第20話 望みを繋いで | 坂道&ジャンルマルチブログ

坂道&ジャンルマルチブログ

坂道シリーズを中心に、他の話題もたまに語るかも?なブログです。
現在の主な推しメンは遠藤さくら・賀喜遥香(乃木坂)、藤吉夏鈴・森田ひかる・山下瞳月(櫻坂)、小坂菜緒・正源司陽子(日向坂)です。

カジノ建設計画に賛同するクライシス財閥に雇われた、クリーナーという暗殺集団とマジ女一行の死闘は、鬼邪高の楓士雄と司、九龍の次期総裁候補とされる黒崎君龍が割って入ったことで一時収束した。MIGHTY WARRIORSの矢場久根襲撃も轟達の介入によって事なきを得たが、殺人拳を扱うクリーナー・キバの手によってタイヨウが命を落としてしまう。夜の病院の屋上で、タイヨウの死から立ち直れずにいたツクヨミの下に、さくらが彼女を心配してやってきた。

さくら「菜緒・・・」

ツクヨミ「・・・私のせいだ・・・私があの日、村山良樹に勝負を挑んで・・・タイヨウと一緒にラッパッパを造ったから・・・これ以上の犠牲を出させないって、自分で言ったくせに・・・結局、タイヨウを死なせてしまった・・・!」

さくら「そんな・・・菜緒のせいじゃないよ」

ツクヨミ「私のせいなの!私が、お姉ちゃんの無念を晴らそうと必死になって・・・ウサギ達を巻き込んで、周りを従わせて・・・マジ女をあの頃みたいに強くしたと思い込んで・・・でも、あいつらはそれ以上に大きすぎる敵だった!そんな事も知らずに、私は・・・私がしてきたことは、全部間違っていたの・・・私が、こんな結果を生んでしまったの・・・っ!」

さくら「・・・菜緒」

自分の今までの行動が仇となり、タイヨウを死なせてしまったと後悔するツクヨミ。さくらは彼女の悲しみが大きいあまりに何も言い返すことができなかったが、今度はその場にゼロが足を踏み入れる。

ゼロ「・・・だからって、これで終わりにするの?」

さくら「ゼロ・・・!」

ゼロ「他の連中を言いなりにさせて、本当の事を言わないまま掻き回して・・・散々遠ざけてきたダチにそれが間違いだと指摘されて、挙句の果てに『相手が強いから駄目でした』と諦めて・・・それで責任を感じて、今更逃げるっていうの?」

