無名街が爆破されたRUDEBOYSを助ける為に、湾岸地区のコンテナ街でDOUBTと戦うさくらやツクヨミ達。だが敵の一団には、MIGHTY WARRIORSというチームと謎の男・源治が加担しており、青龍刀を駆使する劉の猛攻でスモーキーが負傷してしまう。さくら達も苦戦を強いられ絶体絶命の状況の最中、突如大型バイクに乗って走る1人の青年が姿を現した。黒いジャケットに左耳のイヤリングという風貌の青年を見て、タイヨウやゼロは動揺していた。
タイヨウ「なんで・・・こんなところに・・・!?」
ツル「だ、誰なんですか・・・?」
ゼロ「雨宮広斗・・・<雨宮兄弟>の三男・・・!」
シスター「雨宮、兄弟・・・?」
タイヨウ「今まで喧嘩を売ってきたギャングが皆、返り討ちにされてきた伝説の兄弟・・・100人を超えた時代のムゲンですら、彼らを屈服させることはできなかった」
メンドウ「あの伝説のチームが・・・!?」
ゼロ「でも、一度ムゲンと争ってから暫くその姿は見られなかった・・・それが今になって、何でまた・・・?」
劉「これはこれは・・・意外な大物まで釣れましたね」
劉はDOUBTに指示し、下っ端達が標的を雨宮広斗に変えて襲い掛かる。だが、冷静にサングラスをジャケットのポケットにゆっくりしまっていた広斗は、敵の攻撃をかわしながら素早く拳を連続で打ち込み、DOUBTを返り討ちにしていく。1人、また1人と、彼に挑む下っ端は必ず地に伏せる。ここで劉が青龍刀を構えて広斗に斬り込むが、広斗は振り下ろされる刃を受け流しつつ、隙を狙って劉を殴りつけた。
さくら「・・・!あの人、強い・・・」
タイヨウ「<ゼロレンジコンバット>、銃剣を用いた相手に対しても有効な戦い方・・・あれが雨宮兄弟の強さの理由」
脅威的な強さを見せつける雨宮広斗に、さくら達は視線を釘付けにされていた。しかし、広斗の追撃を劉が剣を振って回避すると、先ほどまでツクヨミとタイヨウを圧倒していた肌黒の男が突然殴り掛かり、広斗のガードを崩してしまう。
広斗「・・・っ!」
さらに男が殴り掛かろうとすると、広斗は同時にラリアットを繰り出して男の腕を受け止め、さらに肘打ちで男の頬を殴り返した。それでも男は然程苦痛を感じておらず、首を回して余裕の笑みを浮かべていた。
???「・・・噂ほどでもねえな」
広斗「面白えな、オメエら・・・」
広斗も最上の獲物を見つけたかのように、劉や肌黒の男を鋭い目つきで睨む。その時、どこからか1台のジープ車が突っ込み、中には撤退していた筈のタケシとピー、そして口元に髭を生やした男が乗っていた。
タケシ「スモーキー、大丈夫か!?」
スモーキー「ぐ、う・・・っ」
???「早くそいつを乗せろ!」
ピー「分かってる・・・!」
タケシとピーは負傷したスモーキーを抱えてジープに乗り込み、男が運転してその場を去ろうとする。タイヨウはその時、ジープを運転していた男に対しても見覚えのある予感を抱いていた。
タイヨウ「あの人・・・!?」
ツクヨミ「タイヨウ、私達も・・・っ」
タイヨウ「!う、うん・・・さくらちゃん、ゼロ!」
源治「・・・!」
ツクヨミとタイヨウ、ツル達はジープの後を追おうとする。源治やDOUBTがそれを阻もうとするが、そこにRUDEのメンバー達がバイクで攪乱し、さくらとゼロも源治を押し退けて走り去る。
広斗「・・・お前の顔は覚えたからな」
そして広斗も大型バイクに跨り、同じ方向へと飛ばしていく。DOUBTが持っていた鉄パイプを投げるなどの悪あがきをする中、劉は終始落ち着いた態度を見せていた。
劉「・・・ICE、ここまでだ」
ICE「いいのか・・・?」
劉「RUDEのリーダーに傷を負わせただけでも今は十分・・・他の連中はまだいくらでも打つ手がある」
ICE「・・・OK」
