第13話 闇の胎動 | 坂道&ジャンルマルチブログ

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現在の主な推しメンは遠藤さくら・賀喜遥香(乃木坂)、藤吉夏鈴・森田ひかる・山下瞳月(櫻坂)、小坂菜緒・正源司陽子(日向坂)です。

さくらとツクヨミ達が山王街や鬼邪高へ赴き、SWORDの混乱を防ぐための共同戦線を張ろうとしていたその頃、生徒会のシャドウとミュゼは街中でとある人物と接触していた。

???「・・・聞きましたよ、此間の捨照護路との喧嘩に割り込んで派手に暴れたって。流石・・・あの前田敦子と高橋みなみの弟子は違うっすね」

シャドウ「俺はただ、奴らの奴隷として操られていた激尾古のことも見過ごせなかっただけだ・・・それよりネズミさん。九龍がカジノ計画の為に政府と癒着していたのが公表された件で、何か分かったことはあるか?」

シャドウが伝説の世代と称される前田敦子、高橋みなみに育てられたと語るその人物は、常にフードを被ったネズミという若い女性。彼女もまた、かつてマジ女で<つの字連合>を結成しテッペンの座を狙っていた生徒の1人で、卒業後は情報屋として生活していた。

ネズミ「それなんすけど・・・あの時ネットに拡散された情報は全部、元々九龍が持ってた1つのUSBメモリにデータ化されてたものらしいんす」

ミュゼ「USB・・・?」

ネズミ「前に付近の地区を行ったり来たりしてた弁護士がそれを持ってたらしく、上園会という九龍の新参者がその人を殺して回収したと思われたんすが・・・実は上園が回収したUSBはフェイクで、本物はまた別の人間の手に渡り、連中の追撃をかわして公表したらしいんす」

シャドウ「九龍の追撃をかわせる程の人間か・・・何者だ?」

ミュゼ「日向会を潰したムゲンは解散して、総長・琥珀の話もここ最近は聞いてない・・・仮に山王のメンバーが持っていたとしたら、今頃九龍がSWORDにも手を出してた筈よ」

ネズミ「残念ですが、あっしもそこんところはまだ分かってません・・・それと、一応アンタらの耳に入れておきたい情報がもう1個ありまして」

シャドウ「・・・何だ?」

ネズミ「ここ最近、夜中にギャングやヤクザ組織の人間が死亡してる事件が多発してるんす。被害者は皆、この前の抗争で潰れた組の生き残りや、九龍と敵対していた者ばかり・・・しかも、一部は凶器で殴られたり刺された跡も無くやられてるらしいんすよ」

ミュゼ「凶器を使うことなく殺害、ですって・・・!?」

ネズミ「どう考えても同業の人間ができる犯行じゃないっすよね。想像するなら、かなりの手練れの暗殺者か・・・」

シャドウ「こっちも今朝、見慣れない連中の襲撃を受けた。見た目は俺達よりも少し大人びた女の集まりで、ラッパッパも苦戦する程の強さだったらしいが・・・」

シャドウの話を聞いたネズミは、ふと考え込む表情を作った。それを不思議に思ったミュゼが彼女に問いかける。

ミュゼ「・・・何か心当たりがあるんですか?」

ネズミ「うーん・・・ちょいと昔、収監されてた幼い女の囚人達を腕の優れた暗殺者として育てようとした施設のことを思い出しまして」

シャドウ「待て。その計画も脱走した囚人が機密情報を公表して、施設は既に廃棄処分とされている筈だ」

ネズミ「ええ・・・だから、まさかとは思うんすけどね・・・」

夜中に繰り返されている犯行に、とある施設が関係していると推測するシャドウ、ミュゼ、ネズミ。だがその時、どこからか強い衝撃音が響き、3人は辺りを見回した。

ミュゼ「何、今の音は・・・!?」

ネズミ「・・・!あっちで黒い煙が上がってるっす!」

シャドウ「あの方角・・・無名街か!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RUDEBOYSの住処である無名街を襲った爆発事故・・・その被害は余りにも大きく、さくらやゼロ達、ツクヨミとタイヨウが状況を確認しに行ったのは、火の手が大方弱まった翌日のことだった。

ツル「・・・っ、酷い・・・」

メンドウ「建物が焼け落ちてたり、街の人達が・・・」

シスター「皆・・・泣いてる・・・」

タイヨウ「ここで住んでる人達は皆、名前を失くして身寄りがない人ばかり・・・RUDEはそれを家族として受け入れてきた。血が繋がってなくても、この街で何年も同じ時間を過ごしてきたからこそ・・・その人達の死に、皆悲しんでるんだと思う」