ツクヨミ「・・・っ」

ゼロ「・・・アンタの覚悟は、それっぽっちのものだったの?私達は今まで、そんなアンタの傍で一緒に戦ってきたっていうの!?」

胸ぐらを掴みながら強く言い放つゼロに対し、ツクヨミはただ悲しい表情を浮かべるだけだった。ゼロはそんな彼女を突き飛ばしつつも、話を続けた。

ゼロ「・・・見ろ」

ツクヨミ「・・・え・・・?」

ゼロ「顔を上げて、見てみなよ。アンタが巻き込んだと思ってる奴らは、もう腹を括ってるよ」

ゼロの言葉通りに顔を上げ、視線を移すツクヨミ。その先には、タイヨウと共に四天王を張ってきたウサギ、シンガー、プリンセスの姿があった。

シンガー「ツクヨミ・・・私、やっぱりこのままじゃ終われない・・・タイヨウの仇を取りたいよ!」

ウサギ「私も、逃げたくない・・・!2人が造ったラッパッパで過ごした時間を、無かったことになんかしたくない!」

プリンセス「先代の生徒達が遺したものを守る為にも・・・私達は最後まで、マジ女の生徒として戦うわ」

ツクヨミ「プリンセス・・・ウサギ・・・シンガー・・・」

さくら「・・・私達もいるよ、菜緒。それに・・・タイヨウさんの思いはまだ死んでない、菜緒の心の中で生きてる。タイヨウさんはずっと、菜緒の傍で見守ってるよ・・・!」

ゼロ「アンタにはまだ、やらなきゃいけない事があるんでしょ?だったら・・・あいつのマジに応える為にも、アンタはそれを果たすべきなんだよ」

さくらとゼロ、その後ろには同学年のツル達もいた。彼女達が自身に目を向ける中で、ツクヨミは胸に手を当てて心の鼓動を感じると、意を決した表情で立ち上がった。

ツクヨミ「・・・以前の私は、お姉ちゃんを奪った九龍への復讐を果たす事に囚われていた・・・でも、今は違う・・・私は、お姉ちゃん達が生きてきたマジ女を・・・皆と同じ時間を過ごした大切な居場所を守りたい!命を賭けて、私達に望みを繋いでくれたタイヨウの為にも・・・!」

さくら「菜緒・・・!」

ツクヨミ「・・・私は逃げない。もう後悔もしない・・・ラッパッパ部長として、最後まで戦う」

仲間達の存在と、命がけで自身を守ったタイヨウの思いが、ツクヨミに再び戦う決意を固めさせた。さくらや四天王らが彼女を囲み、思いを分かち合うその様子を、シャドウとミュゼは屋上の扉から見届けていた。

ミュゼ「・・・あの頃の姿を思い浮かべると、変わったわね。ツクヨミ」

シャドウ「変わったんじゃない・・・本来の姿を取り戻したんだろう」

ミュゼ「本来の姿・・・?」

シャドウ「道を誤ったとしても、途中で逃げ出そうとしても、己の中の心が『それでいいのか?』と強く訴えてくる・・・いつ如何なる時も、自分の心と向き合い続けること・・・それが、マジ女の生徒として生きる上で一番大切なことだ」

ミュゼ「・・・そうね。前田さんやみなみさん・・・病気と戦った優子さんも、そうして生きてきたんだものね」

歴代の生徒達も、今ここにいる仲間達も、マジ女生徒として生きる思いは変わらない・・・シャドウとミュゼがそう考えていると、2人の側から着信音が鳴り響き、シャドウが携帯を取って連絡に応じた。

シャドウ「はい・・・そうか、分かった」

ミュゼ「・・・何かあったの?」

シャドウ「山王のコブラから招集がかかった。『無名街に来てほしい』と言っている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無名街への招集をかけられたさくら、ツクヨミ、ゼロ、シャドウの4人は、鬼邪高・定時の番長である村山と、全日から着いて来た楓士雄や轟と共に奥の広場へと足を踏み入れた。そこには山王のコブラとヤマト、RascalsのROCKY、達磨の日向にRUDEのタケシなどSWORD各チームの代表達、そしてある理由で無名街に身を潜めていたムゲンの元メンバー・九十九と、彼らのライバルである雨宮広斗が集まっていた。

コブラ「来たか・・・」

さくら「・・・!ここに集まってる人達、皆SWORDの・・・」

ヤマト「村山、お前全日の奴らまで連れてきたのかよ?」

村山「だって~、楓士雄君とかが一緒に行きたいっつってしつけえんだもん!」

楓士雄「うちは学校を燃やされてんだ。そんな時に定時も全日も関係ねえだろ」

日向「おい。ガキ連れて来られんのが嫌なら、マジ女のメスと一緒につまみ出しゃいいだろうが」

ROCKY「日向・・・女を侮辱しようってんなら許さねえぞ」

日向「あぁん?」

???「待て待て!集まって早々口喧嘩してどうすんだよ」

SWORDの代表達が揉めていると、そこに1人の青年が間に割って入った。明るそうな口調を話すその青年は黒いジャケットを身に纏い、広斗と似たような風貌だった。

コブラ「・・・雨宮雅貴」

雅貴「よう。ムゲンだった頃に喧嘩して以来だな」

ゼロ「雨宮兄弟の次男・・・」

さくら「九十九さんが会わせたい人って、この人だったんですか?」

九十九「いや、そいつだけじゃねえ・・・ほら」

九十九が顔の動きだけで一同の視線を集めさせると、雨宮兄弟の次男・雅貴の後ろからもう1人、髪を伸ばし左目に義眼をした男が姿を現した。その男の顔を見た途端、コブラとヤマトは思わず前に乗り出た。

