とあるシニアの介護をしています。
具体的には、94歳のおばあさんに付き添って、1晩過ごします。
トイレには、歩行器を使って歩いていきます。
それ以外、ずっとベッドで寝ていますが、たまに「眠れない」と、ベッドに座ったままのときもあります。
ところがある日、おばあさんの家に行くと、おばあさんが背筋をしゃんと伸ばして、ソファに座っていました。
足を組んじゃったりして。
まるで別人のようでした。
しかもおばあさん、私に出て行け、と言うのです。
私のことを、初めて見る赤の他人、と認識しているようでした。
なんとかなだめすかし、この部屋にいてもいい、という許可をもらい、ベッドまで連れて行ったのですが、眠れないようで、横になる→起き上がる→横になる→起き上がる、の無限ループ状態。
私はなるべく彼女の気を損ねないよう、見守って、手は出さないでいました。
そのうちおばあさん、ベッドから立ち上がって、歩行器を使い、すたすたと部屋から出ていったのです。
部屋の外に、エレベーターがあるのですが、エレベーターのドアを開け、中に入ろうとします。
通常、そのようなことは、私たちの介助がなければできません。
一体どうしたんだ?
何かに憑依されているんじゃないか?
聞くとおばあさん、階下の台所へ行って、何か食べたいとのこと。
あらかじめこんなこともあろうかと、部屋の中にヘルシースナックが用意してあるのです。
それを伝え、部屋に戻ってもらい、椅子に座らせて、ヘルシースナックを渡しました。
おばあさん、「あんたも食べる?」と、初めて私に心を開いてくれました。
いつもの彼女は、こんなふうに、他者への気配りをする方なのです。
食べ終わり、満足したおばあさん。
ところが、それまでしゃきしゃきと行動していた彼女、別人のように・・・というか、いつもの彼女に戻ってしまったのです。
歩くのもおぼつかない、弱弱しいおばあさんに。
思えば、私が到着したときから、彼女は空腹だったのでしょう。
空腹という状態が、いかに人をしゃきっとさせるか。
あるいは、空腹の間だけ、何者かに憑依されていたのか。
よくわかりませんが、お年寄りの人格の豹変(体力も変わる!)を目の当たりにした出来事でした。