ツクヨミ(・・・血の繋がっていない家族、か・・・)

ツクヨミは一人ぼっちで生きてきたのをおたべに拾われ、さくらもまた幼き頃に親を亡くし、ツクヨミと出会った・・・この無名街の住民達は、自分達と同じ境遇にいたのだと、ツクヨミとさくらが感じていたその時、右の方向から彼女達に声をかける者達がやってきた。

???「・・・お前ら!」

さくら「!山王の・・・」

やってきたのは、山王連合会のヤマトとノボル。彼らも無名街の惨状を探りに来ようと足を踏み入れていたのである。

ノボル「鬼邪高とRascals、山王が襲撃を受けた時、RUDEには何も無かったが・・・まさか爆薬を仕込んでいたとは」

ヤマト「どこのどいつがこんな真似しやがったんだよ・・・!?」

無名街を燃やすという愚行に怒りを抱くマジ女や山王のメンバー達。すると、ゼロがあるものを見て呟く。

ゼロ「・・・Change or Die?」

さくら「ゼロ・・・?」

ゼロが指を差した方向にさくら達が視線を向けると、そこにはRUDEの旗が赤い文字で落書きされた状態で落ちていた。

ノボル「あれは・・・確か<MIGHTY WARRIORS>の?」

ツル「MIGHTY WARRIORS・・・?」

ノボル「SWORDに隣接する<湾岸地区>を拠点に活動しているチームで、普段は<FUNK JUNGLE>というクラブ店で音楽ライブをやっていると聞く。ただ、噂によるとメンバーの何人かは軍の傭兵を経験していたことがあるらしい」

ヤマト「喧嘩のスペシャリストでもあるってわけか」

ノボル「・・・でも、彼らがメディアに発信しているメッセージが何でこんなところに?」

湾岸地区のクラブ店でライブをやっているチームのメッセージが何故書かれているのか、疑問に思ったノボル。だが、ツクヨミが言葉の意味を呟いた瞬間、その真意に気づいた。

ツクヨミ「変わるか、それとも死ぬか・・・!まさか・・・」

タイヨウ「ツクヨミ・・・?」

ツクヨミ「ねえ、RUDEは?」

ノボル「?そういえば、メンバーの1人も姿が見当たらないが・・・」

ツクヨミ「くっ・・・!」

さくら「な、菜緒!?」

ヤマト「あっ、おい!お前ら!?」

突然走り出したツクヨミを追いかけるさくら達。呼び止めようとするも聞く耳を持たれなかったヤマトとノボルは、引き続き街の状況を見回るのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、SWORDに隣接する湾岸地区――そこは、大きなコンテナがいくつも並び置かれていた。そんなコンテナ街に緑色のファッションで統一した軍団が忍び寄っていた。彼らこそ無名街の<守護神>と称されるRUDEBOYS。リーダーのスモーキーを筆頭に、タケシ、ピー、ユウといった仲間達が、無名街を燃やした犯人に報復しようと動いていたのである。すると彼らの目の前に、カジュアルなスーツに身を包んだ1人の青年の姿が映った。

タケシ「・・・お前か!?MIGHTY WARRIORSっていうのは!」

劉「・・・劉です。以後、お見知りおきを・・・無名街はよく燃えますね」

ピー「昨日の爆発のことを・・・!」

ユウ「やっぱりオメエらの仕業か!?」

劉「形あるものはいずれ壊れる時が来る・・・我々の理想の為、無名街や貴方達には潰えてもらいましょう」

スモーキー「あの火事で俺達の家族が何人も死んだ・・・償ってもらうぞ?」

徹底抗戦の意志を見せるスモーキー達。すると、劉という青年の下に大勢のギャングが集まった。

タケシ「こいつら、DOUBT・・・!?」

ピー「湾岸のチームが手を組んでたのか・・・!」

劉が手で合図し、DOUBTの下っ端達が一斉に襲い掛かる。スモーキー率いるRUDEは得意とするアクロバティックな動きで、正面から来る敵を返り討ちにしていく。だが、戦いの最中にスモーキーが違和感を抱いていた。