ヤマト「・・・琥珀さん!」

琥珀「ヤマト、コブラ・・・久しぶりだな」

ツクヨミ「あれが、ムゲンの元総長・・・」

ツクヨミとさくらは、伝説のチーム・ムゲンを仕切っていた琥珀の存在感に自然と呑まれていた。そしてコブラは、先のUSBデータを公表した件が琥珀達によるものだったことを尋ねる。

コブラ「・・・やっぱり、九龍と政府の癒着関係を公表していたのは琥珀さん達だったんですね」

琥珀「ああ・・・日向達に復讐しようとしたのをお前らに救われてから、俺はずっと思い出していた。『お前は変化を怖れてる。皆が同じ時間で止まってるわけじゃねえ』っていう龍也の言葉を・・・変化を望むには自分から進まなきゃならねえ、だから俺は正しく生きたいと心に決めた」

雅貴「それで、俺らと一緒に九龍を潰す為に動いてたってわけだ」

シャドウ「だが、USBのデータを公表しても九世龍心は釈放されてしまった・・・それで九龍をどう潰すつもりなんだ?」

琥珀「それを話す前に、お前らにはこの街のある事実を知ってもらう必要がある」

轟「ある事実・・・?」

琥珀「まだ俺らが生まれる前の時代、この街には薬品会社の工場があった。そいつらが開発した新薬はある目的のウィルスに対し強い効果を発揮するが・・・投与された人間は半年か1年以内に死んでしまう副作用があることも判明して、莫大な費用を投じていた政府からの援助を失い、会社はそのまま倒産した」

広斗「けど最悪なのはその後だ・・・取り残された工場は薬を作ってる時に発生する有害物質に汚染されて、そいつは近くの湖や辺りの空気にまで流れ込むようになっちまった」

琥珀「この問題を重く見た政府は、警察や地方自治体を巻き込んで工場を閉鎖、周辺の湖まで埋め立てて何もかも隠したんだ」

村山「・・・すみません。俺、今の話全然分かんなかったです」

楓士雄「あっ、ごめん・・・俺も馬鹿だから、何の話してんだかさっぱりで」

如何にも勉強に関しては無縁な村山と楓士雄は困惑し、口には出さなかったがヤマトや日向も聞いてるようで聞いてない表情をしていた。だが、ここでゼロが最初の琥珀の言葉を思い出す。

ゼロ「待って・・・さっき、<この街のある事実>って言ったよね?」

琥珀「・・・ああ」

シャドウ「・・・!まさか、その公害の全てを隠す為に建てられたのは・・・」

広斗「・・・この無名街だ」

さくら「そんな・・・!?」

RUDEの住処である無名街が、有害物質に汚染された工場や湖を埋める為に建てられたことを知り、さくら達も初めて驚愕する。そして琥珀は、彼らの前である物を取り出した。

ROCKY「・・・それは?」

タケシ「俺達無名街の住民が、生活の為に売り付ける鉱物を掘っていた採掘場で見つけた物だ」

九十九「で、そいつは問題の有害物質が長い年月で結晶化したもんなんだとよ」

ツクヨミ「これが、汚染していた有害物質・・・!?」

コブラ「だったら、前に無名街で起きた火事は・・・!」

雅貴「ああ。九龍が公害の証拠を隠す為に、その結晶が掘られた採掘場を吹き飛ばしたんだ」

ヤマト「マジかよ・・・!」

ゼロ「それじゃあ、火事が起きた無名街にあのメッセージを残していたMIGHTYは・・・」

シャドウ「やはり九龍と繋がっていたのか・・・」

DOUBTと共にRUDEを襲撃したMIGHTYも、公害の証拠を隠す為に九龍の無名街爆破工作に関わっていた・・・一同がその事を確信する中、日向が自分達が集められた理由を言い当てる。