ICEという肌黒の男は、広斗に再戦の約束を申し付けられたことに笑いながら、劉と共に歩いて帰っていく。源治もさくら達が撤退した方向を凝視しながら、何処へと姿を消した・・・
DOUBTの一団とMIGHTY WARRIORSの追撃から逃れたさくら達は、RUDEと共に無名街の隠れ家に着いていた。そこにはジープを運転していた男の姿もあり、さらに彼らの窮地を救った雨宮広斗も顔を出す。
ユウ「・・・おい、スモーキーは?」
広斗「心配はいらねえ。あれくらいの傷、オッサンがどうにか直してくれる」
???「オメエがアル中の闇医者と知り合いだなんて初耳だったけどな」
男の言葉に広斗は鼻で笑った。さくら達はスモーキーが助かりそうで安堵したが、ゼロやタイヨウは広斗達の介入に大きな疑問を抱いていた。
ゼロ「雨宮広斗・・・何でアンタがこんなところに?しかも、まさかムゲンのメンバーだった九十九と一緒だなんて・・・」
ツル「えっ!?この人がムゲンの・・・!」
さくら「コブラさん達が話してた、九十九さんっていう・・・」
九十九「・・・?何だ、お前らコブラ達と会ってんのか」
煙草を吸っていた髭の男が、ムゲンを解散させた琥珀と共に姿を消した筈の九十九だと知り、さくら達。今度はタイヨウが九十九と広斗に問いかける。
タイヨウ「・・・貴方達2人は、前に喧嘩した時に決着がつかなかった敵同士・・・それがどうして、一緒に行動したりしてるんですか?」
九十九「・・・九龍を潰す為だよ」
ツクヨミ「九龍を・・・?」
シスター「で、でも!九龍のトップだった人はこの前逮捕されたはずじゃ・・・」
九十九「ああ・・・それもさっきのニュースで釈放されちまったらしい」
メンドウ「釈放!?どうして・・・」
タケシ「カジノ計画の為に、政府と癒着していたことがバレたんじゃねえのか・・・!?」
ツクヨミ「政府が警察に圧力をかけて、情報の一切を隠した・・・お姉ちゃん達が死んだあの抗争を偽ったように・・・!」
九龍の総裁・九世龍心が釈放されたことを知って、ツクヨミはおたべら先代のマジ女生徒達が死んだ抗争の内容がネットや新聞の記事で偽られていた時を思い出し、静かに怒りを募らせていた。すると広斗の口から、衝撃の事実が語られる。
広斗「・・・九龍と政府の癒着をバラしたのは、俺達だ」
さくら「えっ・・・!?」
九十九「連中が隠し持ってたUSBメモリ・・・そいつには、カジノ計画に賛成した大企業の偉い奴や警察、政治関係者に莫大な利益が集まること、計画を表向きに法案で可決する為に不当な地上げを行ったことだったりと、今までの連中の違法行為が記録されてたんだよ」
広斗「そしてそいつを奪ったのが、俺達の兄貴・・・雨宮尊龍」
ゼロ「雨宮兄弟の長男が・・・!?」
ツル「それって、どういうことなんですか・・・?」
広斗「・・・俺達の両親も、九龍の地上げで多額の借金を抱えたまま殺された・・・兄貴はその復讐の為に、上園会に潜入してやがったんだ」
ピー「雨宮の家も、九龍の奴らに・・・?」
広斗「USBの存在を知った兄貴は、弁護士の親父さんから託された娘と接触して、そいつを持ち帰った。その後に偽物を作って上園を誘き寄せようとした兄貴は、途中で割り込んできた俺達を守ろうと、最期は上園の側近を何人も道連れにして死んだ・・・」
タイヨウ「そんなことが・・・」
九十九「・・・で、兄貴と親を失った雨宮と龍也さんを殺された俺や琥珀さんの利害が一致して、本物のUSBの中身を公表する動きを今までしてたってわけだ」
ツクヨミ「・・・貴方達も、大切な人の為に・・・」
コブラの推測通り、九龍の不正を暴くべく行動していた琥珀と九十九、雨宮兄弟。それが大切な者の命を奪われたけじめの為だと、ツクヨミは感じ入っていた。
ゼロ「・・・けど、これからどうすんの?九龍の不正を暴いたってのに、政府が隠蔽して総裁が釈放されたんじゃ意味がない」
