第16話 道は違えども | 坂道&ジャンルマルチブログ

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この日、楓士雄と司はいつも通りに鬼邪高へ登校していた。だが、校舎の入り口はいつもと違う空気が漂っていた。全日制の生徒達が傷だらけの姿で周りの物に寄り掛かっていたり、その真ん中で辻と芝マンが険しい表情を浮かべていたりしていたのである。

楓士雄「何だなんだ、皆揃ってボロボロで。まさか辻と芝マンに喧嘩挑んで負けちまったってか?」

辻「・・・こいつらをやったのは俺らじゃねえよ」

司「は・・・?どういうことだ?」

芝マン「こいつらは昨日の夜、この辺りじゃ見たことも無い学ランのハゲ軍団に襲われたんだとよ」

楓士雄「見たこと無い制服に・・・ハゲ?」

辻「で・・・おまけにこんなもんを預かってきやがった」

辻の手元には、負傷した全日生徒が持たされていた置き手紙があった。司がそれを受け取って内容を見ると、そこにはこう記されてあった。

司「・・・『商売の邪魔をする奴は全員潰す。鬼邪高の馬鹿共、明日まとめてケリをつける 鳳仙学園』・・・!?」

司の口から鳳仙の名が出た瞬間、他の全日生徒達は動揺した。先日、レッドラムが再び出回り始めていた件で村山に呼び集められた際、そこで鳳仙の情報が伝えられ彼らの強さ、恐ろしさを知ったからである。一方司は、手紙のある文章に目を鋭くした。

司「商売の邪魔・・・まさかレッドラムが出回っていたのは、全部こいつらの仕業か・・・!?」

辻「鳳仙の周りでも捌かれてたどころか、そもそもの出所がこいつらだったってか」

芝マン「しかしわざわざ、こんな決闘状みたいなもんで宣戦布告しにくるなんてよ」

楓士雄「今時決闘状って・・・まあ、こいつらをやった相手が誰だか探す手間が省けたな」

この楓士雄の発言に、司や辻、芝マン、多くの生徒達が彼に視線を向けた。鳳仙の強さが明かされた時も、楓士雄だけは強い相手に興味を持ち満面の笑みを見せていた程である。

芝マン「楓士雄、お前まさか・・・」

楓士雄「・・・フッ、決まってんだろ?」

司「お前・・・本気か?相手は鳳仙だぞ」

楓士雄と同じ絶望団地出身で、全日の中でも高いクラスの戦闘力を持つ司、辻、芝マンですら、鳳仙に対して強い警戒を見せていた。そんな彼らに楓士雄は笑い始めたかと思いきや、周りの生徒達に声を荒げて言い放った。

楓士雄「・・・相手が誰だろうと関係ねえだろ!!<仲間>がこんだけやられてんだ・・・行くだろ!?」

楓士雄はこれまで、彼らにあまり見せていなかった怒りの感情を露わにしていた。それも、互いに全日のテッペンの座を懸けて争っていた生徒達を仲間と称し、彼らが傷つけられたことに怒りを抱いていたのである。

芝マン「・・・だがよ、レッドラムの出所がホントにこいつらだとしたら、一旦定時に知らせとくべきじゃねえのか?」

辻「村山はSWORDの揉め事に、俺ら全日を巻き込みたくなさそうだしな」

楓士雄「・・・そうは行かねえよ」

司「楓士雄・・・!?」

楓士雄「ムラッチも言ってたろ?『全日は全日でちゃんと片をつけるように』って・・・DOUBTっつう奴らの時と違って、今襲われてんのは定時じゃなくて俺らだ。だったら定時も全日も関係ねえ・・・これは鬼邪高の問題だ」

全日の生徒が襲われた以上、そのけじめは全日制に通う自分達でつける・・・楓士雄の覚悟は、自分達もまたSWORDの一角・鬼邪高の不良であることを、鳳仙や村山達に示そうという意志の表れにも思えた。

