2023年 学力テストA国語レビュー | 進学教室FiveSchools OFFICIAL BLOG

進学教室FiveSchools OFFICIAL BLOG

札幌の進学塾・予備校「進学教室FiveSchools(ファイブ・スクールス)」公式ブログ。

☆5周年記念オリジナルグッズ発売!

 
ようやく学テAの国語を解けましたのでレビューします。
 

大問1(資料と対話)

問2とか、「町内に川野が2人以上いるから」って答えたらどうなるのでしょうか。
かなり解答に幅が出そうですが、学校の国語採点は非常に硬直的な傾向があるので、「模範解答以外は✕」ってやられそうで怖い。
 
問3は面白いいい問題ではありますが、難しいと思う。
そもそも「お父さん」と対外的に言うのは敬語的に✕、って中学で習うんですかね??
うちでは教えますけど、増進会のテキストとか定期テスト過去問とかで見たことはないんですよね。
 
資料と題材はなんということもない普通の問題ですが、設問にクセが強いです。
 

大問2(評論)

出典:吉永明弘「はじめて学ぶ環境倫理」
法政大学人間環境学部教授。専門は環境倫理学。著書『都市の環境倫理』(勁草書房、2014年)、『ブックガイド環境倫理』(勁草書房、2017年)。編著として『未来の環境倫理学』(勁草書房、2018年)、『環境倫理学(3STEPシリーズ)』(昭和堂、2020年)。最新の著作は『はじめて学ぶ環境倫理』(ちくまプリマ―新書、2021年)。
 
今回、最も物議を醸すべき問題はこれでしょう。
北海道中の国語の先生が生徒からのクレームに対応させられまくって大変だったのでは。
 
問4
波線部1「アマミノクロウサギは何度も絶滅の危機にさらされてきた」とありますが、筆者が挙げた事例の中で複数の事例に共通するのは、どのような危機ですか。15字程度で書きなさい。
 
問題なのはコレです。
結論から言うと、問題として成立していないとわたしは考えます。
 
「アマミノクロウサギ」が危機にさらされてきた具体的な内容はどのようなものかというと
 
①ゴルフ場建設計画によって、生息地が失われる
②ハブ駆除のためのマングースが繁殖し、捕食される
③持ち込まれたノネコが繁殖し、捕食される。
 
この①~③です。
 
で、模範解答は「外来種の繁殖による捕食の危機」なんですね。
これをみなさまはどう思われるでしょうか。
 
真っ先に思いつくであろう疑問は、
 
「この答えだと、①のゴルフ場の例が含まれないのでは?」
 
ですよね。わたしも最初そう思いました。
ただ、この疑問に対しては問題文に事前に予防線が張られています。
 
もう一度問題文を見てください。
「複数の事例に共通する」と書いていますよね。
「全部の事例に共通する」とは書いていないので、2つ以上の事例に当てはまっていればそれでOKだ、という理屈でこの模範解答にしたのだと推測されます。
 
ただ……「問題として成立していない」とわたしが言ったのは、そんなことを言い出すともはや何でもアリになってしまうんですよ。
 
「人間の営みによる野生動物の生存の危機」
と書いても「複数の事例に共通」という条件には当てはまりますし、✕にされる筋合いはないわけです。
 
本文の表現を利用して解答するなら
「在来の野生動物の生息地が失われる危機」
ではどうでしょうか。
ゴルフ場によって生息地が奪われるのはもちろん、マングースやノネコに居場所を奪われるわけですから、これはこれで「生息地が失われる」事態だと言うこともできなくはない。
 
もっと言ってしまえば、
「動物の危機」
「環境と関係する危機」
とだけ書いた答えだって、✕とまでは言えないです。この出題のしかただと。
 
つまり、今回の質問のしかただと「複数の事例に当てはまっていれば何でもOK」ということになるので、模範解答「外来種の繁殖による捕食の危機」だけをマルだという根拠はどこにもなくなってしまいます。
ですが、実際には「外来種の繁殖による捕食の危機」以外はすべて✕という対応が原則として取られているはずです。そう採点しなさい、というお達しが出ているので、学校の先生はそれをもとに採点するしかない、と。そうしないと他の学校、他のクラスと不公平な扱いになってしまいますから。
それで、「北海道中の国語の先生が大変だっただろう」と冒頭で述べたわけです。
 
というか、そもそも「複数の事例に共通する」という日本語がわかりにくすぎるんですよね。
問題文の解釈で議論が生まれる時点で、問題としてまったく良質とは言えないと思います。
 
問7
これもかなり問題があるというか、これも問題として成立していないというのがわたしの考えです。
「どのような行動に対して警鐘を鳴らしているか」という問題ですが、これも複数答えが考えられます。
 
・外来種はどんどん駆除していってOK! という考え方。
 
模範解答はこの考え方をベースにしていますね。
ただ、模範解答は「ノネコ」に限定した内容になっていますが、だったら「マングース駆除」のところを答えにしてもOKでは?
「なんで3段落の、『そのマング』じゃダメなんですか?」
と生徒に聞かれたら何と答えるのでしょうか。
 
また、「警鐘を鳴らしている」のは、駆除についてだけなのか? という問題もあります。
 
・どうせ駆除すればいいんだから、外来種をどんどん持ち込んでもOK!
 