日向「・・・つまりは何だ?九龍がこの街にカジノを造る本当の狙いはそれで、今度は俺達がそいつをバラすってのか?」

琥珀「・・・そうだ」

楓士雄「いや、でも・・・バラすって言ったってどうすりゃいいんだ?」

さくら「あ・・・!もしかして、広斗さんと九十九さんがスモーキーさんを守ろうとしたのは・・・」

広斗「・・・スモーキーが、有害物質の被害者だからだ」

村山「だからスモーキー、いつも具合悪そうにしてたのね・・・」

琥珀「俺達が公害の件を暴く為には、薬品工場で働いてた責任者と研究の資料、そして汚染された被害者・・・この3つの証拠が必要なんだ」

雅貴「責任者は俺と琥珀で見つけて、信用できる警察の人間に預けてある。DOUBTに捕まってた女の子達と一緒にな」

ROCKY「フン・・・余計な真似しやがって」

コブラ「後は、薬品工場の研究資料か・・・」

タケシ「工場の研究室は無名街の地下にある。俺達がそこに行って資料を探し出せれば・・・」

ヤマト「3つの証拠が全部手に入るってわけか!」

スモーキーと工場の責任者を確保している現状、研究資料さえ見つければ全ての証拠を手に入れられると意気込むヤマト。一方、シャドウはそう簡単に事が運ぶと思っていなかった。

シャドウ「だが、九龍もその証拠を危険視している筈・・・スモーキーを排除して資料も奪い去る為に、大勢の刺客を差し向けてくるに違いない」

轟「連中とグルになってるMIGHTYも出てくるかもな」

ツクヨミ「・・・それだけじゃない。カジノ計画に賛同してるクライシス財閥・・・その組織に雇われてるクリーナーも現れるかもしれない。特に、私達を狙って・・・」

九十九「・・・?何だ、お前らんとこの学校また狙われてんのか?」

ゼロ「またも何も・・・マジ女が銀獅子会や海外マフィアと争うよう仕向けてたのも九龍だったんだよ」

雅貴「あいつら、子供んとこの学校にまで手を出しやがって・・・!」

ツクヨミ「・・・それでも、マジ女を九龍や財閥の好きにはさせない。公害を暴くことで、先代の生徒達がやられたけじめを付けられるなら・・・私達は戦う。かけがえのない居場所を守る為に」