九十九「・・・あいつらを潰すには、USBの情報だけじゃ足りないんだとよ」
タイヨウ「足りないって・・・?」
広斗「悪いがこれ以上はまだ教えられねえ。下手にしゃべって連中に気づかれでもしたらお終いだ・・・ただ、あいつは絶対に死なせるわけにはいかねえ」
タケシ「スモーキーを・・・?」
九十九「まあ、話すのは琥珀さん達が戻ってからだ。それまでの間、俺達もここに残ってスモーキーを見張ってるよ」
ピー「そうか・・・助かる」
九十九「つうわけだ・・・お前ら、俺達が無名街にいることもコブラ達には内緒にしといてくれ」
さくら「あ・・・はい」
広斗と九十九が無名街に身を隠していることを、他のSWORDチームには言わないと約束するさくら達。無名街から出るまでの間も、彼女達は小声で会話していた。
メンドウ「それにしても、この街で伝説って言われてた人達がSWORDに味方してくれるなんて・・・」
シスター「USBだけじゃ足りないって言ってたけど・・・九龍をやっつける方法はまだあるってことだよね?」
ツル「その為に、スモーキーさんを死なせるわけにはいかないって・・・どういう意味なんだろう?」
ゼロ「・・・スモーキーに関しては、私達もまだ知らないことがある」
タイヨウ「彼の病気のこと・・・?」
ゼロ「元からそうだったのか、それともこの街で成長してからなのか・・・どっちにしろ、スモーキーの体が耐えられればいいけど」
ツクヨミ「・・・MIGHTYもその内、また手を出してくると思う」
さくら「菜緒・・・?」
ツクヨミ「Change or Die・・・『変わるか、それとも死ぬか?』。彼らもきっと、この街にカジノを建てることを望んでるはず・・・いつかまた、彼らと戦う時が来るかもしれない」
さくら「・・・守らなきゃ、ね。この街を・・・皆の居場所を、私達で」
ツクヨミ「・・・うん」
新たな敵・MIGHTY WARRIORSと、未だにその脅威が潰えない九龍・・・2つの強敵の存在を感じつつも、さくらやツクヨミ達の大切な居場所を守りたいという思いは変わらなかった――
一方、WhiteRascalsの活動拠点であるクラブHEAVEN――鬼邪高や山王、RUDEと同じく、DOUBTやMIGHTYの襲撃を受けた店は、チームのリーダーであるROCKYの判断で、暫らく閉じることになった。そんな矢先、ROCKYと共にチームを立ち上げたメンバーの1人であるKIZZYが声をかける。
KIZZY「・・・ROCKY、山王のコブラが顔を見せに来たわよ」
オネエ口調で話すKIZZYの言葉を聞いたROCKYが顔を向けると、山王連合会を率いるコブラが、荒らされた店の様子を確認しにやってきていた。
コブラ「・・・店、畳むのか?」
ROCKY「ああ・・・DOUBTや九龍の件が片付くまでな。女に危険が及ぶ」
コブラ「DOUBTの奴ら、また最近になって動きが活発化してきやがった・・・前からDOUBTとやり合ってたお前なら、何か知ってるんじゃねえのか?」
ムゲン在籍時に鎮圧したはずのDOUBTの動きが活発化してきたことに、何かあると踏むコブラ。そんな彼にROCKYはある情報を明かした。
ROCKY「・・・蘭丸が戻って来た」
コブラ「蘭丸・・・?」
ROCKY「お前も<黒白堂駅>で見ただろう。DOUBTの創設者でもある蘭丸は、誰もが躊躇する一線を簡単に踏み越えちまうような奴だ・・・金と力以外何も信用せず、暴力で他人を傷つけることに快感を覚える、手段は一切選ばない・・・あいつのやり方は常軌を逸している」
コブラ「その狂気さ故に、警察も動かざるを得ない事態になった・・・俺達やRascalsが前にやり合った時は、奴が警察に取り押さえられて収束したんだったな」