スモーキー「・・・手応えがねえ・・・」

ユウ「あ?どういうこった?」

タケシ「確かに、DOUBTの戦力はこんなもんじゃないはず・・・!」

劉「気づきましたか・・・ですが、もう遅い」

その時、コンテナの上からRUDEのメンバーが次々と落とされてきた。敵を逃がさないように隠れて潜んでいた仲間を、劉が見破ってDOUBTに拘束させていたのだ。

ピー「仲間が・・・!?」

ユウ「くそっ、やってくれやがって・・・!」

いきなり窮地に立たされ始めたRUDE。だがそこへ、ツクヨミやさくららマジ女生徒達が駆けつけ、DOUBTの下っ端を攻撃し始めた。

タケシ「!?あいつら、鬼邪高んとこの・・・」

ツクヨミ「これは罠よ、一旦退いて!」

ピー「罠!?」

タイヨウ「無名街の爆発は最初から、貴方達を湾岸地区に誘き寄せる為のものだったの!」

劉「あれはマジ女のラッパッパ・・・なら、共にねじ伏せてやるとしよう」

劉は再びDOUBTに合図を送ると、彼らはカゴの中に隠していた無数の瓶を手に取り、RUDEやマジ女一行に向かって投げつけた。

シスター「きゃあっ!な、何これ!?」

メンドウ「瓶!?危ないっ!」

ツル「こんな戦い方をするなんて・・・!」

DOUBTが投げる瓶は次々とRUDEメンバーの顔や手に当たり、傷を与えていく。ピーがパルクール攻撃で、ユウが落ちていた短めの橋を盾代わりに使い、瓶の攻撃から負傷した仲間達を守るが、このままではRUDEとマジ女側が全滅するのも時間の問題だった。

スモーキー「・・・タケシ!」

タケシ「・・・!」

するとスモーキーがタケシを呼び、コンテナの上に登れと顔だけで指示した。タケシもそれに従い、DOUBTの下っ端を蹴散らしつつ上へ登っていく。ここでツクヨミもスモーキーの策に気づき、さくらとゼロに言い放った。

ツクヨミ「さくら、ゼロ!DOUBTを押し出して!」

さくら「うん!」

ゼロ「アンタら、そこで寝てろ・・・!」

さくらとゼロは奮起して、襲い掛かるDOUBTを殴っては蹴り飛ばし、右側に集中して押し出した。スモーキーも道端の布を手に包み、下っ端達が持つ瓶を壊しながら、目標の地点に辿り着いたタケシに向かって叫ぶ。

スモーキー「飛べ!!」

タケシ「ハアァァッ!」

タケシはコンテナの上に置かれていた巨大な樽の紐を引っ張りながら飛び降り、中に入っていた水を流しながら樽が落ちたことで、RUDEとDOUBTの分断を成功させた。

スモーキー「タケシ、皆を頼む・・・!」

タケシ「分かった。皆、退くぞ!」

DOUBTが妨害をくらっている隙に、タケシはピー、ユウらを連れて撤退する。だがスモーキーは反対側に移動し、ツクヨミ達は困惑する。

タイヨウ「スモーキー?どうして仲間と違う方向に・・・」

ゼロ「リーダーである自分が餌になって、あいつらを逃がすつもりなのかも」

ツクヨミ「私達はスモーキーを追おう・・・!」

ツクヨミの言葉にさくら達が従い、マジ女一行はスモーキーと同じ方向へ走っていく。焦るDOUBTが正面から突破を試みようとする中、劉だけは冷静のままでいた。

劉「周りのゴミを利用する手段を向こうも思いつくとは・・・無名街の守護神、侮れませんね」

そんな劉の下に近づく、1人の人物がいた。その人物は金髪に黒い肌と異国人のような風貌で、不敵な笑みを浮かべながら呟いた。

???「面白え・・・Let's Go」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タケシ達と別の方向へ撤退するスモーキーとマジ女一行。しかし突然、スモーキーが動きを止めて咳き込み始めた。

スモーキー「ゲホッ、ゲホッ・・・!」

さくら「スモーキーさん?」

ゼロ「・・・!アンタ、それ・・・」

スモーキーの口を覆った手には、ほんの僅かに血の跡があった。それを見たタイヨウが、彼の体の秘密を言い当てた。

タイヨウ「・・・スモーキー、病気を患ってるの?」

スモーキー「構うな・・・で、お前らどういうつもりだ?」

ツクヨミ「昨日からSWORDの各チームが襲撃を受けてる。どこか一角でも崩れれば、さっきみたいな連中が街全体を混乱させるかもしれない・・・そうならないように、マジ女は貴方達を助けようとした」

スモーキー「鬼邪高の差し金か・・・?」

タイヨウ「ううん・・・ここに来たのは、私達個人の意志だよ」

ツル「でも、スモーキーさん・・・そんな体でチームの仲間を庇おうとするなんて」

スモーキー「・・・あいつらも、俺にとっては大事な家族だ。俺達は家族の為に生きることを決して諦めない・・・だからこそ、家族に手を出す奴には容赦しねえ。俺の命を賭けてでもな」

