセス「馬鹿!貴女はラッパッパ部長、マジ女を束ねるリーダーなのよ!?」
シンガー「そうだよ!私らは、アンタを守る為にも喧嘩してたっていうのに・・・」
ツクヨミ「う、くぅ・・・大丈夫・・・っ、これくらいの、痛み・・・皆を守れない、苦しみに比べたら・・・」
さくら「菜緒・・・っ」
ツクヨミ「・・・タイヨウも、こうやって・・・命を賭して、私を守ってくれた・・・私だって・・・最後くらい・・・皆を、守りたいの・・・」
義姉の復讐の為に集めた仲間達を、せめて最後は守り抜きたい・・・そんな思いを抱くツクヨミはさくらに抱えられながらも、ウサギ、シンガー、プリンセスらに笑みを見せる。
ツクヨミ「・・・心配、しないで・・・私は死なない・・・最後に、やるべきことをやるまでは・・・まだ・・・死ねない、から・・・っ」
さくら「え・・・?」
ツクヨミの言葉に、ほんの少しの違和感を感じるさくら。それを余所に、薬を投与した羅千の囚人達は一行の結束力の前に敗れたが、佐智雄やROCKYはあまり喜びの表情を見せていなかった。
佐智雄「チッ・・・どうにもスカッとしねえな」
ROCKY「気づいたか・・・まるで手応えが感じられねえ」
ゼロ「クリーナーは倒せたけど、タイヨウを殺したあいつがいない」
シャドウ「無名街に派遣されたのか?だが、九龍はMIGHTYも傭兵として雇っている筈・・・」
財閥の最高傑作と称されるキバがいないことに、マジ女と無名街を同時に潰すなら戦力が均等ではないと考えるシャドウ。すると、そこへミュゼが血相を変えて走ってきた。
ミュゼ「シャドウ、皆!」
シャドウ「ミュゼ・・・何かあったのか?」
ミュゼ「政府がカジノ建設計画を進める為に、今から無名街の爆破セレモニーを全国と中継を繋いで開催すると発表したわ・・・!!」
カジノ計画の為にただもう一度無名街を爆破するわけでなく、それを全国と中継しつつ行うという政府の発表に、一行は揃って驚愕した。
ツル「無名街の、爆破セレモニーって・・・!?」
シュラ「うわ~、滅茶苦茶大雑把な策に乗り出たね」
ウサギ「でも、あそこには他のSWORDの皆に九龍の人達もまだいるはずなのに・・・」
シャドウ「大量虐殺・・・そんな愚行を見せ物として晒すつもりか・・・っ!」
リリィー「セレモニー会場はどこなんですか・・・!?」
ミュゼ「SWORD地区の中枢・・・ここにある施設で、推進派の大臣がセレモニーの会見を開くつもりよ」
佐智雄「こんな所でじっとしてても仕方ねえ・・・向こうの奴らに連絡しながら、こっちも会場に急ぐぞ」
ツクヨミ「・・・待って」
佐智雄の提案に一同が賛同し、爆破セレモニーの会場に急ごうとしたその時、傷が癒えずさくらに抱えられたまま足を進めるツクヨミが皆を呼び止めた。
ツクヨミ「・・・調べてほしい、場所があるの・・・」
さくら「・・・菜緒?」
その頃、無名街――鬼邪高、山王と九十九、雨宮兄弟が次々と構成員を蹴散らしていっていたが、最大規模の戦力を誇る善信会は未だ倒れずにいた。すると、そこへ地下の研究室を探っていたタケシ達RUDEが加勢する。
タケシ「お前ら、一旦下がれ!」
ピーとユウが率いる一団が構成員達の侵攻を喰い止めてる隙に、村山や楓士雄、コブラ達、雨宮兄弟は、パワーファイターの九十九とヤマト、他の鬼邪高生徒達を残し、大きな袋を持ったタケシの指示通りに後退する。その先の広場では、公害の被害者であるスモーキーを守ろうと琥珀がたった1人で陣取っていた。
ダン「資料は見つかったんか?」
タケシ「ああ。後はスモーキーと一緒にこれを警察に届ければ・・・」
九龍と政府が隠蔽していた公害が暴かれ、カジノ計画が中止になる・・・一同がそう思い込んだ矢先、事前に信用できる警察の人間から預かっていた無線機が、琥珀の手元から鳴り出していた。
ツクヨミ『・・・無名街の皆・・・聞こえる・・・?』
楓士雄「その声・・・ヨミちゃん!?」
琥珀「マジ女の方はもう片付いたのか?」
ツクヨミ『ええ・・・でも、急がないと・・・取り返しのつかない事態に、なってしまう・・・』
雅貴「どういう意味だ・・・?」
ツクヨミ『九龍と、財閥の狙いは・・・今ここでマジ女を潰すことでも・・・スモーキーと研究資料を、消すことでもない・・・無名街の爆破セレモニーを、全国に中継して流すことだったの・・・』