ROCKY「だがあいつが戻って来たのなら、必ずまた同じことが起きる・・・俺らが女を守る為にも、それだけは避けなきゃならねえ」
コブラ「また蘭丸とやるつもりか・・・?」
ROCKY「DOUBTはうちが片づける。奴らにさらわれた女も助けなきゃならねえ・・・お前らに手伝ってもらう必要はない」
コブラ「やれんのか?お前らだって、連中にやられた傷がまだ癒えてねえだろうに・・・」
ROCKY「自分で立てる内は・・・自分の足で立つべきだ」
自分達と信条の異なるDOUBTだけは、Rascalsだけで決着をつけたい・・・チームが万全でなくとも、一刻も早く蘭丸を止めたいというROCKYの強い意志に、コブラは感心していた。
コブラ「・・・分かった。なら、DOUBTの件はお前らに任せる」
ROCKY「・・・悪いな」
コブラ「ただ・・・立てなくなったらいつでも呼べよ」
そう言って、コブラはクラブHEAVENを後にする。自分達の信条を知りつつも、同じ街に住む仲間として見捨てようとはしない・・・そんなコブラの思いやりにROCKYは無言を貫くも、それを心の奥底で受け止めていた・・・
「FUNK JUNGLE!FUNK JUNGLE!」
ICE「俺らのKingdom・・・!」
「夜!屋!邪!揶!!」
ICE「これがMIGHTY WARRIORS!!」
同じ頃、コンテナ街の戦いから帰還したICEは、同じMIGHTY WARRIORSのメンバー達と共に自身のクラブ・FUNK JUNGLEで音楽ライブを行っていた。クラブに集まった観客達は彼らのパフォーマンスに大きく盛り上がっている。その様子をカウンターで飲みながら見ていたのは、ICE達の仲間である劉と、九龍のカジノ計画に賛同している組織・クライシス財閥を仕切る暗石舞衣だった。
暗石「・・・なかなか景気が良いですね、この店は」
劉「ここにいる皆は、音楽とファッションの存在に救われた同士の集まり・・・彼らの音楽を世に広めていく為には、それなりに大金も必要です。だからこそ、SWORDを再開発しカジノを建設する計画は彼らにとっても理想の1つであるわけです」
暗石「なるほど・・・総裁の実の息子である貴方が、彼らに接触したのはその為だと」
劉「ええ・・・まあ、悪くはありませんよ。ここの居心地もね」
実は劉の正体は、先に発信されたニュースで証拠不十分として釈放された九龍グループの総裁・九世龍心の息子にして、本家直属の暗殺者だった。物静かな性格の一方でギャンブルにも精通している彼は、音楽とファッションの力で自分達と同じ境遇の人間を救うことを望むICE達に接触し、MIGHTY WARRIORSとして資金を稼ぐ仕事を担っていた。ちなみにICE達も、劉の事情は承知の上で九龍に手を貸しているらしい。
暗石「・・・ところで、彼らの方は野放しにしておいて構わないのですか?」
劉「彼ら・・・とは?」
暗石「DOUBTの事です。今回は金の交渉と、SWORDの一角を崩す目的で一時的に手を組んだわけですが・・・<羅千刑務所>に収監されていた創設者が外に出た以上、再び単独で動き出す可能性もあるでしょう。或いは・・・貴方方の首を狙っているかも」
劉「ご心配なく・・・あの程度のクズの集まり、こちらが手を出せばすぐに鎮圧できます。勝手にSWORD侵攻に乗り出したとしても、彼らだけでは到底太刀打ちできないでしょう」
暗石「そうですか・・・ただ、彼らが<リトルアジア>に移転した工場を介して、再びレッドラムを捌いているという話も聞きます。何でもSWORDだけでなく、戸亜留市などの隣接地区でも出回っているとか・・・」
劉「戸亜留市?なるほど・・・それは興味深い話ですね」
戸亜留市にレッドラムが出回っているという話に、不敵な笑みを浮かべる劉と暗石。間もなくこの一件が、SWORDに新たな騒乱を招こうとしていた――
第15話へ続く