司「・・・ったく、うちの大将は軽く言ってくれるわ!」

司は笑みを浮かべて楓士雄の覚悟についていくことを決意し、他の生徒達も鳳仙に対抗する意志を固めた。彼らの表情を見た楓士雄は、再び声を上げて仲間達に告げた。

楓士雄「・・・よーし、皆さん!明日はパーッと派手に行きましょう!!」

楓士雄の宣言に全日の生徒達は揃って気合の雄叫びを上げる。覇権争いをしていた者達は一時休戦、共通の敵を倒す為に手を組もうとしていた。だが、この場にある人物がいないことに気づくと、楓士雄は辻と芝マンの下へ歩み寄った。

辻・芝マン「・・・!」

楓士雄「で・・・お前らの大将はどうすんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、SWORDに隣接する戸亜留市の病院――そこでは、昨夜襲撃された鳳仙の生徒達と四天王・小沢仁志の1人である沢村が入院していた。幸い命に別状は無かったものの、沢村が頭から血を流すほどの重傷を負ったことに、同じ四天王の小田島、仁川、志田は怒りを募らせていた。

小田島「鬼邪高・・・確かにそう言ったんだな?」

志田「何なんだ、その鬼邪高ってのは?」

小田島「SWORDっていう地区の均衡を守ってる不良校だ・・・あそこは定時が出てくるなら、まず俺ら高校生の立ち向かえる相手じゃない」

仁川「はぁ!?同じ高校だろうが・・・!」

小田島「定時の連中は何度も留年を繰り返してる。簡単に言うと・・・万が一の予備軍みてえなもんだ」

仁川「・・・!?」

志田「ハッ・・・マジかよ」

小田島が知る鬼邪高の正体を聞いた仁川は驚き、志田は武者震いするかのように笑った。するとそこに、鳳仙の番長・上田佐智雄が顔を見せる。

佐智雄「・・・そんなの関係ねえよ」

小田島「佐智雄・・・」

佐智雄「・・・ここまでされたんだぞ!?全日とか定時だとか、関係ねえっつってんだよ・・・!」

佐智雄は首元の襟が血に染まった沢村の制服を掴み、激しい怒りをぶつけた。そして彼は、その鋭い視線を小田島、仁川、志田の3人に向けた。

志田「・・・まあ、そうなるよな」

仁川「やるか・・・!」

仁川、志田、そして小田島が決意を固め、スキンヘッドの部下達もそれに同調するように立ち上がる。彼らの意志を確認した佐智雄は、笑みを浮かべて宣言する。

佐智雄「・・・鬼邪高潰すぞ」

一同「っしゃああああぁぁぁーーーっ!!」

生徒達の咆哮が鳴り響き、鳳仙もまた鬼邪高への対抗心を抱き始める。進む道は違えども、傷ついた仲間の為に戦おうという強い思いは鬼邪高の生徒達と同じだった。だが、唯一襲撃者の顔を見た沢村が未だ意識を取り戻さない為に、彼らが明日までに真の敵を知ることはなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その夜、鬼邪高・全日生徒の轟は校舎を離れ、近くの街を歩いていた。そんな彼の目の前にやってきたのは、鳳仙と対抗する為に全日の生徒達をまとめた楓士雄だった。

轟「・・・お前・・・」

楓士雄「よう、ドロッキー。探したぜ?」

轟「何だ・・・やっぱり、今ここで決着つけてえのか?」

楓士雄「いや、悪い。その為に会いに来たんじゃねえんだ」

轟「はぁ・・・お前もそういうノリかよ」

楓士雄「まあまあ、そう言わずにちょっと付き合ってくれよ」

明るい態度で接し続ける楓士雄に、轟は渋々話を聞く事にした。暫く使われていない建物の駐車場で、空き缶に石を投げて当てる遊びをしながら、楓士雄は轟に鳳仙と戦うことを話した。

轟「・・・鳳仙と?」

楓士雄「おう。皆とっくにやる気満々だし、後はお前がどうするかなって思ってよ」

轟「・・・お前、鬼邪高の頭になりてえんだろ?そんな奴が俺に『喧嘩手伝え』って頼みに来んのか?」

轟もまた、全日の覇権を争う中で一番の障害であるはずの自分に、共に戦ってほしいと願うような楓士雄の考えが最初は理解できなかった。そんな彼に対し、楓士雄は石を投げながら話を続ける。