さくら「菜緒・・・」

マジ女を守りたい、九龍とのけじめを付けたい・・・そんな強い思いを述べるツクヨミに、さくら達やSWORDの代表達も視線を向けながら感じ入っていた。

???「・・・話は大体聞かせてもらったよ」

さくら「・・・!シュラさん・・・」

楓士雄「サッチー!?」

佐智雄「その呼び方止めろ。ダッセえ・・・」

無名街での会議に乱入しようとする少女の声に、一同が振り向く。その先にはシュラや上田佐智雄をはじめとする、矢場久根と鳳仙学園の精鋭達の姿があった。

轟「お前ら・・・何の用だ?」

シュラ「九龍の計画にはうちも色々世話になってるからさ・・・落とし前をつけないと気が済まないんだよね」

佐智雄「DOUBTに嵌められたとはいえ、お前らが九龍に付け入られる隙を与えちまったのは俺達だ・・・だから、俺達もそのけじめを付けたい」

ヤマト「俺らと一緒に九龍と戦うってのか?」

シュラ「そういうこと・・・あと、他所者で利害が一致したのはアタシらだけじゃないから」

シュラの言葉にさくら達が疑問を抱くと、彼らの群れの隣にまた2人の少女が顔を出す。その内の1人は、捨照護路との一件でさくらやゼロが手助けを受けた人物だった。

さくら「リリィーさん・・・!」

リリィー「・・・九龍と財閥に喧嘩を売られたのは、嵐ヶ丘も同じ・・・私も皆さんと一緒に戦わせてください」

ゼロ「構わないけど・・・アンタの隣にいるのは?」

コブラ「その格好・・・荒地の不良か」

ネロ「ネロだ。荒地も嵐ヶ丘も連中の好き勝手にされるわけにはいかねえ・・・あそこはアタシの街だ」

嵐ヶ丘学園・花組のリリィーと、荒地工業のリーダーであるネロも、SWORD一行と共に戦う決意を固めていた。シュラや佐智雄達をも加えて、琥珀と雅貴は会議を進めた。

琥珀「・・・どうやら全員、気持ちは同じみてえだな」

雅貴「よし、じゃあ明日の俺らの動きをまとめていくか。まずはRUDEが無名街の地下に行って、工場の研究資料を探す。そいつが見つかり次第、俺らはスモーキーを連れて公害を暴きに行く」

広斗「さっきも言ってたが、九龍も無名街を狙ってくるはずだ・・・できるだけこっちも人数を集めて、あいつらを喰い止められれば資料探しも楽になる。その前に住民も避難させとかねえとな」

ROCKY「マジ女の側にも人数を裂くべきだろう。クライシス財閥が危険視する程そこの土地を狙ってんなら、必ず連中もそれなりの戦力を投入してくる・・・こいつらだけに戦わせるわけにはいかねえ」

琥珀「前の爆薬がまだ残ってるかどうかも分からねえ・・・いざって時には無名街を放棄してでも、進むべきだろうな」

タケシ「は・・・?無名街を捨てろっていうのか!?」

さくら「タケシさん・・・」

タケシ「ここに住んでる奴らは皆、名前が無い・・・身寄りもない・・・そんな俺達がここを捨てたら、明日をどうやって生きていきゃいいんだよ!?」

???「・・・タケシ」

無名街を放棄してでも進むしかないという琥珀の提案に強く反対するタケシ。しかし、そんな彼に声をかける人物がいた。劉に付けられた傷は癒えたものの、有害物質による病気に今も蝕まれ、ピーとユウに体を支えられていたスモーキーである。

タケシ「スモーキー・・・!」

スモーキー「・・・俺達は、いつも誰かの為に生きてきた。助け合うことでしか生きられなかった俺達は皆、誰かの為に夢を見ていた・・・でも、それだけじゃ駄目だ」

タケシ「えっ・・・?」

スモーキー「俺達はこれから・・・他の誰かの為じゃなく、自分の為に夢を見ていくべきだ。新しい場所で」

タケシ「・・・けど、俺はただお前らと一緒に――!」

スモーキー「心配するな。例え離れていても、俺達はずっと一緒だ・・・今の俺達なら、どこでだってやっていける」

タケシ「・・・スモーキー」

スモーキー「大丈夫だ・・・この街で、沢山学んできただろう?だから絶対に諦めるな。俺達は、いつだって・・・誰よりも高く飛ぶんだ」

無名街が無くなっても、家族と離れ離れになっても、今の自分達ならどこでだろうと生きていける・・・スモーキーの言葉はピーとユウ、そしてタケシの心に強く響いていた。するとSWORDの代表達もスモーキーに続き、それぞれの思いを、信念を口にした。

コブラ「こんな俺達でも・・・近い将来、皆大人になっちまう。喧嘩して、色んな人に迷惑かけて、仲間と揉めて・・・でも、例え間違ったとしても、必死に生きた時間がこれからの人生の糧になる。だから俺は、今を大切にしたい・・・!」

