2021年8月 中3道コン国語レビュー | 教科別専門教室FiveSchools OFFICIAL BLOG

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中3 大問1(漢字)

どちらかというと読みのほうが難しめかな、と思いますが、まぁ全体的に標準レベルだと思います。

 

中3 大問2(資料、対話)

対話・資料系の問題では、毎回必ずリード文を読んで「前提条件」の確認をしましょう。

今回でいえば、

 

・B中学の生徒が客、A中学の生徒会がホスト役

・自然公園を案内するルートを決める

この2点を最初におさえます。

 

次に、対話文そのものや、資料そのものを読むよりも、まず「問題文で何が問われているか」を先にチェックしてしまったほうがまず間違いなく効果的です。

場合によっては特に解答を出すのに必要ないダミー情報がいっぱい混じってたり、どうでもいい会話が比較的長く続いたりすることもあります。

あまりに雑多な情報があるときは、そこに何らかの焦点を絞って情報を整理していかないと、何をどうしていいのか身動きがとれなくなるんですよ。

あくまでも「問題に対して適切に答えること」が国語でわれわれに課せられたミッションなのですから、軸足は常に問題文に置くようにしなければうまく点を取ることはできません。

 

問1

よって、まずは「歴史村がダメな理由」という設問要求を確実につかまえることが必要。「資料Ⅰ&Ⅱ」から読み取れること、という設問条件も同様につかまえる。

この2点を押さえれば、「資料Ⅰ=時間が足りない」「資料Ⅱ=B中生、歴史に興味なさげ」がそれぞれポイントであることはすぐに導けるでしょう。

ただ「時間が足りない」というのは相対的なものなので、本当のことを言うと「持ち時間」を確認しないと足りるのか、足りないのか、足りないとすればどのぐらい足りないのか、がわからないんですよね。

今回の採点基準表を見ると「時間が足りない」ことさえ分かれば満点はつくはずですが、「持ち時間が2時間しかない」という情報は解答に組み込んだほうがより適切な解答であるかとは思います。(模範解答例はちゃんとこの要素が含まれたものになっています)

 

問2

空欄問題は前後の情報から解きますが、今回は全部選択肢が「疑問文」になっているところに注目したいです。

これは英語の長文問題でもよく出ますが、疑問文が空欄の場合は必ず「後ろにある答え」が根拠になりますし、逆に「答え」の部分が空欄になっている場合は「前にある疑問文」が解答の根拠となります。

 

問3

短い記述ではあるものの、案外やらねばならない処理が多く、ポイントの見落としをした生徒はそこそこ出るかもしれません。

 

(空欄前後から読み取るべき情報)

「広場を出た後にすること」「右回りルート」「その後で、来た道を戻ること」「その後で、展望台に行くこと」

→この時点で、「池」「自然交流館」のどちらか(or両方)に関することが答えになると判断できます。

 

(「話し合い」の中から読み取るべき情報)

「池」の話が「話し合い」の中に全然ないので、答えは「自然交流館」に関する内容だと確定できます。

鈴木さんのセリフから「自然交流館でお土産を見る」「自然の楽しみ方を教えてもらう」の2点がポイントになると判断。

念のため「資料Ⅰ」の「自然交流館」のところを見て、その他に書くべき内容が特にないことを確認しておいたほうが安全。

 

「お土産」の話を忘れて6点中4点になった生徒とか結構いそうですね。

 

中3 大問3(小説)

「対立と分断」という、なかなか現代的なテーマが根底にある小説で面白いですね。

 

(読み取るべき心情の流れ、内容)

 

リード文

・地元民とニュータウン民で対立(子どもも)

・幸雄(主人公)&桐人は地元民

・桐人が地元の祭りで女装

→ニュータウン民がからかう

 

本文

・幸雄 ニュータウン民とも行動する、桐人がからかわれるのを止めない

→自衛したい、有利な側につきたい

→そんな自分をコウモリみたいだと思う

 

・桐人 ニュータウン民にからかわれても気にしない

→幸雄 罪悪感がやわらぐ、変わっていると思う

 

・幸雄 桐人にどう思われているか気にする

・桐人 コウモリみたいな幸雄を責めない

→幸雄(桐人が優しいというよりも)どうでもいいと思われているのでは?

