第15話 忍び寄る魔手 | 坂道&ジャンルマルチブログ

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現在の主な推しメンは遠藤さくら・賀喜遥香(乃木坂)、藤吉夏鈴・森田ひかる・山下瞳月(櫻坂)、小坂菜緒・正源司陽子(日向坂)です。

伝説のチーム・ムゲンの元メンバーだった九十九と、その強力なライバルである兄弟の三男・雨宮広斗の加勢により、MIGHTY WARRIORSの襲撃からスモーキーらRUDEBOYSを守り切ったさくら達。彼らが九龍と政府の癒着関係などが記録されたUSBのデータを公表したことと、今は秘密だが九龍を倒す別の方法を見出す為に動いていることが判明した中、鬼邪高校舎の体育館には多くの生徒達が集まっていた。楓士雄・司一派、轟と辻、芝マン、その他のグループなど、テッペンの座を懸けて争い合っていた全日制の面々である。すると辻や芝マンは、楓士雄・司一派の人数が今までより増えていることに気づいた。

辻「おい、楓士雄達のとこ人数増えてねえか?」

芝マン「楓士雄のいた中学に通ってた奴らが、まとめてあいつらに付いたんだろ」

轟「これ、全日の頭を決めろってことか・・・なあ、村山!?」

轟がその名を呼ぶと、上段のステージから定時の番長・村山が姿を現す。全日の生徒達をここに集めさせたのは、村山だったのである。

村山「もう轟ちゃん、何度も言ってるでしょ?<村山さん>だって!それに・・・今日はそんなことをさせる為に呼んだんじゃないの」

轟「あぁ・・・?」

村山「何かね、レッドラムがまた最近出回ってるらしいんだわ。それもうちの後輩に商人が入り込んでるらしいとか」

楓士雄「あれ?それって確か・・・」

司「お前に便所でコソコソしてたところを取っちめられた連中だ」

さくらとツクヨミ、タイヨウがコブラからの提案を伝えに来た後、楓士雄は便所で不穏な行動を取っていた1年の生徒達を捕まえていた。実は彼ら、ムゲンの手で無名街にあった工場が破壊されたことで、暫らくSWORDに出回っていなかったはずのドラッグ・レッドラムを売り買いしていたのである。楓士雄と司が1年を問い詰めていたところを偶然目撃し、レッドラムが再び鬼邪高に売られていると知った村山は、全日の生徒達に向かってスプレーの空き缶を投げつけて威嚇する。

村山「・・・誰だ?うちはドラッグ一切禁止だから、殺すよ?」

村山の目は本気だった。かつては成り上がりたいと思っていた九龍の一角・家村会に、ドラッグに手を付けたことで幻滅する程である。すると、犯人の一部を問い詰めていた司がさらなる情報を打ち明けた。

司「・・・話によると、そいつが捌かれているのはうちだけじゃないらしい」

村山「・・・えっ?そうなの?」

司「ああ。鳳仙の方でも出回っている・・・とか」

轟「・・・鳳仙?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、マジ女の生徒会室でも同じ話題が展開されていた。いつの間にかマジ女生徒達にもレッドラムが売り捌かれており、それが鳳仙学園の周りでも確認されていると話されていたのだが、さくら達は鳳仙のことをよく知らないでいた。

さくら「鳳仙学園・・・って、何ですか?」

シャドウ「SWORDに隣接する地区の1つとして、戸亜留市という街がある。そこに並ぶ多くの不良校の中でも、最強の勢力を誇っているのが鳳仙だ」

ミュゼ「あそこに通っている生徒は殆どがスキンヘッド・・・喧嘩をする際には一枚岩な団結力を見せつけて、相手側を容赦なく叩き潰す。まさに<殺しの軍団>という異名に相応しい強さ、恐ろしさを兼ね揃えているわ」

タイヨウ「私も少し前に、鳳仙の噂を聞いたことがある。昔からその街で強いと言われてたけど、特に今は歴代最強のレベルかもしれないって・・・そのスキンヘッドの生徒達を束ねてるのが、<小沢仁志>」