村山「・・・俺達もどうしようもない生き物だよ。勉強できねえし、何かといっちゃあ殴り合う・・・だけどさ、ネット使って相手の痛みも気にせず他人を殴る奴より・・・体張って痛みを知る俺らの方がよっぽど良い大人になれる気がする!」

日向「ハッ・・・生きるか死ぬか、ギリギリんとこで血を滾らせるこの瞬間が溜まんねえ・・・どうせ人間いつかは死ぬんだ。だったら今、テメエが作った祭りの中で暴れる方が面白えだろ?」

ROCKY「俺達は何色にも染まらない・・・それは決してエゴではなく、仲間と共にこれからも女を守り続ける。そして・・・腐った色には絶対染まらねえ」

楓士雄「へへっ、いいじゃねえか・・・俺の爺ちゃんも言ってたよ。『1人じゃ越えられなくても、仲間と一緒ならどんなことだって乗り越えられる』って・・・同じ空の青さを知る者同士、パーッと派手にやってやろうじゃねえか!」

雅貴「・・・俺達は強く生きる。それが、尊龍の兄貴が最後に望んだことだ」

広斗「公害の隠蔽を暴ければ・・・兄貴達が守ってきたUSBも、今度こそ無駄にはならねえ・・・!」

琥珀「・・・カジノを造って街が生まれ変わる、それで皆が幸せに暮らせるなら別に構いやしねえ・・・ただ、それを利用して何かを隠蔽しようとしたり、腐った金に手を出す奴らは許さねえ・・・!」

コブラ、村山、日向、ROCKY、楓士雄、雨宮兄弟、琥珀・・・彼らの言葉は、その場に集まっていた皆の思いを強く昂らせる。そして琥珀は、一同に堂々と宣言した。

琥珀「・・・明日で九龍を終わらせる。この街で起こってきた全ての事にケリを付ける為の、最後の喧嘩だ・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日――徐々に昇ってくる朝日が、薄暗い街を明るく照らしだそうとしていた。そんな街中の1つの建物の屋上で、とある人物達が語らっていた。

???「・・・世の中が引っ繰り返ろうとしてやがるな」

???「・・・ああ」

???「アタシらが学生時代に経験した喧嘩なんて・・・今の騒ぎに比べたら、ほんの小競り合いにしか過ぎなかったってわけだ」

ネズミ「まあ・・・その小競り合いのせいで、九龍がマジ女に付け入る隙を与えちまったわけっすけどね」

3人の若い女性の内、1人はシャドウ達にも様々な情報を届けていたネズミ。もう1人は、自身もかつてマジ女に在学し、一時期は博多に転校してテッペンの座まで登り詰めたというアゲマンであった。

アゲマン「今の連中には申し訳ないと思ってるよ。昔のアタシらは、政治とかどうでもいいなんて思ってたし・・・でもそれが絡んだ争いで、博多で知り合った後輩まで死んじまうってのに・・・アタシらはどうすることもできなかった」

ネズミ「そんなあっし達をどう思ってるかは分かりませんけど・・・今の生徒達はSWORDと協力して、自分達だけでマジ女を守ろうとしてる。あっしらにできることはただ、この喧嘩の行く末を見守ることだけっす」

???「・・・少し、もどかしくはあるけどな」

アゲマン「・・・前田」

そんな言葉を口にしたのは、大島優子が率いていたラッパッパと激しい戦いを繰り広げ、親友のみなみの為に敵対していたヤクザ達の相手を自ら引き受けようとした伝説の転校生・前田敦子だった。

前田「優子さんやみなみ、おたべ達は、命を賭してあの学園にマジを遺していった・・・でも、あの時の抗争に無理に干渉せず、生き延びてしまった私達は何も残せちゃいない。そんな私達が今更手を出しても、それであの子達の未来が守れるってわけじゃない・・・だから私達は、見守ることしかできない・・・それがもどかしい」

