社交ダンスは男女が其々演じている様に思いがちですが
本当に楽しく踊れる様に成って来ると、自分が踊るイメージ
よりも遥かに具体的にお相手の踊り姿が感じられます。
踊り始めから終わるまで、まるで第三者に成って見ている様に
思い描く美しい踊りが目の前で演じられている様に思えると
社交ダンスの演技力も格段に上達します。
自らの踊りは美しく踊るお相手に反射的に動いている為、
どの様に演じようとかどの様に踊らせてみようかと言う意思は
殆ど無く、コンタクト面から伝わるお相手の心と身体に反射的に
自分の音楽表現が作られて行きます。
その為、男子はより女子の演技に敏感に成り女子は男子の
演技をより強く感じ易く成ります。
この事は社交ダンスだけでなく様々な男女の音楽表現に現れ
男子はより深く女子の演技に女子は男子の演技に心を動かされ
自らの感覚が女子化男子化して行く様にすら感じます。
多くのレッスンの場で男子の先生が女性よりも女性らしい演技を
見せて驚かされたり、女子の先生が男子よりも男らしい逞しい
演技をして周囲を騒がせたりする事も有ります。
この状況は自分の事以上にお相手にこう在って欲しいと思う
男女の関わり合いから生まれる人間の特性で有り、踊りや
芸術の世界に於いては珍しい事では有りません。
社交ダンスの世界に於いても女子の音楽表現を美しく
演じられる男子の先生は多くの場合女子にとって
非常に踊り易く、レッスンを受けていて良く理解できる
場合が多いです。
もちろん女子の先生も男子の運動表現を上手に演じ
られる方は素晴らしいコーテャーが多いです。
かつてダンスフェスティバルの時にエキジビションの場で
世界チャンピオンがスローフォックストロットを踊りました。
最初はいつもの美しい男女の踊りでしたが、突然二人が
男女の演技を入れ替えると、パートナーは完全に男子
リーダーは美しく魅力的なパートナーに変わりました。
しかし、全くの違和感が有りません。
その後何度も踊っている最中に変わりましたが、
最初は驚いたものの、その美しさと魅力的な姿は
どちらが演じても変わらず万雷の拍手で終わりました。
多くの踊り手が自分が演ずる事で精一杯なのですが、
お相手の事を感じられる様に成ると、お互いに反射的に
思い描く様な演技が出来るように成って来るものです。
自分が思い描くお相手を望むならその様に演じてもらう
為には自分がどの様に踊ったら良いかが解って来ます。
当然お相手が代われば自然に自分の踊り方が変わります。
しかもお相手にとって気持ちいい踊りと成ります。
社交ダンスは男女がお互いにお相手の事を思う事で
二人にとってもっとも相応しい踊りが出来るのです。
自分の知識や運動表現がお相手の為に有ると考えると
本当に心豊かな踊り手に成長する事が出来るのです。