 

・桐人 幸雄の祖父に気に入られている

→土地の昔話や古文書のことを祖父から聞かせてもらいたい

 

・幸雄 桐人のことを嫌だと思う

→幸雄 比較されて両親から小言を言われる、嘆かれる

 

回想シーン

・幸雄 祖父にかわいがってほしい

→(桐人のように)昔話や古文書のことを祖父に聞く

→祖父 ごますりを拒否

→幸雄 恐ろしい、叱られているよう、二度と頼みたくない

 

「『対立と分断』という、なかなか現代的なテーマが根底にある小説で面白いですね」と言ってはみたものの、こうして読んでみるとそこは今回切り取られた箇所のテーマではなく、今回はあくまでも「桐人に対する幸雄の嫉妬」のほうが全面に出た話になっていましたね。

このように、リード文の内容から予想できない方向に話が転がっていくことは小説ではよくあります。

 

問1

桐人が明らかに子どもたちと普通に会話しているので、エ「子どもたちと関わることを嫌い」が✕なのはすぐにわかると思います。

 

問2

上のリストから、「コウモリ」の説明が読み取れていれば問題ないでしょう。

「コウモリ」が「有利なほうの味方になろうとして、すぐに人を裏切る、筋を通さない人間」の比喩であることは知識として持っておいたほうが良いですね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%91%E6%80%AF%E3%81%AA%E3%82%B3%E3%82%A6%E3%83%A2%E3%83%AA

 

問3~4も、上のリストが読み取れていれば問題ないでしょう。

小説は、とにかく「原因・状況」「心情」「反応」の3要素に還元して文章内容を分析していくことです。これら3要素の中に解答が含まれていることがほとんどです。

(その3要素を抜粋して並べたのが上のリストです)

 

ただ、これはわたしではなくて鷹取先生が気づいたことなのですが、問3が①②合わせて9点、問4が8点ってちょっとバランス悪いような気もしなくはないですが……。

 

あと、鷹取先生が気づいたことがさらに一つ。

本文中の「嘲る」「嘲笑」にフリガナふってないんですよね。

調べてみたら漢検2級レベルなので、普通フリガナ要りますよね。

「怖かった」になぜかルビふっているのも謎だし。

 

中3 大問4(説明文)

円山応挙の話を国語で見たのは初めてかもしれません。

関係ないですけど、円山応挙といえば「応挙の幽霊」という名作落語があります。

https://www.youtube.com/watch?v=tNjJyE8oJ_o

 

問1

基本的な助詞の識別問題。解説に書かれているとおりで、特に付け足すべきコメントはありません。

 

問2

傍線部なしで、設問文から要約させるという、比較的最近流行している問題形式です。ショボい傍線説明問題に慣れ切った生徒は「傍線の近くを適当にコピペして書く」クセがついてしまいがちですから、そのクセをなくすには最適の問題形式なんですよね。

入試も学テABCも、どんどんこういう問題を出してほしいと思っています。

(傍線前後をコピペしても1点にもならない傍線説明問題でもOKです)

 

ただ、問題文に「そのような見方をする理由を明らかにして」と書いてますからね。

こういう「条件」を見落とさないことは国語で高得点を安定して取るための絶対条件です。

 

内容的には、文章前半はあくまでも「子どもの視点」の説明であることを読み取れたかどうかです。「いつもと違った新鮮なものの見方」とか書いても1点にもならないのはそういうわけです。

17行目に「一方、おとなになると~」と書かれているわけですから、答えは17行目以降にあると判断しなければいけない。このように、まず大まかに「答えがどのへんにあるか」アタリをつけていくことが重要。

 

問3

こういう「リーグ戦の星取り表」のような図式に穴埋めをしていく形式は北海道公立高入試がなぜか好きな形式で、道コンでも当然よく出ます。空欄前後を見てヒントつかむだけで簡単に答えが出るケースが多く、難易度は低めですが。

今回も簡単なレベルだと思います。

 

問4

これも、問2と同様「本文のどのあたりに答えがありそうか」アタリをつけられるかどうかが勝負です。

一つ目の「見たことのない~」が前半の「子どもの味方」であることはすぐにわかるはずです。

二つ目の「普段の生活からかけ離れた~」が32行目の内容であることも大丈夫ですね。

となると、書かなければいけないもう一つの話は、その32行目の内容とは異なる内容で、32行目よりも後に出てくる内容が答えになることが容易に予測されます。

 

