鬼邪高・全日の不良達と鳳仙学園が激戦を繰り広げていた一方、山王と羅千地区の境目にあり、かつてWhiteRascalsとDOUBT、ムゲンの抗争の末に封鎖され境界線が引かれた黒白堂駅――そこで再び、ROCKY率いるRascalsと蘭丸率いるDOUBTが対峙しようとしていた。だが、№2としてROCKYを支える立場のKOOは、自分達とDOUBTに戦力の差があることを気にしていた。
KOO「彼らも各地への襲撃を繰り返していたというのに・・・この人数差、少々厳しいかもしれませんね」
平井「ハハハハ!SWORDの他の奴らを呼んでくるかと思ったら、Rascalsだけかよ?終わってんな」
蘭丸「所詮、仲間なんぞ自分達の事しか考えてねえ」
そうは言うものの、DOUBTはレッドラムを売り捌くことで鳳仙学園を手玉に取り、Rascalsとの戦いを邪魔させないよう鬼邪高にぶつけた。RUDEと達磨が身を潜め、山王のコブラにも手出し無用と言った以上、Rascalsは彼らだけでDOUBTと戦うしかなかった。
ROCKY「・・・お前らスカウトじゃねえのか?」
蘭丸「・・・あぁ?」
ROCKY「そんなんじゃ、女は寄って来ねえぞ」
蘭丸「お前らこそスカウトじゃねえのか?女は守るもんじゃなく、金を生む道具・・・全ては力と金だ」
ROCKY「お前は・・・女を分かってねえ」
同じスカウト集団でありながら、女性に対する考え方が異なるROCKYと蘭丸。かつてはDOUBTに所属しながらも、ROCKYとの出会いで改心し共にRascalsを立ち上げたKIZZYとKAITOは、蘭丸に対する嫌悪感を出していた。
KIZZY「やっぱりあいつ嫌いだわ~」
KAITO「なら・・・思い切りぶっ飛ばしゃいい」
ROCKY「ここで俺達の愛と誇りを奪われたら、生きる価値はねえ・・・それを忘れるな」
KIZZY、KAITO、そしてKOOらに自分達の戦う意義を再確認させるROCKY。彼はサングラスを外し、内に秘めていた狂気の表情を露わにすると、高らかに宣言した。
ROCKY「・・・Party Time!!」
蘭丸「・・・殺れぇぇぇっ!!」
ROCKYと同時に蘭丸も叫び、RascalsとDOUBT、双方のメンバー達が突撃する。因縁深きスカウト集団の雌雄を決する戦いが始まった。
シンゲキ「・・・グンソウ、始まったよ」
グンソウ「ククク、あいつらには精々潰し合ってもらわないとね・・・こっちの為にもさ」
黒白堂には、以前マジ女の校舎を襲撃してきた謎の女2人組・グンソウとシンゲキの姿もあった。意味深な言葉を呟く彼女達に監視されながら、Rascalsのリーダー・ROCKYは愛用のステッキを用いた武術で下っ端達を華麗に蹴散らしていく。だがそこに蘭丸が現れ、背後からROCKYに襲い掛かった。
蘭丸「オラァ!余所見してんじゃねえよ」
ROCKY「チッ・・・KIZZY、散れ」
KIZZY「ROCKY・・・散るわよ!」
ROCKYはKIZZY達を巻き込まないよう散開させ、蘭丸との一騎打ちに望む。しかしDOUBTの人数は多く、周りに散らばろうとするRascalsの部下達を徹底的に追い詰めようとする。
KOO「クズ共が・・・!」
平井「ハハハッ!ガールがいねえと調子が出ねえのか、僕ちゃん達?」
警棒を駆使するKOOや、タッグを組んで戦うKIZZYとKAITOを奇襲しつつ、下っ端達を鼓舞する平井。Rascalsの仲間達が徐々にDOUBTの戦力に呑み込まれていく中、ステッキを弾かれたROCKYは蘭丸と拳のぶつけ合いを繰り広げていた。