シスター・メンドウ「小沢仁志っ!?」

ツル「も、もしかして・・・あの強面のベテラン俳優・・・!?」

ゼロ「んなわけないでしょ。ラッパッパみたいに、そこで四天王の座を張ってる連中の名称がそれってこと」

ツル、シスター、メンドウの3人はゼロのツッコミにホッとした。同じように驚愕していたモデルとプッシュ、他の四天王も思わずコケる動作をしていた。

ミュゼ「小田島有剣、沢村正次、仁川英明、志田健三・・・この4人の頭文字を取って、小沢仁志と名付けられているの」

モデル「ネーミングのチョイスに問題があるでしょ・・・!」

プッシュ「つうかSWORDといい、この辺りだと頭文字を集めた名称が流行ってんのか?」

シャドウ「だが、それだけじゃない。その四天王すらも従えて頂点に立つ番長が、鳳仙にはいる」

プリンセス「その小沢仁志よりも強い奴がいるっていうの?」

シンガー「プリンセス、言い方がややこしいって・・・」

ウサギ「それで、どんな人なの・・・?」

シャドウ「番長の名は上田佐智雄・・・沢村正次とは中学時代からの親友で、仁川英明とは頭の座を競った仲でもある。そこに策士タイプの小田島有剣と一番の武闘派である志田健三が加わり、彼らを中心に歴代最強の鳳仙が生まれた・・・というわけだ」

ミュゼ「今は周辺の不良校と休戦協定を結んで、大人しくしているって話だけれどね」

ツクヨミ「休戦協定・・・あまり争い事は好まないというの?」

シャドウ「部下が問題を起こした時には、自らが1人で詫びを入れて事態を収束させるなど、頭としてのけじめのつけ方を心得ている。だが仲間に危害が加えられた時、場合によっては全戦力をもって相手に報復する・・・それが上田佐智雄と鳳仙だ」

ゼロ「敢えてここでその名を出したのは、なるべくそいつらとは揉め事を起こさないよう注意しろってことでしょ?」

シャドウ「そうだ。特に無名街が燃やされ、各チームも襲撃を受けているこの状況でそんな事態が起これば・・・SWORDはますます混沌と化していくだろう」

現状で鳳仙と対峙するような事態になれば、マジ女は勿論、SWORDもただでは済まない・・・ツクヨミ達は彼らとの接触を避けるよう心掛け、さくらも仲間達の居場所を守ることにより強い思いを抱いていた。

さくら(マジ女だけじゃない・・・SWORDの人達の居場所も、守らなきゃいけないんだ。スモーキーさんも、コブラさん達も・・・楓士雄さん達のことも)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楓士雄「ふ~ん、まさに最強ってわけね・・・いいね~!」

同じ頃、鬼邪高でも今の鳳仙の強さ、恐ろしさが語られていた。全日の生徒達がざわつく中、楓士雄だけは満面の笑みで興味を持っていた。

村山「・・・まあ、他所はどうでもいいや。てなわけで薬、一切駄目だから。全日は全日でちゃんと片を付けるように・・・定時からは以上」

そう言って、村山はステージから降りて体育館を出ようとする。何度か留年を繰り返している定時と違い、全日はまだ10代の学生達・・・故に『SWORDの一大事に全日は巻き込まない』という考えを抱いていた村山は、今の言葉で定時と全日の距離を置こうとしていた。

楓士雄「・・・ちょっと待って、ムラッチ!」

一同「ムラッチ!?」

その時、楓士雄が村山をニックネームで呼び止め、全日の生徒達が揃って唖然とした。一方村山は表情を変えることなく、楓士雄に振り向いた。

楓士雄「俺が全日のテッペン獲ったら・・・タイマン張ってくれますか?」

村山「おぉ~、ハハハ・・・」

堂々とタイマン勝負を申し出る楓士雄に対し、村山はあっかんべーと返す。だが村山が何かを伝えるように楓士雄を指差すと、彼もまた笑みを浮かべていた。村山は楓士雄を面白い奴だと思いながら、そのまま体育館を出ていった。