楓士雄「正直俺も、そいつらがどんな奴なのかまだ見たことねえんだけどさ・・・でも皆が動揺してるのを見ると、こりゃ一筋縄じゃいかねえんだなってのが馬鹿な俺でも分かるからよ。それにこの街・・・今かなりヤバい時期だろ?だから今はテッペン懸けて喧嘩するより、同じ学校の為に一緒に戦った方がいいんじゃねえかなって思ってよ」

街が襲われ、仲間も傷ついた・・・そんな事態が続く状況だからこそ、今はテッペンの座を懸けて争うより、同じ鬼邪高の仲間として1つの脅威に立ち向かうべきではないかと語る楓士雄。轟は彼を見て、昨日の体育館に沢山の仲間を連れていた楓士雄の姿を思い出しながら、心の中で呟いた。

轟(こいつ・・・自分のことを馬鹿とか言いながら、正義感丸出しな台詞を吐きやがって・・・けど、そんなこいつの為に他の連中が付いて行こうとするのか?)

村山『仮に俺を倒しても、皆がそのままお前に付くとは限らない・・・前にも言ったでしょ?拳だけじゃダメだって』

今の自分には無く、楓士雄にはあるもの・・・村山に言われた言葉の意味が何なのか、その答えに辿り着いた轟は一度も投げていなかった石を一発で缶の1つに命中させ、なかなか当たらない楓士雄を驚かせた。

楓士雄「えぇ~~っ!?」

轟「・・・お前が、今までどんな相手と喧嘩してきたか知らねえけど・・・間違いなく、鳳仙はその中でも最強だ」

楓士雄「あ・・・うん」

轟「・・・足を引っ張るんじゃねえぞ」

そう言って、轟は駐車場の階段を降りていった。最後の彼の言葉は、鳳仙との戦いに協力するという意志の表れだった。そのことに喜びを感じた楓士雄は、轟と同じように石を命中させようとするも、結局残った缶に当たらず肩をガクッと落とした。

楓士雄「あちゃ~・・・ドロッキー、どうやって当てたんだ?・・・へへっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日――その時は訪れた。鬼邪地区の駅に到着した1本の電車・・・その中から大勢のスキンヘッドの軍団が現れる。

小田島「・・・はい、到着~」

仁川「しゃあぁぁっ!待っていろ、鬼邪高!!」

四天王の小田島、仁川、志田、そして番長の佐智雄が先頭に並び、鳳仙学園の生徒達は仲間を傷つけたという鬼邪高に報復すべく、その校舎へと足を進めた。その様子を、偶然遠くから目撃した1人の少女がいた。

リッスン「・・・えぇ~、こりゃ流石にヤバいやろ・・・!?」

それは、濃い緑色のジャージを身に着けた矢場久根女子商業のリッスン。情報収集能力にも長けている彼女は、すぐさま携帯を取り出して仲間のハンターとスパイク、そして総長のシュラに連絡を入れた。

リッスン「臨時ニュース、鳳仙の不良達が鬼邪高を狙って足進めとるわ・・・!」

スパイク『はぁっ!?鳳仙が!?』

ハンター『戸亜留市の不良校でも特に厄介な連中が・・・どうする、シュラ?』

シュラ『確かに・・・あそこは殺し屋・鳳仙っていう名で呼ばれるくらいだから、仮に定時が出ていったとしても簡単に片付く相手じゃないだろうね』

スパイク『じゃあ、うちらも加勢するか!?』

リッスン「いやいや、鬼邪高もプライドの高い奴が多いから『男同士の喧嘩に手出しすんな!』言うて、邪魔者扱いされるのがオチやろ」

シュラ『だろうね・・・ただ、あいつらだったらどうするかな?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャドウ「・・・何?鳳仙が鬼邪高に侵攻しているだと!?」

この時シャドウは、シュラから鳳仙学園が鬼邪高に侵攻していることを電話で知らされていた。生徒会室にはさくらやゼロ、ツクヨミ達ラッパッパも集まり、揃ってその報せに驚いていた。

シュラ『うちんとこの駅の出口から、ハゲ軍団がわんさか出て来たのを見たらしいから間違いないよ。かなり殺気立ってるみたいけど・・・あと、リッスンからの続報で、鬼邪高側も全日の奴らが迎え撃つ気満々だってさ』