病気を患いながらも、無名街で共に育った家族を守る為に戦おうとするスモーキー。彼の意志の強さに触れ、さくらやツクヨミ達は深く考え込むようになった。

ゼロ「・・・!何か来る・・・!」

だがその時、ゼロが殺気を感じた。そこにコンテナの上からMIGHTY WARRIORSの劉が駆け下り、手に持った武器で一同に襲い掛かったのだ。

メンドウ「うわぁっ!う、上から・・・!?」

タイヨウ「手に持ってるのは・・・青龍刀!?」

劉「逃がしませんよ・・・」

劉は青龍刀を用いた武術でスモーキーに攻めかかる。さくら達が加勢しようとするが、そこに金髪と黒い肌が特徴の男が立ち塞がる。

ツクヨミ「もう1人・・・!?」

???「よう、Crazy Girls・・・Change or Die?」

ゼロ「その言葉・・・こいつもMIGHTYか!」

タイヨウ「そこを通して!」

タイヨウが肌黒の男に殴り掛かるが、男はタイヨウの拳をかわした直後に二度殴り返し、続けてさくらとツクヨミが挑むも試合をするボクサーのような動きで翻弄する男に苦戦を強いられる。追い打ちをかけようとする男にゼロが蹴りを繰り出し、ガードした男は標的をゼロに変えるが、即座にツクヨミとタイヨウが捕まえて動きを封じた。

ツクヨミ「さくら、ゼロ!スモーキーを!」

ツクヨミの指示に従い、さくらとゼロは劉と戦うスモーキーを援護する。剣術を扱う劉を相手に3対1と有利な状況に持ち込もうとするが、さらに別の影が戦いの場に現れ、さくらとゼロを急襲した。

さくら「うっ・・・!?また違う人が・・・!」

劉「九鬼源治・・・あの方が寄越してきましたか」

スモーキー「あの方?誰のことだ・・・?」

劉「貴方が知る必要はない・・・!」

源治「馬路須加女学園・・・排除する」

ゼロ「どいつもこいつも・・・退けって言ってるんだよ!」

再び1対1で対峙するスモーキーと劉を余所に、さくらとゼロは源治という巨漢に連携攻撃を仕掛ける。源治は2人の攻撃に怯むことなく襲い掛かるが、さくらとゼロも一歩も退かずに反撃し、さくらが作った隙を狙ってゼロが蹴り飛ばし、コンテナにぶつけながら何度も殴りつける。しかし、源治はその表情を苦痛で歪ませようとしなかった。

ゼロ「!?こいつ、痛みを感じてない・・・!?」

さくら「そんな・・・!」

屈強な肉体を持つ源治に恐れを抱くさくらとゼロ。そんな中、スモーキーは劉を相手に果敢に立ち向かうが、劉はスモーキーの足を掴んで低い体勢で走り回り、飛んだ位置から青龍刀でスモーキーの背中を斬り付けた。

スモーキー「っ!ぐぁ・・・っ」

ツクヨミ「スモーキー!?うあぁぁ・・・っ!」

タイヨウ「く・・・っ、この人・・・強い・・・」

???「ハハハ・・・!」

ツクヨミとタイヨウも、ボクシングスタイルを構える男に圧倒されていた。さらに、ここでDOUBTの下っ端達が追いつき、負傷したスモーキーを発見してしまう。

シスター「DOUBTが・・・!?」

ツル「いけない、スモーキーさんを守らないと!」

ツル、シスター、メンドウが行く手を阻もうとするも、数の多い群れを防ぐことができず、スモーキーへ何人かの接近を許してしまった。さくらとゼロも、自分達の攻撃に全く怯まない源治を突破できずにいた。

ゼロ「ちくしょう・・・!」

劉「これで・・・終わりです」

さくら「スモーキーさん!!」

このままスモーキーがやられてしまうかと思われた、その時だった。どこからかエンジン音のようなものが鳴り響き、DOUBTや源治、MIGHTYの2人が動きを止める。そして、バイクに乗った走って来た青年がスモーキーを庇うように、下っ端達の前でブレーキをかけたのである。

劉・???「・・・?」

ツクヨミ「うぅ・・・だ、誰・・・?」

タイヨウ「・・・!あのバイク・・・もしかして・・・」

大型のバイクと、黒いジャケットに左耳のイヤリングといった風貌の青年を見て、タイヨウはある人物を思い浮かべた。そしてその青年はサングラスを外しながら、DOUBTを見て低い声で呟いた。

???「・・・よくもまあ群れやがって」

 

 

 

 

第14話へ続く