司「・・・直球で言ったな、楓士雄」

楓士雄「おうよ。ムラッチとタイマン張れるなんて面白い機会、ドロッキーだけに独り占めされたくねえしな」

辻「・・・は?ドロッキー?何だそれ?」

楓士雄「いやいや、お前らの大将だよ?」

芝マン「楓士雄!テメエ、馬鹿にしてんじゃねえぞ・・・?」

子供のようにじゃれあいをする楓士雄達を余所に、轟は黙り込んでいた。ただ、鬼邪高の首を狙っていたマジ女の生徒だけでなく、村山に対してまで正面から向き合える楓士雄を見ながら、轟は村山が自分に言った言葉の意味をずっと考えるのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その夜、鳳仙四天王・小沢仁志の1人である沢村正次は、何人かの部下を連れて戸亜留市とSWORDの境の街を歩いていた。番長・上田佐智雄が<七森工業>との揉め事の件で詫びを入れ、事態が収束し再び休戦協定が結ばれたことを一行が喜んでいると、その前に黒の学ランとバンダナで顔を隠した男達が立っていた。

沢村「・・・何だ、お前ら?」

???「・・・鬼邪高のもんだ」

沢村「鬼邪高・・・?」

???「お前らがいると仕事にならないんだよ・・・消えてくんねえかな!?」

片手に鉄パイプやバットなどの武器を持っていた男の群れは、突然沢村達に襲い掛かる。沢村達もこれを迎え撃つが、後ろから同じ学ランを着た別の群れが加わり、一方的な暴行を加えてくる。

沢村「・・・!?おいっ!」

いくら戸亜留市で最強と謳われる鳳仙といえど、この時は流石に数が少なかった。故に鬼邪高の生徒を名乗る男達の攻撃になすすべなく傷つけられていく。これに怒りを覚えた沢村は武器による暴行を受け流しつつ、次々と男達を殴り倒していく。

???「チッ、何をもたもたしてやがる・・・!」

ここで群れのリーダーらしき男が、沢村の背後から金属バットを叩き込んだ。リーダーの攻撃を受けながらも下っ端を蹴散らす沢村だが、ついに2度目のバットを喰らい膝をついてしまう。そのままリーダーの男が沢村を取り押さえようとし、沢村も必死に抵抗するが、沢村は男の顔を隠していたバンダナを剥がすと目を丸くした。

沢村「お前・・・!?」

平井「へへ・・・相手を見て喧嘩売らねえと怪我するぜ、坊ちゃんよ?」

その男は鬼邪高の生徒ではなく、湾岸地区を活動拠点とする極悪なスカウト集団・DOUBTの幹部である平井だった。沢村はドラッグ売買の悪事に絡まれていた佐智雄の妹を見守る中で、再び彼女を捕らえようとするDOUBTと対峙したのだが、その際に手こずった下っ端達を車で連れ帰ったのも平井で、沢村は彼の顔を覚えていたのである。

平井「オラ!そいつを捕まえろ!」

沢村「うお・・・っ!?」

平井の指示で、鬼邪高生徒に扮していたDOUBTの下っ端達は、大きめの布を被せて沢村を捕らえる。そしてその状態のまま、武器を振り下ろして激しい暴行を加えた。

「仁川さん!あれ、うちの奴らじゃ・・・!?」

仁川「・・・!何してんだコラァァァッ!?」

平井「あん?増援かよ・・・オメエらずらかるぞ!」

そこに同じ四天王の仁川、小田島を含めた鳳仙の仲間達が偶然通りかかり、平井率いるDOUBTの一団は足早に去っていった。しかし時既に遅く、暴行を受けた生徒達は鳳仙の制服を盗られたまま気を失っており、仁川に布を剥がされた沢村は頭から血を流して倒れていた。

小田島「おーい、沢村?沢村!?・・・おい救急車ぁぁぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、SWORD地区の南西に位置するとある鉄火場――そこは、赤い法被を羽織った大人数の男達に仕切られていた。彼らこそがSWORDの一角たる最後のチーム<達磨一家>である。

???「・・・へへっ、大盛況じゃねえか」

闘鶏や花札、賭博などによって鉄火場は賑わっていた。そう語るのは赤髪が特徴の達磨一家幹部・加藤鷲である。

加藤「まあしかし、捕まったかと思った九龍の頭が釈放されちまったし、ここらへんもまたどうなるか分かんねえがな・・・って、おい?聞いてんのか日向?」

独り言ではなく、後ろにいる人物に話しかけていた加藤。その後ろで肘を着きながら眠っていた青年は、かつて九龍の傘下組織として活動していた日向兄弟の四男にして、達磨一家を率いる頭・日向紀久であった。