村山「はぁっ!?」
タケシ「無名街の爆破セレモニー・・・!?」
ノボル「まさか、ここにいる構成員は皆、その時間稼ぎをしていただけだったのか・・・!?」
コブラ「スモーキーと資料を消せれば良し。消せなかった時は・・・道連れにしてでも・・・!」
ツクヨミ『研究資料が見つかったなら・・・すぐに、この地区の中枢にあるセレモニー会場を目指して・・・こっちもシャドウ達に矢場久根、リリィーとネロ・・・Rascalsや鳳仙も、全員向かわせるわ・・・』
広斗「・・・お前は?」
ツクヨミ『・・・私は、九龍本家の屋敷に行く』
琥珀「九龍の・・・?」
それは突然の宣言だった。琥珀達が思わず驚く中、ツクヨミは九龍本家の屋敷に向かいたい理由を話し始める。
ツクヨミ『これは・・・今までこの街で起きた、全ての争いに決着をつける為の喧嘩・・・だから私は・・・直接九龍の総裁に会って、けじめをつけたい・・・』
広斗「・・・おい、お前さっきから息が荒いぞ。大丈夫なのかよ?」
ツクヨミ『・・・っ』
通話の最中に呼吸が乱れていることを広斗に指摘されるも、ツクヨミは何も言わなかった。代わりにそれに答えたのがさくらだった。
さくら『・・・菜緒は、クリーナーの攻撃から油断してた私を庇って、お腹に深い傷を負ってしまったんです』
村山「ちょいちょいちょい、そんな状態で1人ボスの家に行くとか・・・ROCKYちゃん!?お前、女守んのが君の大事なんでしょ?いいのかよそんなんで!?」
ROCKY『・・・女が決めたことなら、男に口出しする権利はねえ』
雅貴「いや、だけどよ・・・!」
ツクヨミ『大丈夫・・・1人じゃないわ。私は・・・皆の思いと、繋がってるから・・・それに・・・これは、私個人がつけたい、けじめでもあるの・・・』
広斗「お前が・・・?」
ツクヨミ『私は、お姉ちゃんの無念を晴らしたくて・・・以前は、マジ女を強くすることに必死だった・・・けど、いつしか・・・お姉ちゃん達が守りたかった学園を・・・私自身が、暗い闇に染めてしまった・・・歴代の生徒達の思いを、無下にしようとしてたの・・・でも・・・そんな馬鹿な私を、さくらはこんなところまで、追いかけてきてくれた・・・タイヨウは、命を賭けて守ってくれた・・・だから、私は・・・マジ女の為だけじゃなく・・・皆の為に、最後のけじめをつけたいの・・・』
コブラ「・・・ラッパッパ部長である前に、仲間の為に・・・1人の人間としてけじめをつけるってことか」
コブラの言葉にツクヨミは何も返さなかったが、おそらく無線機の前で頷いていたりするのだろう。すると琥珀は、彼女の覚悟を分かった上でこう返した。
琥珀「分かった・・・俺達は爆破セレモニーの会場に向かう。そっちも気を付けろよ」
楓士雄「・・・おい、ヨミちゃんっ!」
琥珀が無線機の通信を切ろうとした瞬間、咄嗟に楓士雄がそれを奪い取って、ツクヨミにもう一声かけようとした。
楓士雄「この前、あの黒崎って爺さんが言ってたよな?今のあいつらには無いもんを、俺らなら持ってるって・・・だから、九龍の頭にぶつけてこい!俺らが大事に熱く抱えてる全部をな」
ツクヨミ『・・・うん・・・分かってる』
楓士雄「さくちゃん!ヨミちゃんがけじめつけるまで、絶対死なせんじゃねえぞ!」
さくら『・・・はいっ!』
さくらとツクヨミに激励の言葉を贈った楓士雄は、そのまま無線の通信を切った。そして自身も滾る思いを胸に、一同に言い放つ。
楓士雄「・・・よし!そうと決まったら、俺達も行こうぜ」
タケシ「待て!このまま俺達が全員会場に向かっても、ここに来た連中がすぐに追いかけて混戦になるはずだ・・・だから、俺達が無名街に残ってあいつらを引き付ける」
雅貴「何っ!?」
スモーキー「・・・タケシ」
タケシ「スモーキー・・・『今の俺達なら、どこでだってやっていける』って言ったよな?でも、やっぱりこの街だけは俺ら家族にとっても沢山の思い出が詰まった場所だ。それを簡単に捨てることなんてできねえよ・・・でも俺達は諦めない。無名街もSWORDも、俺達の明日を全部守り抜いてみせる」
チハル「けど、それで爆発しちまったらお前らも・・・!」