蘭丸「フハハハ・・・ッ!」
ROCKY「うらぁぁぁっ!」
ROCKYの攻撃を回避した蘭丸は後ろに回り込み、首を絞めようとする。しかしROCKYは肘打ちで蘭丸の腹を殴り、そのままコンテナにぶつけた。さらに追撃を図るROCKYだが、ここで蘭丸がその本領を発揮し始める。
蘭丸「ヘヘッ・・・ウリャアッ!」
ROCKY「ぐうぅぅ・・・っ!?」
ROCKYの体を近くの物置に衝突させた蘭丸は、目の前にぶら下がっていた鎖で再びROCKYの首を絞め付けた。そのまま何度も物置にぶつける蘭丸だが、ROCKYは腕の力で踏ん張り、ジャーマンスープレックスで蘭丸を背中から叩きつける。
蘭丸「ぐぁっ!ハ、ハハハ・・・ッ」
それでも不気味な笑いを続ける蘭丸は、絞め付けたままの鎖を引っ張ってROCKYを追い詰める。ROCKYも蘭丸の首を捕まえて根比べをしようとするが、蘭丸は落ちていた空の瓶に目を付けて、それを顔面にくらわせた。
ROCKY「うわっ・・・!?」
瓶の衝撃が重く、立ち上がれないROCKY。だが蘭丸はその機を逃さず、割れた瓶の破片を握ってROCKYの掌に強く突き刺してしまう。
ROCKY「がああああっ!!」
蘭丸「ヒャハハハハ・・・ッ!」
ROCKYの片手を負傷させた蘭丸は彼を蹴り飛ばし、さらに暴行を加えようとする。これをRascalsの仲間が守ろうとするが、あっさりと引き剥がした蘭丸は下っ端が持っていた鉄パイプを奪い、連続で振り下ろした。
ROCKY「止めろ!お前の相手は俺だろ・・・っ!」
ROCKYは蘭丸の目を引き付けようとするが、逆に蘭丸は仲間を拘束して挑発する。どうにか立ち上がって蘭丸を攻めようとするROCKYだが、そこに平井達が不意打ちを仕掛けた。
ROCKY「ぐあ・・・っ!?」
平井「残念~!タイマンなんかどうでもいい、俺達はただ勝てりゃいいんだよ・・・!」
KOO「ROCKY・・・!」
蘭丸と平井が率いるDOUBTに囲まれ、絶体絶命の窮地を迎えるROCKY。Rascalsもこのまま万事休すかと思われた、その時だった。無数のバイクに跨った集団が、ROCKYを庇うように黒白堂に現れたのである。
ROCKY「・・・!?」
彼らのピンチに駆け付けたのは、コブラ、ヤマト、テッツをはじめとする山王連合会の面々だった。予想だにしない援軍の登場に、KIZZYとKAITOは驚く。
KAITO「山王連合会・・・!?」
KIZZY「あいつら、何でここに・・・!」
DOUBTの下っ端達も彼らの登場に視線を奪われる中、コブラは傷ついたROCKYに手拭を渡し、声をかけた。
コブラ「・・・随分やられてんな」
ROCKY「・・・うるせえ、馬鹿・・・っ」
血を流していた片手を覆いながらも、強がりを見せるROCKY。コブラはそんな彼に手を差し伸べ、ゆっくりと起き上がらせた。
ROCKY「・・・悪いな、コブラ」
コブラ「フッ・・・言ったろ、『立てなくなったらいつでも呼べ』って」
ヤマト「・・・おい蘭丸!久しぶりだな!」
蘭丸「・・・ムゲンの残党共か」
テッツ「テメエら、Rascalsを集中してぶっ潰す為に卑怯な真似してくれたじゃねえか!」
平井「あぁ?何の事だよ?」