さくら「楓士雄さん達が・・・!?」

タイヨウ「確かに全日には、絶望団地出身の楓士雄に司・・・それから辻と芝マン、村山と互角に渡り合える轟だったり、個人でも実力の高い生徒が集まってるけど・・・」

ゼロ「でも相手は、一枚岩な団結力を誇る鳳仙・・・勝ち負けどころの話じゃなく、確実に無事じゃ済まないはずだよ」

ツル「でも、どうして鳳仙が鬼邪高を狙ってSWORDに来てるんですか・・・?」

シンガー「あいつら、こんな大変な時期に鳳仙と揉め事を起こしたわけじゃないよね?」

ウサギ「そんな・・・」

想定していた最悪の事態が早くも訪れてしまったことに、頭を悩ませるツル達。だが、通話中のシュラから次のように話が流れて来た。

シュラ『・・・でもさ、何か妙なんだよね』

シャドウ「妙・・・?何がだ?」

シュラ『目撃情報によると、番長の上田佐智雄を先頭に四天王もズラリと並んでんだけど・・・何故か1人足りないらしいんだよね、小沢仁志の沢担当が』

プリンセス「四天王が1人欠けてるっていうの?」

シュラ『それに鬼邪高と鳳仙って、最近あのレッドラムが出回ってたよね?同じ薬の被害に遭いかけた連中が喧嘩するなんて・・・これ、ただの偶然かな?』

シュラの推測を聞き、険しい表情で考え始める一行。するとツクヨミが、過去にマジ女で起こったあの事件を思い出した。

ツクヨミ「・・・まさか、あの時と同じように・・・!?」

さくら「菜緒・・・?」

ツクヨミ「先代のラッパッパ部長・ソルトさんを殺したのはヤクザじゃなく、当時のこの学園の校長だった。お姉ちゃん達はそれを知らずに、銀獅子会や海外マフィアとの抗争を続けて・・・もしあの時とケースが同じなら、その喧嘩は誰かに仕組まれたもの・・・!」

さくら「・・・!楓士雄さん達を止めなきゃ!」

タイヨウ「さ・・・さくらちゃん!?ツクヨミ!」

鬼邪高と鳳仙の激突は何者かに仕組まれたものだと考えたツクヨミとさくらは、咄嗟に双方を止めに行こうと生徒会室を出ていき、タイヨウとゼロもその後を追いかけた。

プリンセス「ちょっと、タイヨウまで・・・!?」

シャドウ「プリンセス、シンガー、ウサギ、お前達3人も後を追え!鳳仙との戦いで、鬼邪高の被害を少しでも喰い止めなければ・・・!」

ウサギ「う、うん・・・!」

シュラ『やっぱアンタら、頭で考えるより体動いた方が早いね・・・じゃ、一応報告はしといたから』

プリンセス達が先に出ていった4人の後を追いかけたのと同時に、シュラからの電話も途絶えた。残ったシャドウ達はその場で考え事を続けていた。

ミュゼ「本当に前の抗争と同じ展開なら・・・鬼邪高と鳳仙が争うよう仕向けたのは九龍かしら?」

シスター「ムゲンが解散するきっかけの事故を起こしたのも、九龍の人だったって話ですよね・・・?」

シャドウ「確かにレッドラムは元々、九龍が無名街の工場で生産させていたものだが・・・その工場がリトルアジアに移転している以上、九龍がレッドラムを利用して双方を潰し合いさせようとする線は薄い」

メンドウ「じゃあ、一体誰が・・・?」

シャドウ「本隊でなくとも奴らに関係する勢力の仕業とも考えられるが、直接聞き出してみる他ないか・・・ツル達は俺と一緒に鬼邪高に行き、もう少し情報を集めるぞ。ミュゼは山王にも協力を仰いでくれ」

3人「は、はいっ!」

ミュゼ「分かったわ・・・!」

ミュゼが山王連合会に協力を仰ぐよう連絡を繋ぐ中で、シャドウとツル達は鬼邪高校舎へ赴こうとする。間もなく鬼邪高と鳳仙の戦いが始まろうとする中、彼女達はその真相に辿り着けるのか――?

 

 

 

 

第17話へ続く