近年社交ダンスと言えばテレビやメディアで取り上げられる
華やかな競技ダンスが社交ダンスとして多くの人達に認識
されている様ですが競技ダンスが踊れれば誰とでも社交ダンスが
楽しく踊れるとは限りません。と言うよりむしろ競技ダンスが
社交ダンスと思って様々な方と踊るとその多くの場合お相手に
楽しさと言うより苦しさを与えてしまう事が多いのです。
かつてはテレビ番組の中で社交ダンスの初歩から教える枠が
有ったのですが今では社交ダンスと言えばドレスアップして
華やかな運動表現を行う競技ダンスが時たま紹介されたり
芸能人やタレントが番組として競技ダンスを踊ったりする位で
社交ダンスを基礎の踊り方から紹介する番組は見当たりません。
その為多くの視聴者は社交ダンスと言えばルーティンを覚え
順番通り振り付けに合わせて踊るものと思っています。
特定のお相手や先生としか踊れないと言う特殊な社交ダンスが
益々人々を遠ざける結果と成っています。
本来社交ダンスは大衆のものであり誰とでも心のままに楽しく
踊るものでした。言葉を交わす様に音楽を表現する事で
男女が互いの思いを伝え合ったものです。
その為一人一人の思いが違っているのが当然であり如何に
お相手の思いを理解しペアとして楽しく踊れるかが
踊り手達の社交ダンスを踊る最大の目的でも有りました。
多くのフィガーが生まれ様々な運動表現が開発されたのも
様々なタイプの踊り手と楽しく踊る為の物であったのです。
出来るだけ楽しく踊るにはお相手とどの様に演じたら喜ぶか
踊り手達のテクニックはその一点に有りました。
それ故お相手が踊り辛かったり難しく感じるフィガーや
運動表現は避けペアとして最も楽しく踊れる方法を考えたのが
マナーとしての発達を促す事と成ったのです。
しかしながら外見的な良し悪しを決める為の競技ダンスは
常に第三者から更には審査員から良く見える様に演ずる為
ペアとしての楽しさよりも見た目の美しさが優先される事と成り
必ずしも心から楽しく踊れるとは言えないのです。
いえ決して競技ダンスを否定しているのではなく私自身も
数十年に渡り競技ダンスに携わって来た事も有り競技ダンスの
素晴らしさは筆舌に尽くしがたいものが有ります。
ただ大切な事は競技ダンスは社交ダンスの誰とでも楽しく
自由に踊れると言う基礎の上に有ってこそ成り立つのです。
よく聞かれる話に競技ダンスを踊る方は踊り難いと言う
一般の踊り手達の声です。
確かに外見的に美しく練習を重ねた競技選手の踊りは
魅力的ですが中には自分のお相手と踊る時は素晴らしくとも
不特定多数の方とコンタクトして踊ると踊りずらい場合が
珍しくないのです。
問題は競技ダンサーが自分のパートナーや先生と踊る時は
良いのですが自分のお相手以外の方やまだ余り上手く踊れない
社交ダンスの経験も知識も少ない方と踊る時に起こります。
誰と踊っても自分のパートナーや先生と踊る時と同じ踊り方や
運動表現を行う事でお相手に不快な気持ちを抱かせることが
少なく無いのです。
つまり様々なタイプの方と踊る技術を身に付けていない事が
社交ダンスを踊る上で問題と成ります。
素晴らしい音楽表現を身に付け様々な素晴らしい成績を上げ
プロになった踊り手が生徒を上手くレッスンできない場面を
多く見て来ました。
有名な先生だから自分たちがとてもついていけないと言う方や
競技選手だから運動表現が違うから上手く踊れないと言う
生徒の声も聴きました。
しかし社交ダンスを踊ると言うプロならばこの様な思いを
お相手に抱かせてはいけません。
社交ダンスの先生は初心者から競技選手まで誰と踊っても
お相手を楽しませ満足させる事が出来なければなりません。
どの様に踊ったらお相手は楽しく気持ちよく踊れるかを考え
お相手によって的確に踊り分けられるのがプロなのです。
誰とでも楽しく踊れる事がマナーに繫がり社交ダンスが
マナーを学ぶ為の習い事に使われる理由でも有るのです。
本当のエキスパートの踊りはまだ知識も経験も少ない方が
その踊りを見ると心から感動するだけでなく何故か同じ踊りが
自分も出来そうな気持になってしまう事です。
これはその踊り手がシッカリと基本を身に付け誰でも楽しく
踊らせる技術を身に付けているのが感じられるからなのです。
初心者の方であっても自分の身体の中の筋肉が如何に使われ
素晴らしい踊りを創り上げているのかを感じるからです。
競技選手を見ていると確かに素晴らしい音楽表現をしていても
自分とは違ったかけ離れた存在にしか感じられない事が有り
社交ダンスの踊りとしては余りベストとは言えないのです。
社交ダンスはプロが演ずるような難しいテクニックを身に付け
間違いなく演じられないと楽しく踊れないのではなく
今知っているフィガーや運動表現で十分に楽しく踊れる事が
特性とも言えます。
技術や体力が余り無くとも自分の身体をいかに使えば
心から楽しく踊れるかを学ぶ事が大切です。
目を見張る感動的な踊りを目指すもその中に初心者の時から
培ってきた誰にでも備わっている運動機能が使われている事
更には心豊かに生活できる術が有る事を知る事が大切です。