コブラ「とぼけても無駄だ。テメエらがリトルアジアのレッドラム工場に手を出して、そいつをばらまいた鬼邪高と鳳仙を同士討ちさせようって魂胆は、ノボルがとっくに御見通しなんだよ」
KOO「鬼邪高と鳳仙を・・・?」
KIZZY「うちに手助けが来ないよう、ちゃっかり小細工してたわけね・・・!」
ヤマト「だからよ、俺達山王はRascalsと一緒に、もう一度お前らをぶっ潰す!」
蘭丸「ハッ、丁度いい・・・だったらこっちも、まとめてお前らを潰してやるよ」
鬼邪高と鳳仙の喧嘩を仕組んだ元凶であるDOUBTに対し、怒りの目をぶつけるコブラ達。だが、蘭丸を迎え撃とうとするコブラの腕を、ROCKYが掴んで引き留めた。
ROCKY「・・・蘭丸は俺がやる」
コブラ「・・・死ぬんじゃねえぞ」
ROCKYの覚悟を受け止めたコブラは、ヤマト、テッツ達と共にRascalsを追い詰めるDOUBTを攻撃する。コブラツイストなどのプロレス技を駆使するコブラ、圧倒的な腕力を誇るヤマト、スピーディな戦法を得意とするテッツら山王の加勢によって、形勢は五分となり始めた。
蘭丸「チッ・・・」
ROCKY「・・・おおぉぉぉっ!」
山王の加勢に苛立ちを見せる蘭丸に、奮起して再び挑むROCKY。着実にダメージを与えていくROCKYだが、そこにDOUBTの下っ端達が体を捕まえて妨害し、その隙に蘭丸が再び凶器を用いて殴りつけた。
ROCKY「ぐぅ・・・っ!」
???「ハハハハ・・・!おい、情けねえな?」
どこからか響いてきた笑い声に、喧嘩の最中だった一同の目が右往左往する。すると、天上の橋を歩いてやってきたのは、達磨一家の頭・日向紀久だった。
テッツ「げっ!日向紀久!?」
ヤマト「あいつ、何しに来やがった・・・!?」
蘭丸「日向ァ、やっと来たか」
日向「・・・おう」
蘭丸のこの発言に、山王やRascalsは日向がDOUBTに付いたのか?と思い込んだ。しかし日向は近くにあったロープを掴むと、そこからターザンのようにぶら下がって飛び降り、勢いよく下っ端の1人を拘束して腕を絞めつけた。
蘭丸「・・・は?」
日向「来てやったぜ・・・オメエの邪魔しにな」
ROCKY「日向・・・」
日向「よう、ボス熊。SWORDの頭があんな野郎に手こずってんじゃねえぞ」
コブラ「フッ、あいつ・・・」
蘭丸「お前・・・何の真似だ?」
日向「聞いたぜ・・・オメエ、コインを何枚も集めさせるゲームで弱え奴らを切り捨ててんだろ?仲間を簡単に捨てられるような奴を信用できるわけねえだろ」
蘭丸「テメエだって兄貴達を捨てたじゃねえか」
日向「1回負けたぐらいでやる気を失くした兄貴達と、勝つ為なら何度でも起き上がる俺ら達磨は違う・・・俺とテメエの違いもそういうこった」
さらにそこへ、幹部の加藤達が乗る何台ものアメ車が乱入し、ソリのように引っ張られていた達磨の部下達が急停止したのと同時に転がりだし、DOUBT勢を一蹴していく。
加藤「オメエら!Rascalsに喧嘩を売ったってことは、SWORDに喧嘩を売ったってことになるよな?」
日向「だったらこれはSWORDの祭りだ・・・話を通された以上、俺らは好きにやらせてもらうぜ?」
平井「この赤ダルマ共がぁ・・・っ!」
加藤「へへっ、行けよオラァァァッ!!」
加藤の号令により、達磨一家が一斉に突撃する。山王だけでなく達磨までもがRascalsの味方についたことで、黒白堂の戦いはついに形勢逆転したのである。
平井「くそっ・・・!うわああぁぁぁっ!?」