ノボル「いや、まだ望みはある・・・爆弾がどこかに残ってるのなら、それを探し出して線を切れば爆破セレモニーも中止になる」
ダン「爆弾探すって、そんな時間あるわけ・・・」
テッツ「やってやりましょうよ、ダンさん!」
ダン「探すんかい!?」
テッツ「RUDEの奴らがこの街を思う気持ち、俺にも分かるんです!俺だって、親父の銭湯が無くなるなんてことを考えたら・・・」
ノボル「そういうことだ・・・コブラ。お前はヤマトを連れて、琥珀さん達や鬼邪高と一緒に先に会場へ向かってくれ」
コブラ「・・・死ぬんじゃねえぞ」
タケシ達RUDEと、ノボルをはじめとする山王メンバーの多くが残り、九龍の刺客を引き付ける側と爆弾を探す側に分かれて行動を開始する。そしてスモーキーを連れた琥珀達も、爆破セレモニーの会場へと向かうのだった――
そして、マジ女校舎――琥珀達への通信を終えたツクヨミはROCKYに無線機を渡すと、重傷の影響で息を荒げながらもさくらに対し口を開いた。
ツクヨミ「・・・さくら、ごめん・・・こんなことに、付き合わせちゃって・・・っ」
さくら「・・・当たり前だよ。私は、菜緒の友達だから」
微笑みながらそう言ったさくらに、ツクヨミも弱弱しく笑みを返す。すると、空いていた彼女の片方の腕を、ゼロが抱え始めた。
さくら「ゼロ・・・!」
ゼロ「・・・元はといえば、やるべきことをやるべきだって言ったのは私・・・だから、私も最後まで見届ける」
ツクヨミ「・・・ありがとう・・・」
ツクヨミの呟くようなお礼の言葉に、ゼロもふと笑みを浮かべる。そうして3人が一行と別れ九龍の屋敷へ向かおうとした、その時だった。
佐智雄「・・・!?おいっ!」
ROCKY「チッ・・・!」
佐智雄が突然何かに気づき、ROCKYがステッキを構えてツクヨミ達を庇った。一行が目を向けると、鎖を放ったラブ達クリーナーが奇妙な動きをしながら立ち上がっていたのである。
ネロ「こいつら、まだ動けたのか!?」
ツル「でも、何か様子がおかしい・・・!」
シュラ「あーあ、こいつらまで薬飲んじゃったか・・・」
リリィー「どうしても、私達を行かせる気はないみたいですね・・・!」
シャドウ「・・・来るぞ!」
薬を投与したクリーナー達は、狂った殺意を向けながら一行に襲い掛かる。だがその直後、どこからか現れた1つの影が、先頭のグンソウを蹴り飛ばしたのである。
さくら「・・・!?」
さくら達を守ろうとクリーナーの前に立ちはだかった影・・・その正体が後ろに振り向くと、シャドウやウサギ達は驚きの反応を見せる。
ウサギ「・・・えっ!?この人って・・・」
プリンセス「島崎、遥香・・・!?」
シンガー「待って、先代の部長のソルトってその時の校長に殺された筈だよね・・・!?」
シャドウ「まさか・・・貴女は・・・!」
先代の部長・ソルトと同じ面影を持つ者・・・彼女こそ、クリーナーを生んだ施設・プリズンHOPEの悪事を暴いた張本人で、亡きタイヨウと語り合ったこともあるパルという女性だった。
パル「・・・ここは私が引き受ける」
ゼロ「えっ・・・?」
パル「こいつらがあの施設で生まれたクリーナーなら、私もけじめをつけなきゃならない当人だ・・・でも、この喧嘩自体はお前達でケリをつけなきゃならないんだろ?だからせめて、その露払いをさせてくれ」
さくら「あ・・・」
クリーナーとの決着をつけるべく、自ら再び戦場に立とうとするパルに心を惹かれるさくら達。するとパルは、その鋭い眼差しをツクヨミに向けていた。
パル「・・・お前か、あいつが言っていたダチは」
ツクヨミ「・・・!」
パル「少し前に、お前のことを話していたマジ女の生徒がいてな。そいつが死んだと知った時は私も悲しんだが・・・今のお前を見ていると、そいつも悔いはなかったんだろうなって感じるよ」
ツクヨミ「・・・タイヨウ・・・っ」
パル「・・・行け。もうすぐ、爆破セレモニーの中継が始まる」
パルに促されたシャドウ達は、一斉に爆破セレモニーの会場へと走り出した。さくらとゼロもツクヨミを抱えて九龍の屋敷へと向かい、そしてパルは、不敵に笑うクリーナー達にたった1人で立ち向かおうとした。
パル「お前ら・・・人のマジを、笑うんじゃねえ・・・!!」
第22話へ続く