ネズミ「・・・まあ、分からなくはないっすけどね。今のあっしにもその気持ちは・・・」

つの字連合を率い、マジ女のテッペンを狙おうとした当時のネズミには、相棒とも呼べる存在がいた。しかしその相棒も、先代の部長・ソルトが暗殺されたのをきっかけに単独で動き出し、真犯人である前校長と対峙した・・・その人物が今頃どうしてるのか分からないネズミは、自分も積極的に動いていれば何もかもが変わっていたのではないかと、後悔する思いも残っていた。

前田「・・・でも、信じてみたい気もしてるんだ」

ネズミ「・・・信じる?」

前田「鬼邪高の軍門に降って、ムゲンの台頭に怯えて・・・でもそんな時間を乗り越えて、今のマジ女の生徒達は彼らと協力して、私達が生きてきた思い出の場所を守ろうとしてる。あの子達なら、私達が抱き続けてきた大切な思いを・・・マジを・・・これから先の未来に託して、繋いでいけるんじゃないかって。だから私は・・・あの子達を信じてみたいんだ」

アゲマン「・・・そっか」

さくらとツクヨミ、ゼロやシャドウ達・・・今のマジ女生徒達を信じたいという前田の言葉は、アゲマンとネズミにも同じ気持ちを抱かせた。彼女の言葉に微笑んだアゲマンは、自分達も強い決意を固めた。

アゲマン「なら、逃げずに見届けてやろうぜ・・・あいつらの最後の喧嘩を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃――さくらとゼロはいつものように、マジ女校舎へ足を運ぼうとしていた。そんな彼女達を呼び止めようとする声が、2人の後ろから聞こえてきた。

???「・・・てち!」

さくら「・・・?あやめさん・・・!」

ゼロ「あやめ・・・」

その声の主は、以前に捨照護路の策略で誘拐されるも、親友であるゼロやさくら達の活躍で救われた少女・あやめだった。これまでSWORDで様々な事件が相次いだことで、あやめはずっとゼロの身を案じていたのである。

あやめ「・・・行くの?」

ゼロ「・・・うん」

あやめ「・・・そっか。私は、てちやさくらさん達みたいに喧嘩が強くないから、見ていることしかできないけれど・・・でも・・・!」

あやめが自身の言葉を言いかけた時、ゼロは両手をあやめの肩にポンと置いた。そして強い眼差しを向けながら、彼女はあやめに言い放った。

ゼロ「・・・大丈夫、必ず戻ってくる。私やねる、ツクヨミみたいに悲しい思いをする子供が二度と生まれないように・・・全部片づけて、あやめにも会いに行くから」

あやめ「てち・・・うん、分かった・・・私も信じるよ。てちや皆が無事に帰ってくるのを」

あやめの言葉を聞いたゼロは静かに微笑み、彼女に見送られながらさくらと共に校門の手前まで歩を進める。そしてそこでは、ツクヨミが1人でじっと立ち尽くしていた。

ツクヨミ「・・・タイヨウ、これが最後の喧嘩になる。お姉ちゃんや、歴代の生徒達の思いを裏切らない為にも・・・九龍と財閥の手から、この学園を守ってみせる。私達が同じ時間を過ごした思い出も、消させたりしない・・・だから・・・あの頃と変わらずに、見守っていてね。私のすぐ傍で・・・」

そう呟いて、ツクヨミはタイヨウが遺したスカーフを自身のマジ女の制服に付けた。そこにさくらとゼロが近づいてくると、彼女は覚悟を決めた表情で2人に言った。

ツクヨミ「・・・行こう」

さくら「・・・うん・・・!」

さくらとゼロも頷き、ツクヨミを加えた3人はマジ女校舎へと足を踏み入れる。長く続いてきたマジ女とSWORDの運命を揺るがす戦いが、最後の一戦を迎えようとしていた――

 

 

 

 

第21話へ続く