平井を含めたDOUBTの一団は、達磨のメンバー達によって倒された巨大なフェンスの下敷きになり、そのまま何度も踏みつけられていった。この光景を見たRascals一行は、折れかけていた戦意を取り戻していった。
KIZZY「あいつら、頼んでもいないのにやってくれるじゃない・・・!」
KAITO「このままDOUBTを押し返す!」
KOO「やれやれ・・・今日は非番なんですけどね」
コブラ「日向・・・お前がROCKY達を助けに来るなんてな」
日向「勘違いすんな、俺が本当に潰してやりてえのは九龍だ・・・奴らに対抗するにはとことん数がいる。だからテメエらを生かしてやろうとしてんだよ」
コブラ「そうかよ・・・!」
かつてはムゲンと日向兄弟として敵対関係にあったコブラと日向も、協力して残りの下っ端達を次々と圧倒していく。そんな中、蘭丸とROCKYの一騎打ちも佳境を迎えようとしていた。
蘭丸「シャアアァァァァッ!!」
電車の中でROCKYと殴り合っていた蘭丸は、ドロップキックでROCKYを窓から吹っ飛ばした。今ので大打撃を与え、勝利を確信した蘭丸であったが、コブラ達に加勢されたことで何かが吹っ切れたのか、ROCKYは再度立ち上がり笑みを浮かべていた。
蘭丸「・・・!?ウアアアアッ!」
倒れるまで何度も拳を振り下ろす蘭丸に対し、ROCKYは余裕そうな表情を崩さない。徐々に怒りの感情を露わにしていた蘭丸は、止めを刺そうと拳を繰り出す。その瞬間、ROCKYはコブラの手拭で傷口を塞いだ片手で一撃を叩き込み、蘭丸の拳に強い痛みを走らせた。
蘭丸「グアアァァァァッ!?」
あまりの衝撃に耐えられず、膝を落とす蘭丸。彼は全身の痛みを堪え、何度も自分に殴り掛かってくるROCKYに恐れを抱いていた。
蘭丸「なんでだ・・・なんで・・・ッ!?」
ROCKY「お前はただ、周りの者から奪い続ける為に喧嘩してんだろうが・・・俺達の喧嘩は、奪う為じゃねえ・・・守る為の戦いだ!!」
自らの、そしてチームの戦いの意義を口にしたROCKYは、最後の力を振り絞って拳を振り下ろし、狂気のカリスマたる蘭丸を地に伏せた。
ROCKY「・・・あ~、疲れた・・・っ」
蘭丸を倒したことで緊張が解けたのか、ROCKYはゆっくりと寝転がりながらふと呟いた。創設者が敗れたことでDOUBTとの決着がつき、Rascals、山王、達磨の仲間達が勝利の雄叫びを上げようとしたその時、またしても無数の走行音が響きだした。
ヤマト「おい、今度は何だ?」
一同が警戒し出すと、そこに黒い車の大群が次々と戦いの場に割り込んでいく。車の中から現れたのはスーツ姿に身を包む100人以上の男達で、さらにその群れから凄まじい威風を放つ人物が姿を見せる。
???「・・・ガキ共が利権の取り合いなんかしやがって」
テッツ「何だ、あの厳ついオッサン・・・?」
日向「九龍の善信じゃねえか・・・!」
茶色いスーツに黒コート、顔にはサングラスという風貌のその男は、SWORDを再開発しカジノの建設を目論む九龍グループ・・・その中でも最大規模の構成員を従える暴君・善信善龍だった。
善信「・・・この喧嘩の原因は、お前か?」
善信は倒れていた蘭丸を見つけ、頭の髪を掴みながら問いかける。蘭丸は不敵に笑って善信にしがみつこうとしたが、その直後に善信は蘭丸を強く踏みつけた。
蘭丸「ガアァァ・・・ッ!」
ROCKY「・・・!」
