素晴らしい音楽表現は、単にボディの運動機能や
様々な所作によって創られるものでは有りません。
美しく伸びやかで力強い表現は、如何に床から得た
力を上体に伝えるかに依って決まります。
社交ダンスに限らず、地上で重心移動をしながら行う
あらゆるパフォーマンスは下半身の力を使って床や
大地に力を加える事に依って生み出されるものです。
しかし、如何に床からの力を音楽表現に変えるかが
解っていないと、ただ闇雲に床を押したり蹴ったりして
唐突な運動と成ったり、上体の筋肉と下半身の運動が
上手く繋がらず、不自然な運動表現と成ってしまう事も
少なく無くて、私達は床や地面への力を如何に使って
思い描くパフォーマンスをするかを知る事が大切です。
多くの踊り手が足の裏で床を強く押して見たり蹴ったり
する事でその反発を得ようとしていますが、自らの身体の
運動機能や運動の伝わり方を知らないと、美しく踊る
と言うより運動の方向性を失いただ暴れているだけの
魅力の無い踊りと成ってしまいます。
床を押したり蹴ったりする動作によって床からの力を
得る事は良いのですが、その方法を間違うと、ただ
下半身に力が入るだけで、思い描く音楽性豊かな
パフォーマンスとは成りません。
先ず床からの力を如何に得るかを知る事が大切です。
様々なステップを踏む時、先ず前後左右に両脚が開き
目的のステップの場所をキャッチする時から運動が
始まります。
先ず、ステップの位置を決める前に、足の裏のどこかで
常に床に触れながらその存在を感じている事が重要です。
前進する時には、振り込まれた足の裏が床をキャッチ
する時から運動と音楽表現が始まります。
この時大切な事は、ヒールから床に触れようがボールから
床に触れようがまず足の裏全体で床を感じなければ成りません。
そして脚の運動機能を生む為には、指とボールで床を掴む様に
そして踵もこの運動を助ける様に足の裏を収縮する様にして
床を掴まえます。
この運動は屋外の地面の上でスポーツを行う時も同じで有り
その後重心を足の上に引き付ける為にとても大切な動作です。
更に重要な事は、この運動は単に足の裏だけの運動ではない
と言う事を知らなければ成りません。
この足の裏全体が床を掴まえる動作を行う時、足首から太ももの
前方の筋肉(大腿四頭筋)までの下肢の前方の筋肉が同時に強く
収縮する事が大切です。
つまり足の裏だけに力を入れるのではなく太ももの前部までを
強く緊張し膝周りをしっかりと固定する事です。
体重の移動に伴う大きな力が下肢に掛かると、特に膝周りの
筋肉に大きな負担が掛かります。
膝を曲げる時はしっかりと周囲筋で固定する事で怪我の予防と
大きなバネを生み出す事になるのです。
そして上半身のローテーションに伴いヒップの後方への
力強い動きが床からの力を背中を通して上体に伝えます。
ステップを踏む時、膝から下だけに力を入れていて上体に繋げる
筋収縮を行なわないとせっかくの床からの力が上体の運動表現に
繋がらず豊かな音楽表現にはならないのです。
陸上競技の選手の足の裏にはスパイクが付いている事が多く
また滑らない工夫がされているのは、しっかりと地面を
キャッチして上体へ地面からのパワーを確実に伝える為に
有るのです。
普段歩いている時も、ただ足の裏に体重を乗せるだけであったり
真上から唐突に体重を乗せる様では、上半身の重さや運動表現が
直接膝関節に負担を加え、関節痛の原因と成ったりするのです。
踊る時も普段歩く時も、下肢は前方にしっかりと振り込むと共に
地面を足の裏でしっかりとキャッチし、大腿部までの緊張を
伴いながら上体の重みを乗せて行くと足腰の負担が小さく成り
膝や腰の怪我の予防にも成るのです。