加藤「ったく、いつも急に寝ちまいやがるんだからよ・・・?」

自分達がこの鉄火場を仕切っているにも関わらず、頭である日向がいつも不意に寝てしまうことを愚痴る加藤だが、そんな彼の目に荒々しい男達が花札の台を引っ繰り返している様子が映った。

加藤「おーい!観客の前で何してやがんだ?」

「あぁ?お前ら誰に許可貰ってここで賭場開いてんだ?」

加藤「あぁん?文句あんならやるぞコラァ?」

男の1人の胸ぐらを掴みながら脅しをかける加藤。しかし、今度は別の賭場で騒ぎが起こり始めていた。

加藤「チッ、今度は何だ!?」

加藤がクレームを付けにきた男達を部下に任せ、騒ぎのする方向へ足を進めると、そこでは毛皮のコートを着た男が達磨のメンバー達を圧倒していたのだ。

???「・・・雑魚に用はねえ」

加藤「あぁん?テメエは・・・」

???「・・・待て」

声のした方向に一同が振り向くと、達磨の頭である日向紀久が起きており、騒ぎの原因の男を見て笑っていた。そして毛皮のコートの男も日向を見て、捕まえていた部下達を離す。

日向「・・・出てきやがったか、蘭丸」

加藤「蘭丸?まさかこいつがDOUBTの頭って奴か?」

日向「・・・そいつを通せ。俺がサシで話す」

毛皮のコートの男の正体は、SWORD各地に襲撃を繰り返しているDOUBTの創設者・蘭丸だった。彼と日向は奥の部屋に足を踏み入れ、日向はキセルを吸いながら会話し始めた。

日向「・・・お前と顔を合わせるのは羅千以来か」

蘭丸「日向・・・お前、外出たら九龍やるんじゃなかったのか?」

日向紀久は、四兄弟の中でも特に喧嘩強く、非常に好戦的な性格だったが故に九龍からも警戒され、羅千地区の刑務所に隔離されていた。蘭丸とはそこで知り合っており、後に日向会がムゲンに敗れて破門されたと聞いた日向は、ムゲンと九龍への復讐心を抱き始めた。しかし総長・琥珀との戦いの最中に、九龍はムゲンを潰す為に日向会を餌にするつもりだったことを知り、自分達に親友の龍也を殺されたと思い込んでいた琥珀と彼を止めようとするコブラ達の姿を見た影響か、日向は九龍に対する敵対心は変わらずも以前より落ち着いた風格を醸し出していた。

蘭丸「丸くなったもんだな・・・お前、本当に日向か?」

日向「・・・誰がやらねえっつった?」

蘭丸「・・・なら、俺と組め」

日向「は・・・?」

蘭丸「まずはうちのケツを持ってる家村会を潰して次に本隊を叩く。まあ、その前に余興があるがな・・・」

日向「・・・Rascalsか」

蘭丸「分かってんなら話が早え・・・黒白堂でケリをつける、境界線なんぞ次で終いだ」

日向「おい。その為に俺達には手を出さねえでいたんだろうが・・・他の連中に邪魔されるとは思わねえのか?」

蘭丸「そいつらにはとっくに駒を用意してる・・・お前は余計な心配をしねえで、ただ俺達と組みゃあいい」

そう言って、蘭丸は達磨が仕切る鉄火場から出ていった。彼とすれ違うように、話を密かに聞いていた加藤が部屋に踏み入った。

加藤「・・・どうすんだよ。仮にDOUBTと手ぇ組んでRascalsを潰しても、それこそ九龍に付け入る隙を与えちまうかもしんねえぞ?」

日向「SWORDの均衡を造ったとはいえ、俺達はハナからつるむようなダチじゃねえ・・・だから他の連中がどうなろうがあんま知ったこっちゃねえし、それで九龍が出てくんなら都合がいい。蘭丸の野郎も、SWORDの祭りの為に俺らに話を通したわけだしな」

加藤「で・・・結局はどうすんだ?」

日向「ハッ・・・決まってんだろ」

RascalsとDOUBTの決戦の前に、不敵な笑みを浮かべる日向。SWORDで様々な騒乱が巻き起こる中、唯一被害の少ない達磨一家は果たしてどう動くのか――?

 

 

 

 

第16話へ続く