善信「あのなぁ・・・人様に迷惑をかけるな。聞いてんのか?テメエらが勝手に騒ぐせいでな、纏まるもんも纏まんねえんだよ!」
コブラ「・・・っ、止めろ!!」
善信の一方的な暴力に気を失いかけつつある蘭丸。いくら悪事を働いてきたとはいえ、彼が何度も踏みつけられる姿をコブラは黙って見ていられなかった。
善信「・・・何勢いこいてんだ?不良を怒らせた時は、もっと情けねえ顔してくれねえと・・・SWORDの奴らは死ななきゃ分からねえのか?」
ヤマト「んだと・・・!?」
善信「・・・昔、ムゲンとかいう奴らの頭は生意気だから見せしめにバラしたが・・・今度はテメエらみてえなのがうじうじ沸いて出てきやがった。あ~・・・あいつ犬死だったな?」
コブラ「・・・!!」
善信が殺したという人物・・・それは紛れもなく、琥珀と共にムゲンを立ち上げた龍也だった。包み隠さず事実を語った善信に、山王のメンバー達は怒りを募らせる。
善信「お前らが何人死のうが、一生変わらねえんだろうな・・・」
コブラ「テメエ・・・ッ!」
善信「お前らと俺達の喧嘩の違い、教えてやろうか・・・?隠蔽できるんだよ。お前らみてえなガキがいくら死のうが、無かったことになるだけだ・・・」
銀獅子会や海外マフィアとの抗争で命を落としたマジ女の生徒達も、琥珀を庇って轢き殺された龍也も、その死の真相を偽られてきた・・・九つの龍の名の下に集まった、彼らの手によって。
善信「・・・これからは九龍全体でテメエらを潰す!逃げるか媚びへつらうか、どっちか選べ!!」
善信の宣言に対し、蘭丸と平井が敗れたDOUBTは一目散に逃げていった。しかし次の瞬間、コブラは返答を聞こうと振り返った善信を蹴り飛ばしたのである。
コブラ「・・・これが答えだ」
コブラに善信が蹴り倒されたことに、すかさず怒号を上げる部下達。すると、黒白堂の戦いを監視していた謎の2人組・グンソウとシンゲキも駆け下り、コブラに敵意を向けた。
グンソウ「アンタ、会長さんに何してくれてんのよ!?」
シンゲキ「これ・・・死ぬ覚悟はできてるってことで良いんだよね?」
日向「上等じゃねえか、この野郎・・・!」
ヤマト「かかってこいよオラァッ!」
善信「・・・待て」
山王、Rascals、達磨のSWORD3チームと、グンソウ、シンゲキを加えた善信会、黒白堂で更なる抗争が始まりかけたその時、引き留めたのは他でもない善信の声だった。
グンソウ「会長さん・・・!?」
善信「あぁ~、痛ぇ・・・良い根性してんじゃねえか。それに免じて今日のことは忘れるが・・・テメエの面、覚えたからな」
コブラの蹴りを受けたにも関わらず、平然とした態度で立ち上がった善信は、背を向けて部下達の間を通ろうとした。
コブラ「逃げんのか、テメエ・・・?」
善信「ハハハハ・・・逃げねえよ~!ここからだ。大人の喧嘩、教えてやる・・・行くぞお前ら!」
不吉な発言をして笑う善信は、多くの部下やグンソウ、シンゲキを連れて帰っていく。コブラ達も対抗心を燃やす中、九龍グループの巨大な魔の手が、いよいよSWORDに迫ろうとしていた――
その頃、鬼邪地区の河川敷では、鬼邪高・全日の生徒達とさくら、ツクヨミらマジ女一行が、DOUBTに仕組まれた鳳仙との戦いで受けた傷を癒していた。疲労した仲間の姿を見て、楓士雄は今まで経験したことのない戦いを味わった気分でいた。
楓士雄「サッチーと鳳仙・・・ありゃ相当だわ」
轟「・・・でも、その上には上がいるって知ってるか?」