模範解答の内容としては、要するに36行目からの段落を要約すればそれでよいのですが、別解の可能性として34行目の段落、あるいは最終段落の内容を含めて書いた生徒もいるかと思います。

34行目は、要するに36行目の「作者のフィルター」の具体的説明とも言えるので、これはこれで別解として認めるべきだと思います。(採点基準表には載ってないですが)

34~35行目「いらないものを排除し、足りないものをつけ加える」というのは、要するに「作者が自分の主観的フィルターを通して現実を改変した」というのと同義ですから。

「作者のフィルターを通す」のかわりに34~35行目の内容を書いたとしても、これはこれで問題なく点数を与えるべきでしょう。

 

最終段落の内容を解答に入れるとすれば、「アーティストによって同じものを描いても見え方が異なることを知る」という感じになるでしょう。

まぁこれはアートを「複数」見ないと手に入らない見方ですから、二重傍線部が要求している条件に当てはまるか? と言われると微妙なところです。

字数制限的にも、一般的な中学生が最終段落の内容まで踏まえて60字程度にまとめることはかなり困難かと思います。

若干無理やりですが、最終段落の内容も含めて答案を作るならこんな感じでしょうか。

「作者の主観的フィルターを通した世界を知ることで、対象についての新たな一面や概念を知り、作者による物の見え方の違いも発見できる。」

こんなツメツメの答案が道コンの模範解答になるわけがないですから、常識的に考えて最終段落の内容は答えのポイントに含まれていないと考えてよかったかと思います。

 

中3 大問5(古文)

(現代語訳)

道コン公式の訳ではなく、村上が自分で訳したものですので、多少表現に違いがあるかと思います。

「自然な日本語」にすることよりも、「できるだけ直訳的に置き換えていく」ことを重視して訳していますので、自分が読み取った訳と比較しながら読むとわりと勉強になるんじゃないかな、と思います。

 

そうして行くと、道の真ん中に、その色の黒いものがいる。人間よりは小さくて、全く動かない。「どけ」と言っても返事をしない。「きっと、狐かむじなだろう」と思い、矢を放って射たところ、手ごたえがあって当たったと思ったが、矢が跳ね返る音が、金属などを射たようなものだ。しかし、(その色の黒いものは)いっこうに動こうとしない。もう一度射ても最初と同じようである。一本一本射るうちに、十本全部射てしまい、たった一本だけ残っていた。このとき、そのものが動いて、上にかぶっていたものを脇にどけて、(弓をたしなむ人に)飛びかかってきたのを、残りの一本で射止めた。そうして近くで見てみると、狸であって、上にかぶっていたのは鍋であった。恐ろしいたくらみではないか。その(弓をたしなむ人が持っていた)十という数を知っていたのであろうか。また十というのは数のうちでもっとも日常的なものとして、ものごと(を数えるとき)にこの十という数を使う。狸でさえそれを順々に数えて、(弓が尽きる)様子をうかがっていた。ましてや人間など知力が高いものが(たくらみを)考えることが当然なのはなおさらである。(枝を)切って付け足して11本にしていったのは見事なことです。

 

後半、傍線部2以降がなかなか正確に訳しにくいですね。

中学古文としては比較的難易度高めだと思います。注釈の数も適度だと思います。

「その十の数知りしにや」の主語が「狸」であることを誤解せずに読み取れたかどうか、そこから、問2の答えがウであると解釈できたかどうか、大きく差がつくのはこの2ポイントかと思います。

問3は、「まして人なんどの」以降の解釈なので、本来であれば「まして~をや(=ましてや~なら尚更だ)」構文の意味が取れないと難しいのですが、AさんBさんの会話文を読めばそれだけで大意が分かってしまうので、答えを出すこと自体は難しくないかと思います。

 

中3 総評

難易度、出題内容ともに適切な良問だと思います。

いつも通りではありますが、やはり「問題文で問われている内容」「出題条件」「空欄の前後内容」を確実におさえ、そこをヒントに解答を決定するという基本を徹底することの重要性がわかってもらえるかと思います。