スポーツを行う時強靭な足腰が有る事は非常に有利であり
様々なパフォーマンスを行う原動力となります。
その為社交ダンスを踊るにあたっても、少しでも体力が有り
運動能力に勝る方は思い通りの運動表現を出来る可能性が
高くなります。
日々のトレーニングが夢に繋がるとあって誰しも身体を鍛え
努力を重ねているのですが、例え他人も羨むほどの体力を
得たとして果たして社交ダンスが思い通り楽しく踊れるか
と言えばそうとも言えない現実が有ります。
30年以上多くの方をレッスンしてきましたが、身体が強くて
体力のある方が必ずしも社交ダンスを上手に踊れるかとは
言えず、また体力のない方や高齢の方が上手く踊れないかと
言えば、目を見張る素晴らしいパフォーマンスを見せてくれて
驚かされる事も多くありました。
この事はいかに正しく身体を使う事が大切であるかを示していて
どんなに体力が有ってもペアとしての身体の使い方を知って
いなければ楽しい社交ダンスが踊れないという事なのです。
身体を鍛える事は社交ダンスに限らずとても大切であり
健康で楽しい人生を送るには誰もが心しなければなりません。
しかし、ただ闇雲に身体を鍛えても社交ダンスだけでなく
他のスポーツに於いても楽しい結果は得られません。
特に社交ダンスにおいては、体力や技術が勝って来ると
自分中心の踊りとなってお相手にとってはとても踊りづらく
その結果せっかく鍛えているのにかえって上手く踊れない
という残念な踊り手も少なく在りません。
身体を鍛える事は自らのパフォーマンスを高める事も
有るのですが、社交ダンスにおいてはその力をお相手が
より美しく楽しく踊れる様に使われる事が大切です。
体力が有り運動能力が優れているのに上手く踊れない
方々に共通する踊り方は、常に自分中心の表現で有り
お相手の欲する踊りが理解できないという困った事実が
あります。
シングルで演ずる運動表現ならば良いのですが、
社交ダンスは常にお互いの心と身体に反応して踊る事から
自分だけの思いや運動表現で演ずることは、自己満足は
得られてもお相手にとっては楽しさは有りません。
ペアで踊る時の最大のパワーは上肢や下肢の力ではなく
体重を動かす事で生み出さなければなりません。
互いの重心運動が呼応して、体重がスムースに動く事で
様々なパフォーマンスが思い通りに出来るのです。
下半身の力強い運動表現は、その多くが自分の重心を
動かし目的の方向に体重を動かす事に有ります。
お互いのパフォーマンスを最も演出するのが体重の
動きなのです。
自分の体重は自らの下半身の力で動かすことで
全身のコンタクト部分に大きなパワーを与える事が
とても大切と言えます。
手先や足先に力をこめたりその部分に体重をかけたり
すると、重心点が止まってしまい全身の動きがばらばらに
成ってしまいます。
上半身を固めて踊っている方や下肢で床を蹴って踊って
いる方は重心が止まってしまっていて、お相手にとっては
とても重く更には唐突に動いてとても踊り難くなります。
スポーツの分野においてもエキスパート程手足の先端に
力を込めて演ずることは有りません。
時速150キロ以上のスピードで投げるピッチャーの手は
とても柔らかくボールを握っています。
時速300キロ以上のスマッシュでシャトルを打ち込む
バトミントンの選手は打ち込む瞬間以外はラケットの重さを
感じるだけの握力で戦っています。
社交ダンスも重心が動いて男女が動いている限りコンタクト面は
非常に優しく触れていてとても気持ちが良いものです。
まるで十字架を背負っているようなホールドの方がとても多く
上半身の力をホールドの形状を保つために使っている踊り手も
いまだに少なく在りません。
男女の接触面に力がみなぎっているようでは、社交ダンスは
いつまでたっても思い通りには踊れません。
とても柔らかい接触面で男女が力強いやり取りが出来る理由を
知る事が身体を鍛える以上に大切なのです。