という考え方でも別に何の問題もない。
だったら、「一九七九年」のところを解答にしてもOKになってしまう。
 
複数の正解可能性をろくに検討せず、作問者の思い込みだけで模範解答を決めてしまい、チェックもろくにしないのが学テ国語のいつまで経っても改善されない大きな欠点です(だから、たまたま良い作問者が担当したときは良問も出る)。
 

大問3(古文、漢文)

出典:「宇治拾遺物語」

鎌倉時代前期成立と推定される日本の説話物語集である。編著者は未詳。

 

現代語訳

今となってはもう昔のことだが、中国で、孔子が道をお歩きになっているとき、八歳ぐらいの子供に会った。(その子が)孔子に質問するには、「日の入る所と洛陽では、どちらが遠いのか」と。孔子が答えなさるには、「日の入る所は遠い。洛陽は近い」と。子ども申し上げるには、「日の出入りするところは見える。洛陽は見えない。であれば日の出る所は近く、洛陽は遠いと思う」と申し上げたので、孔子は賢い子だと感じ入りなさった。

「孔子に対して、このようにものを問いかける人もいないのに、このように質問したとは、ただ者ではなかった」と人々は言った。

 

問1は基本的な仮名遣いの知識、問2は「近し」と「遠し」を逆にしてしまった人が多いでしょう。

なぜ逆ではダメか、まだ納得いかない人は現代語訳を読んでもう一度考えましょう。

こういうのは自分で納得できるまで考えないとダメです。

 

問3が盛大なヒッカケで、話の大筋を理解している人が逆に「C」と答えて罠にハマったものかと思います。

傍線に「問ひける」とあるわけですから、疑問文じゃないと答えにならないのですね。

Aで質問して、Cで自分の見解を述べているわけですから、Aじゃないと答えにならない。

なかなか嫌らしい問題ですが、傍線をおさえてから解くことは国語の基本なので、これも実力のひとつと受け入れるべきでしょう。

 

大問4(随筆)

出典:小川洋子「からだの美」
1962(昭和37)年、岡山県生れ。早稲田大学第一文学部卒。
1988年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。1991(平成3)年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。主な著書に『やさしい訴え』『ホテル・アイリス』『沈黙博物館』『アンネ・フランクの記憶』『薬指の標本』『夜明けの縁をさ迷う人々』『猫を抱いて象と泳ぐ』等。2004年『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞を受賞。『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、2006年『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞受賞。翻訳された作品も多く、海外での評価も高い。
 
問2
いやらしい文法問題ですね。
1を「述語」と答えて✕になった人が多かろうと思います。
こういう場合は「接続語」になるのだ、ということを覚えておいてください。
 
問5
これは正答率かなり低いような気がしています。
「何の温かさ」と質問しているのであって、「その温かさを筆者はどう思ったか」と聞いているわけではないことに注意してください。
国語で伸びない人に一度やってほしいのですが、本文を読んで答えを探す前に「質問文だけを読んで、どんな答えになるか予想してみる」習慣をつけてほしいです。
 
「これ、何の温かさ?」
と質問したら、「ホッカイロ」とか「おっさんのケツ」とか、そういう感じで答えるじゃないですか。
だから、この文章でも同じように「熱をもっているもの」を答えればいい、と判断できる。
 
ただ、うしろの「生命の証」ではダメか? と言われると……
生命がなければ温かさは生まれないわけで、別にこれでもOKでは? という気もかなりします。
 
問6
これも問5と同様に「どのような思いからですか」という質問には、どんな内容が答えになるかを予想して取り掛かるのがいいですね。
問5と同じく10字程度の問題なので、そんな複雑な内容が答えになるはずはないです。
 
全体を通して、大問2という超問題作があることもあり、難易度かなり高いと思います。
8月道コンに続いて、国語が全体的に難化傾向が続きますね。

 

2023年度FiveSchools時間割

☆FiveSchools公式サイト

 

☆FiveSchools全クラス・全コース紹介

☆FiveSchools合格実績

☆全国どこでも受講OK、Webコース

☆FiveSchools講師紹介

☆代表・村上翔平の著書紹介

☆FiveSchools琴似本校

☆FiveSchools伏見山鼻キャンパス

☆FiveSchoolsへのお問い合わせ

FiveSchoolsは電話、訪問など手段を問わず、こちらからの勧誘活動を一切行っておりません。

お問い合わせいただいた場合、メールにて基本ご連絡いたします。

(返信がない場合お電話差し上げる場合があります)

その後、しつこい勧誘、DM、電話などが行くことはありません。

安心してお問い合わせください。