楓士雄「えっ?」
轟「戸亜留市には、鳳仙も一目置く<カラスの学校・鈴蘭>って不良校がある。そこの3年に・・・<ラオウ>って呼ばれてる男がいんだけど」
シスター・メンドウ「ラオウ!?」
ツル「ま、まさか・・・『北斗の拳』っていう漫画に出てくる・・・?」
ゼロ「だから、んなわけないでしょって」
轟「で、さっきの鳳仙の頭・・・去年そいつとやって、勝てなかったらしいぞ」
楓士雄「えぇっ!サッチーが!?」
あれほどの強さを見せつけた佐智雄ですら勝てない人物がいる・・・その事実に一瞬黙りかけた楓士雄は、ショックを受けるかと思いきややはり満面の笑みを表した。
楓士雄「うわぁ~・・・凄えっ!」
司「お前・・・まさか今度は鈴蘭と喧嘩しようってんじゃないだろうな?」
楓士雄「でも会ってみたくないラオウと?いや~、今からワクワクすんな!」
辻「確かに興味をそそられるけど・・・今日はもう帰ろうぜ」
芝マン「これ以上馬鹿に付き合うと、命がいくらあっても足んねえよ」
辻と芝マンの言葉に、楓士雄ら全日の生徒達は声を出して笑い合った。轟も拍手して場を盛り上げようとする光景を、さくら達も微笑みながら見ていた。
さくら「あんなに大変な喧嘩をしてたのに・・・楓士雄さん達、まだ楽しそう」
ツクヨミ「・・・そうね」
村山「・・・あのさ」
そんな彼女達の後ろから話しかけてきたのは、山王のノボル達と共に真実を伝えに来た定時の番長・村山だった。かつて彼に勝負を挑んだツクヨミは、突然の訪問に驚いていた。
ツクヨミ「村山良樹・・・!」
村山「おぉ、フルネーム。まあ名字の呼び捨てよりはマシか・・・うちの後輩達の喧嘩を止めようとしてくれてあんがと。それと・・・」
ツクヨミ「・・・?」
村山「・・・悪かったね、色々と・・・じゃあ、お疲れ~」
そう言って、村山はバイバイと手を振りながら帰っていく。今の彼の言葉は、ツクヨミが義理の姉・おたべの無念を晴らそうと必死だったことに対する謝罪だったのだろう。
タイヨウ「・・・ツクヨミの気持ち、あの人も分かってくれてたんだね」
ツクヨミ「・・・でも、私はさくらと2人がかりでも上田佐智雄に歯が立たなかった。喧嘩を止められたのは、あの人やシャドウ達が間に合ってくれたから・・・」
シャドウ「それは違う。お前達が意地でも踏ん張りを見せていたからこそ、俺達も間に合わせることができたんだ」
さくら「シャドウさん・・・!」
シャドウ「先走ってしまうのは以前と変わらないが・・・過去と今のお前には決定的な違いがある。それは復讐の為じゃなく、守る為に拳を振るっていることだ。今のお前なら・・・おたべさんも少しは喜んでくれるんじゃないか?」
かつては自身を非難していたシャドウもこう評価した。彼女の言葉を聞いたツクヨミは天上の空を見上げながら、今にも泣き出しそうな表情を浮かべた。
ツクヨミ「・・・お姉ちゃん・・・」
タイヨウ「良かったね、ツクヨミ・・・でも、あまり1人で突っ走り過ぎないでね。私もさくらちゃんも、皆ツクヨミの傍にいるんだから」
ツクヨミ「・・・うん・・・ありがとう、タイヨウ」
ツクヨミは笑みを浮かべ、さくらをはじめとする仲間達の存在に喜びを感じていた。それを隣で笑ってみていたタイヨウは、その心の奥で強い思いを抱いていた。
タイヨウ(そう・・・あの子はまだ死なせちゃいけない、私達でツクヨミを守るんだ。これから先、何が待っていたとしても・・・)
第19話へ続く